JASRAC集計 平成で一番“使われた”曲1位は「世界に一つだけの花」 カラオケ通じ歌い継がれる演歌・歌謡の名曲も多数上位に
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 「平成」期における音楽著作物使用料の分配額が多かった上位3曲が、1位・SMAP「世界に一つだけの花」(作詞:槇原敬之/作曲:槇原敬之)、2位・五木ひろし&木の実ナナ「居酒屋」(作詞:阿久悠/作曲:大野克夫)、3位・アニメ「エヴァンゲリオンBGM」(作曲:鷺巣詩郎)となったことが日本音楽著作権協会(JASRAC)への取材からわかった。

【ランキング表】JASRAC「平成分配額」上位楽曲TOP100

■分配額TOP100から読み解く平成音楽史 分配構成比率で見る上位3曲の“使われ方”

 5月から元号が「平成」から「令和」へと変わる。すでに平成を振り返る企画が多数実施されているが、音楽においては一体どの曲がもっともよく“聴かれた”のか? それを探るべくJASRACへ取材を行い、まずは、平成の期間に各楽曲がどれだけ“利用”されていたのかを知るために、国内作品の「平成時代の分配額上位100作品」を聞いた。

 ここでランキング化してもらったのは、「平成」期にJASRACが作詞家、作曲家、音楽出版社などの権利者へ支払った著作物使用料の分配金額上位100曲をまとめたもので、CDセールスに加え、ライブやカラオケ、CM、DVD・ゲームなどのパッケージ、配信、イベントでの使用料などをまとめた、いわば総合ランキングと言えるものだ。つまり、その楽曲がテレビやラジオ、街中、お店、ライブなどでどれだけ“利用”されていたか、言い換えれば、どれだけ“聴かれた”かを示すランキングとも言えるだろう。実際、まさに平成を彩った楽曲が網羅されたランキングになった。

 また、TOP100にランクインした楽曲でも、分配額の構成比率はそれぞれ大きく異なっており、“歌われた曲”、“演奏された曲”、“見られた曲”など、さまざまな形でリスナーに届いていることもわかる。

 例えば、TOP3の分配構成比率を比較してみると、SMAPの「世界に一つだけの花」は、CDのセールスやカラオケ、社交場(ホテル・旅館の宴会場、結婚式場、スナック・バーなど)、演奏会(ライブ)など、ほぼすべての項目にわたって分配されている。これは、作詞・作曲を手がけた槇原敬之の卓越したソングライティングに加え、国民的に人気を博していたSMAPが、個性を認め合って生きていこうと歌ったことが、多様性を受け入れていこうという時代背景にピッタリとマッチ。発売から15年以上経過した今も色あせない名曲として、聴かれ・歌われ続けている。

 2位に入った五木ひろし&木の実ナナの「居酒屋」は、CD売上やレンタルなどの比率はそれほど高くない一方で、デュエットソングだけに、カラオケ、社交場で数字を大きく伸ばした。1991年にリリースされたこの曲が、バブル後期から崩壊後の日本を支えた中高年をねぎらい、明日への活力を与えたことは想像に難くない。ポップス、ロック、ダンスミュージックなど日本の音楽がより多様化していく時代に発売されたこの曲が、2位にランクインしたことは、日本人のDNAとして歌謡曲が今後も歌い継がれていくことを予感させる。

 3位の「エヴァンゲリオンBGM」は、国内はもちろん、海外にも熱狂的なファンを持つ説明不要のキラーコンテンツ。インストゥルメンタルのためカラオケがない一方、DVD・ゲーム、パチンコ遊戯台など音楽を聴くのではなく、“見る”“楽しむ”という新しい展開で、全体の8割近い割合を占めるなど、特徴的な構成比率となった。

 この3曲は、ポップス、演歌・歌謡、アニメとジャンルも異なるためこのような違いが出た一方、JASRACへの取材を通じて、平成初期、中期、後期の3つの時代に分けた集計も明らかになっており、各時代間での構成比率にも興味深い変化が見られている。

■ドラマ主題歌、メディアミックス…時代によって傾向が出る楽曲の“使われ方”

 平成前期のTOP10の上位は、どれも社交場とカラオケで大きく数字を伸ばし、長渕剛「乾杯」(作詞:長渕剛/作曲:長渕剛)、「居酒屋」、都はるみ・宮崎雅「ふたりの大阪」(作詞:吉岡治/作曲:市川昭介)などがたくさん歌われていた。その後、CD全盛時代に突入し、中山美穂&WANDS「世界中の誰よりきっと」(作詞:上杉昇・中山美穂/作曲:織田哲郎)などが上位に入る一方で、トレンディドラマも全盛期となり、CHAGE and ASKA「SAY YES」(作詞:飛鳥涼/作曲:飛鳥涼)などのドラマ主題歌も大ヒット。また、この頃のヒット楽曲は、昭和に生まれた楽曲も含め、平成に入ってもカラオケなどにより、根強く愛されたという点も大いに注目される。

 平成中期に入るとCD売上の全盛期から佳境期となり「世界に一つだけの花」、サザンオールスターズ「TSUNAMI」(作詞:桑田佳祐/作曲:桑田佳祐)といったメガヒットソングが登場。このようにCD売上が数字を伸ばす曲も多い一方で、森山良子、BEGIN、夏川りみなど多くのアーティストに歌われ、愛された名曲「涙そうそう」(作詞:森山良子/作曲:BEGIN)も上位にランクインしている。また、平成前期にはなかった傾向として、『ポケットモンスター』『エヴァンゲリオン』のようなアニメからの楽曲も上位にランクイン。ビデオ(DVD・ブルーレイ)、ゲームなどでの利用と海外での利用を主とする新たな比率でランクインする楽曲も見受けられた。いわゆるメディアミックス展開がさまざまなカタチで広がり、“音楽利用の多様化”が進んだのも平成中期の特徴と言えそうだ。

 平成後期になってくると、社交場、CDが比率を落とし、代わりにビデオなどが大きく成長。ゲームや遊技台などで数多く利用された「残酷な天使のテーゼ」(作詞:及川眠子/作曲:佐藤英敏)が2位に登場したほか、「ゲバゲバ90分!テーマ」(作曲:宮川泰)がキリンビール「のどごし」CMソングに長期にわたって起用されたことで上位にランクイン。人気ドラマの放送・DVD化で「相棒BGM」(作曲:池頼広)も上位になるなど、多様なメディア・ウィンドウでの新たな使われ方によって分配額が上がるケースも見受けられた。また、平成前期・中期と比較し、相対的に配信、演奏会等の比率が増えているのも、現代へつながる音楽シーンの特徴と言える。さらに、テレビドラマやアニメの音楽が上位を占めるようになったほか、CDパッケージだけでなく、YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトが伸びたのもこのころで、まさに映像と音楽の関係が強まった時代とも言える。

■ネット配信の出現により利用機会激増、年間で約12億曲が利用

 このように音楽の使われ方が多様化する時代に向けてJASRACサイドも都度、その変化に応じているという。JASRAC広報部の薬師寺卓氏は次のように平成を振り返る。

「JASRACは、昭和の時代に始まり平成を通した80年間、作詞家、作曲家、音楽出版社などの権利者の皆さまへ適正な使用料を還元(分配)することを第一に事業を進めてきました。放送や演奏会等などの分野において利用者の皆さまと真摯に向き合いながら権利者への対価還元を増やす取り組みを進めてきたほか、当時はルールがなかった通信カラオケやネット配信などについて、ゼロから対価還元の仕組みを構築してきました。音楽の聴かれ方、使われ方、法律の改正に対応してきたという意味では利用の多様化に対応してきた歴史といえますが、権利者の皆さまへ適正な使用料を還元(分配)するという姿勢は一貫としています。

 ネット配信の出現により、大量の楽曲を利用することが可能になり、JASRACへ報告される曲目の数が爆発的に増加しました。現在、年間で約12億曲が報告されています。地域の演奏会において手書きで報告される曲目から、ネット配信で利用される数千万曲まで、その情報を分配につなげていくための対応を強化してきた時代でもあります」(同氏)

■今後の音楽シーンを予想、『生』で聴く、歌うというスタイルは普遍

 最後に、5月以降スタートする「令和」時代の音楽シーンについて薬師寺氏に聞くと、「配信に関しては、ダウンロード型からストリーミング型へ主流が変わりましたが、配信自体のシェアは今後も増えると見込んでいます。また、時代とともに音楽の聴き方は変わっていきますが、『生』で聴く、歌うというそのスタイル(JASRACの区分では演奏等(演奏会等、社交場、カラオケ))は、昭和の時代から平成を越え、『令和』の時代になってもその価値は増していくものと考えられ、分配額の構成にも影響していくのではないかと思います」と分析する。

 平成の時代を彩り、次世代に残すべく歌い継ぎたい名曲の数々が入ったこのランキング。令和時代はいったいどんな楽曲がどのような形態でランクインしてくるのか、また、昭和・平成の楽曲が令和の時代にどう歌い継がれ、聴き継がれていくか、興味深く見守りたい。

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