パパの自虐にママの愚痴、“今どき”育児を詠む『働くパパママ川柳』が共感呼ぶワケ
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 『サラリーマン川柳』や『オタク川柳』など、市井の人々のユニークな川柳を公募するコンテストが人気だ。そんな中、今年で3回目を迎えた『働くパパママ川柳』の入賞作が、先日発表された。『繁忙期 麺・麺・丼・丼・ 麺・丼・丼』など、親たちの奮闘ぶりを詠んだ川柳の数々には、SNSでも「わかりすぎる!」「悲哀が伝わってくる」と大きな反響があった。仕事と子育ての両立には様々な問題が付きまとい、いまだ発展途上といえる現在。世の働くパパやママのリアルな声が反映された川柳から、見えてくるものとは? 主催するオリックス株式会社の担当者に聞いた。

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■GWも育児に奔走、世相表す『働くパパママ川柳』

 『10連休 預け先無し 金も無し』

 五・七・五という短い言葉の中で、今年のゴールデンウィーク10連休の異例さと、働く親の嘆きをリズミカルに表した川柳に、まさにその通り!と膝を打った人も多いだろう。『サラリーマン川柳』や『オタク川柳』、『シルバー川柳』など特定の立ち位置から発せられる川柳が増えてきた中で、第3回を迎えたコンテスト『働くパパママ川柳』にも、人々の共感を呼ぶ投稿が集まった。長崎県在住のママによる今年の大賞作(冒頭)も、働く親たちの大変さだけではなく、保育園や待機児童問題など、世相が表れているあたりが実に秀逸だ。

 2017年にスタートした『働くパパママ川柳』。主催するオリックス株式会社のグループ広報部宣伝チーム・大野裕司さんは、同コンテストが誕生したきっかけを語る。

 「オリックスは、リースを起点に金融事業を中心としたビジネスを展開していました。そのため、個人のお客さまへの接点創出とオリックスの事業理解を目的に、3年前まで12年間ほど『マネー川柳』というコンテストを行っていたんです。ただ、その間に金融以外の事業領域も大きく広がり、コンテストのテーマを変更しようということになりました」

 そうして2017年、子育てと仕事の両立が当たり前になり、育児に関する様々な問題も話題になる中で立ち上げられた『働くパパママ川柳』。時勢もありつつ、「男女雇用機会均等法(1986年)以前から、男女が分け隔てなく働く環境があった」というオリックスが、“働くパパママを応援したい”という思いを込めたという。

■投稿から見えるパパの育児参加への意識向上、自虐やママへの感謝も

  1回目の募集には4万9,623作品、2回目は5万74作品、3回目となる今年は5万4,261作品が集まり、投稿数は年々着実に増加。総作品数のおよそ半数が30代と40代の子育て世代からの応募で、第3回では女性からの作品が約6割を占めているという。また、パパやママだけでなく、子ども目線や祖父母目線の募集枠も設け、裾野はどんどん拡大中だ。それだけ育児と仕事の両立に関心が高まっていると言えるが、中でも大野さんが注目するのは、パパによる川柳だ。

 「最近の投稿からは、パパの育児参加への意識向上と、それにまつわる時代の変化が見てとれます。働くママの奮闘を詠んだ作品がもっとも多いのは第1回目から変わりませんが、その中でもパパが育児をする姿もどんどん描かれるようになりました。パパ自身が投稿した作品には、“まだまだ足りないかもしれませんが、これでも頑張っています”といった、若干、自虐の入ったものや(笑)、“ママに頭が上がりません。とても感謝しています”というようなパートナーへの感謝の気持ちがこもった作品が多くなった気がします」

 確かに今回の受賞作には、自宅でも会社でも気を使う父親像を描いた『お尻拭き 社では上司の 尻拭い』や、懸命に子どもの相手をしたのに報われない寂しさをこぼす『こどもたち パパで遊んで ママで寝る』など、パパの自虐ネタも多い。育児をママだけに任せるのではなく、自らも積極的に参加しながら何かと苦労も絶えない。それを川柳で笑いに変えようとする振る舞いは、どこか健気さすら感じさせる。

 また、『テレワーク 親子で参加 web会議』、『お疲れさま AIだけが 誉めてくれ』といった作品からもわかるように、「便利なアイテムを使いながら、忙しない日常をやりくりする姿を描いた川柳が多くなった」とも。人の手でアナログに奮闘するのは今も昔も変わらないが、最先端ツールを取り入れた育児は現代ならでは。昨年発表の第2回でも、『パパ子守 子ども泣き止む ユーチューブ』という作品があったが、便利ツールに頼りすぎることなく、効率的に育児に取り入れようとする親も多いようだ。

 このように、応募数は増加の一途をたどる『働くパパママ川柳』だが、一般ユーザーからはどのような反応があるのだろうか。

 「やはり、共感していただく声が多いですね。誰しも仕事と育児の両立は大変で、愚痴ってみたいことも多いのでしょう。“共働きあるある”ではあるのですが、“うちの旦那もそうだ!”“そう感じているのは私だけじゃなかったんだ”と、気持ちが軽くなったという声もいただきます」

 とはいえ、働きながらの子育てへの理解、共働き夫婦の関係性などをテーマにした本企画は、SNSが発達した現在、伝わり方や個人の捉え方への配慮が難しい部分も多い。

 「もちろん、単なる面白さだけではなく、言葉自体の受け止められ方は考えますね。『働くパパママ川柳』には働きながらの育児を前向きに頑張ってほしいという気持ちを込めているので、それに沿った内容の作品を選ばせていただいています」

■余裕をなくしがちな忙しい日々も、川柳をきっかけにパートナーへの思いやりを

 もともと、仕事と家庭の両立を支援する制度や、産休中の母親の職場復帰を支援する研修を行うなど、まさに“働くパパママ”を応援する体制のあった同社。だが、あらためて川柳から刺激を受けることもあるという。

 「この企画を機に始まったわけではないのですが、特に女性の働き方への理解は年々深まっていますね。川柳にあるような愚痴や不安に対処できるよう、子育てを支援する取り組みは、より一層強化されていっています」

 ちなみに、今回の入選作にも、育児中ならおおいに共感必至、育児を経験していなくても思わず「うまい!」と言いたくなるものがずらりと並ぶ。『育休を 取った旦那に 手が掛かる』、『繁忙期 麺・麺・丼・丼・ 麺・丼・丼』など、忙しない実情を表しながらユーモアで包んでいる様は、ハイセンスすぎて感心してしまう。

 「働くパパやママ、そのご家族の方々がこの川柳をどこかで目にしたときに、クスッと笑ってくれたり、共感して気持ちがラクになったり、少しでも前向きになれるお手伝いができたら何よりです。自分もそうなのですが、仕事に育児にと忙しい日々を送っていると、どうしても余裕がなくなり、自分や相手を客観視できなくなってしまいます。そんなとき、『働くパパママ川柳』の作品を見て、“今まで、少しパートナーに厳しすぎたかな”、“お互いへの感謝が足りてなかったかも”と、お互いを思いやれるような発見につながればと思いますね。

 また、特に子育てには正解がないので、自分のやっていることが正しいのか間違いなのわからない。誰でも悩むことがあると思いますが、“自分ひとりではないんだ”と思っていただけたら、非常にありがたいと感じます」

 大野さんは、「この企画で世の中の意識を変えたい、問題提起したいというわけではない」と語り、一企業としての謙虚な姿勢を貫く。ただ、最近では子育てに関わる諸問題が取り沙汰されることが多いわりに、働きながらの育児にはまだまだ理解を得にくいこともある。

 そんなときに、ユーモアや自虐に包まれた『働くパパママ川柳』は、同じ立場の親たちのみならず、育児に関わりのない人にも届きやすいだろう。笑いを呼ぶ17文字から生まれた共感や親近感は、きっと働くパパママを様々な側面から応援してくれるはずだ。

(文:川上きくえ)

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