「炎上よりも エンジョイを」、“バイトテロ”作品が『アルバイト川柳』グランプリ
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 アルバイト求人情報サービス『an』(パーソル キャリア)は12日、公募企画『anアルバイト川柳』の受賞作を発表した。15回目を迎える今年、グランプリに選ばれたのは『バイト先 炎上よりも エンジョイを』という作品。近年増加した、アルバイターによる不適切動画のSNS配信をテーマにした川柳だ。これらが生まれる背景や、アルバイト市場の変化などを同社に聞いた。

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■求人情報の老舗『an』、“バイトテロ”ネタをあえてグランプリにした理由

 昨今、アルバイターが勤務先で不適切な動画や写真を撮影し、SNSに投稿して炎上する“バイトテロ”が多発している。特に飲食業界で多く発生し、食品や調理器具を不衛生に扱う内容が物議をかもした。被害を受けた店はどこまで責任を追及すべきなのか? それを防ぐ方法は? といった議論が、毎回ネットでも巻き起こっている。そんなさなか、まさにそれらの問題を想起させる川柳をグランプリに選んだ理由とは?

 同企画を担当するパーソル キャリア株式会社の亀田郷平さんは、“バイトテロ”問題を彷彿させる作品をグランプリにした意図を語る。

 「アルバイトとは本来、初めてのお給料や仲間との出会い、胸がときめく恋など、とってもワクワクする楽しいものであると思っています。実際に大多数の人たちは、仕事や職場に誇りを持って楽しんで働いているんです。本作品は、働くことにポジティブなメッセージをストレートに伝えているものだったので、グランプリに選びました」

 求人情報サービスの老舗である『an』としては、“バイトテロ”多発の理由をどう考えているのか?

 「アルバイトの楽しさややりがいをもって働いていれば、アルバイト先のことが好きになって、このような事件は起きにくいと考えています。好きなれる職場を提供するために、働く側と雇用する側との最適なマッチングを行うことが、我々のような情報を提供する側にとって一番大事なことであり、問題の解決に繋がると考えています」

■キャッシュレスや中年採用、身近なアルバイト事情を映す鏡

 “バイトテロ”も世相を表すテーマだが、今回の佳作の中には、ほかにも今年ならではの作品が選出されている。『あの娘との 円(縁)を引き裂く キャッシュレス』では、キャッシュレス化が進む店頭で働くバイトの心情を表現。ほか、『中年を 5人採用 5G(ファイブジー)』のように、中高年のアルバイト雇用が増加した現状を踏まえた作品も入賞している。

 このように、リアルタイムの事象を切り取る『アルバイト川柳』だが、開始からは15年の年月が経ち、時代による変化も見られるそうだ。

 「第1回のグランプリ『10円を 愛しく感じた 初昇給』、そして第2回目の受賞作『お前もか あの子目当てで シフト決め』などは、まさに“バイトあるある”ですよね。第5回目くらいから、○○王子(『おばさまに シール王子と 迫られる』)、こども店長(第6回『うらやましい こども店長 俺バイト』)のように、時事ネタが増えてきました。ここ2~3年の傾向としては、AIやインスタにまつわることなど、ITトレンドに関するワードが急増していると言えます」

 また、若者が多いせいか「お笑いネタも多い」とか。

 「今回、チョコレートプラネットさんの“そろりそろり”を取り入れた作品なども寄せられました(バイトデビュー賞『初バイト そろりそろりと 皿運ぶ』)。まさにバイトをしている若い人の、リアルな声が寄せられているんだと思います」

 働く人々の川柳といえば、32年もの歴史を持つ『サラリーマン川柳』を思い出す人も多いだろう。それに比べて、アルバイトをテーマにしている特性上、投稿者の年代が比較的若い。応募内容にもより軽やかさが感じられ、時事ネタや流行が敏感に取り入れられているのが『アルバイト川柳』の特徴だ。

 アルバイト市場自体も大きく変化してきたと指摘するのは、同社の西村舞さん。

 「昭和の時代は高度経済成長期と重なっていたため、アルバイトもガテン系の仕事が多かったんです。それが平成に入ると、ファストフードやファミレス、コンビニのバイトが生まれ、いわゆるシフト制勤務という形態が形成されました。これが今も続くアルバイトのイメージの始まりですね。昨今では、アルバイトの仕事内容も多様化しています」

 アルバイトをする人自身の志向も、ここ最近で大きな変化が見えるそうだ。

 「多様な働き方を望む人が増えている傾向にあります。昔、人気のアルバイトといえば誰もが知るコンビニやファミレス。でも今では、自分の趣味や嗜好性に合う仕事先を選ぶ人が増えてきました。加えて、学生さんの中には“就職に役立つような職場で働きたい”という人がとても多いですね」

■「後ろ向きにとらえるのではなく、一緒に笑い合えるように」

 とはいえ、これだけアルバイトが多様化しても、変わらないこともあると亀田さんは語る。

 「初めて労働を経験し、そこから仕事の大変さや楽しさを学ぶことができるのがアルバイトです。それだけに、『an』としても単に“アルバイト=労働”としては考えて欲しくなくて。アルバイトだからこそ得られる経験をポジティブにとらえてほしい、それを発信していくことが重要なミッションだと感じています。『アルバイト川柳』が、そのひとつのツールになってくれたらうれしいですね」

 時代とともに変化してきたアルバイト市場と、そこで働く人々の気持ちを、これら川柳は的確に切り取っていく。“バイトテロ”のような間違ったな吐きだし方をするよりも、よほど有意義のように思う。

 「川柳は、ネガティブなことや後ろ向きなことも、うまく笑いに変えて前向きに発信できる素晴らしい遊びだと思います。仕事だからこそ、しんどいこと、つらいこと、嫌なこともいっぱい出てくる。ただ、それを後ろ向きにとらえるのではなく、誰もが“こんなこともあるよね”と、一緒に笑い合うように『アルバイト川柳』を発信していけたらと思います。この川柳で楽しく発散していただければ、我々もやっている意味があるのかなと思います」

(文:今 泉)

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