講談界の俊英・神田松之丞が語る、“起爆剤”ラジオへの思い「このスタイルはずっと維持できない」
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 “いま最もチケットが取れない講談師”として、講談界のみならず演芸界も代表する存在で、各方面から注目を集める若き俊英・神田松之丞(36)。現在は多数のメディアに出演するなど活躍の場を広げており、講談の魅力を広めていく普及活動にも積極的に取り組んできた。世間を巻き込む快進撃が続くなか、その“起爆剤”であり“名刺代わり”と自負するのが、TBSラジオ『神田松之丞 問わず語りの松之丞』だ。強いこだわりをもって収録に臨むこの番組への思いや自身のラジオ体験、最近気になるラジオ番組、自身が牽引役として盛り上げてきた講談について、松之丞にじっくり聞いてみた。

【写真】芸能界の叔父貴と慕う爆笑問題・太田光と

■数字だけでは判断できない ラジオは「影響力のあるメディアなんでしょうね」

 『問わず語りの松之丞』は、2017年3月に単発特番で放送され、翌4月からレギュラー放送がスタート。その後、時間変更を経て、現在は毎週金曜午後9時半から30分番組として放送されている。「芸の域にまで高められた『愚痴』と『ボヤキ』がリスナーを大爆笑させる。毎回無事には終わらない」と公式サイトで紹介されているように、ニュースで話題の人物を忖度なしの毒舌でぶった切り、日々の不満や怒りをストレートにぶつける。その語り口には芸能界にもファンが多く、テレビ朝日の弘中綾香アナは自身の番組のゲストに松之丞を招くほど、心酔している。

 ラジオの開始とメディアへの出演が増えた時期がほぼ重なっていることから「ラジオが起爆剤になりましたね。テレビのお仕事はもちろん、雑誌で特集してくださる時など、ほとんどがラジオきっかけです。世の中には意外とラジオ好きな人がいて、特に世の中を引っ張っていく人に多いと感じています。聴取率などの数字だけでは判断できない、影響力のあるメディアなんでしょうね」と自己分析する。講談というジャンルは、初見の人にはハードルは高いことから「ラジオが名刺代わりになっています。30分くらいだから気軽に聞けるし、特に『命の回』(※18年9月16日放送分)とかは、人に紹介しやすいですね」。
【※この回を含む過去の放送分はすべて「TBSラジオクラウド」で聴取可能】

 学生時代は「ラジオが大好きで、TBSラジオとニッポン放送はあらかた聞いていた」という松之丞。「伊集院光さんの『深夜の馬鹿力』とナインティナインさんの『オールナイトニッポン』で、ラジオの楽しさを知りました。深夜ラジオをほとんど聞いて、ほかにも『五木寛之の夜』とか、小沢昭一さんや永六輔さんの番組も好きでしたね」。現在も『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)と『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)は欠かさず聞き続け、新しい番組も積極的に聞いている。

 「最近は番組スタッフにおすすめされて、みちょぱ(池田美優)さんのラジオを聞きました(笑)。彼女も忙しくて1日に仕事6本とかあって、自分がメインじゃなくてただ聞いているだけの仕事もあり、きついだろうなっていうのがナチュラルに嫌味ではなく伝わってきて。悩み相談にも答えているんですけど、全部自然体ですごく楽しいんですよ。年上の人のラジオの感じは大体わかるので、新しい人や若い人のラジオのほうが楽しいですね。単発でしたが、弘中綾香さんの『オールナイトニッポン』を聴いた時も、すごいラジオの才能で、ただラジオ運転が荒くて、無免許で運転しているような感じもあり(笑)、その暴走も面白いなぁと。単発ではなく毎週聴きたいですね。疲れすぎている時は逆に『夏木ゆたかのホッと歌謡曲』(ラジオ日本)とかも聞いたり(笑)。演歌が沁みる世代になってきたから、意外と癒やされるんですよ」

 リスナーとしてさまざまなラジオを楽しんでいるが、最近、パーソナリティーとして嫉妬を覚えた番組があったという。「ニッポン放送の『ラジオ人生相談』で、ドリアン助川さんがEDで悩んでいる人の相談に乗ったんですが、それは嫉妬しましたよ。なぜ俺じゃないのか、と…」。学生時代に松之丞がEDで悩んでいたのは、『問わず語り~』では幾度となく紹介され、テレビでも披露されていることから、今や有名な話。「ウチの番組でもメールを募集しているんですから、こっちに送ってほしかった。なんだったら、EDの専門家として自分がニッポン放送に行ってもいいです(笑)」。

 ラジオ好きとあって「自分もいつかはラジオ番組を、という思いがありましたね。ディレクターの戸波さんに拾っていただいて、いろんな方の尽力で続けてこられました。いつ打ち切られてもおかしくない段階から、おかげさまで最近はradikoの数字などの状況が良くなってきて、多少は支持されているのかな」と、謙そんしながらも喜びをにじませる松之丞。番組の好調を感じる一方、「賞味期限もあるので、このスタイルはずっと維持できない。どこかでギアを変えていかなきゃいけない。こういう番組を求めている人がいるのもわかりますけど、僕の下の世代の人がやることなのかな」と複雑な気持ちもあるようだ。変えるタイミングは、40歳になった時か、来年2月には真打に昇進し、40年以上空席となっている神田派の大名跡・六代目神田伯山(はくざん)を襲名する時か。

■数十年ぶりに脚光を浴びる講談界「下から上までいいニュースが駆け巡っています」

 かつては落語を凌ぐほど人気を誇っていた講談だが、戦後は存続が危ぶまれるほど演者が激減。東京の講談界は数の上では女性優位がしばらく続いており、現在の若手の男性はわずかだった。そんな状況の中、松之丞が新しい風を吹き込み自身が飛躍すると同時に、講談という伝統芸能も数十年ぶりに脚光を浴びるようになった。「『NHK講談大会』という年に1度の大会があって、久しぶりに10年前くらいのを見たら、客席がすごいジイサンばっかりで(笑)。そんな状況から、よくここまで立て直したなって自分でも思いました」と牽引役としての自負も持つ。「チケットの倍率も上がってきたし、僕以外の人も注目を集めているし、後輩も増え、僕の師匠の神田松鯉(かんだ・しょうり)が人間国宝になりました。下から上までいいニュースが駆け巡っています」。

 松之丞のもとに弟子入り志願者も増えているが、「手紙もよく来ますけど、弟子となると親御さんから預かるわけですが、向いてないと思ったら辞めさせるのも人情。別の道に進ませるなら早いほうがいいし、どのくらい様子を見るのが正しいのか。見極めるのも難しいし、いろいろ真面目に考えちゃって、誰でも彼でも弟子にはできないですね」と冷静に語る。では、講談師に向いているのは、どんな人なのか。

 「いろんなパターンがあると思うのですが、人前に出るにはある程度“鈍感”な方がいいんですよ。ネタをやって滑って、いちいち落ち込むような人は向いてないかな。前に向かっていける図太さと、ちゃんとギアチェンジして調整できる繊細さ、両方ある人が向いていると思います。あとは、僕もそうだったのですが、小学生の時の国語の授業で教科書の朗読が上手だった子も適正はあります。自分の頭の中にある言葉を口ですぐに変換できるセンスというか。アナウンサーの方に聞いても、みんな小さい頃から教科書とかを朗々と読めたっていうんですね。そういう技術って、小学生の頃のああいう段階からわかると思います」

◆次回のインタビューでは、生放送と収録放送の違い、ラジオの発言を切り取るネットニュース、“芸能界の叔父貴(おじき)”と慕う爆笑問題・太田光、さらにはイベントゲストの小川彩佳アナと立川志らくについて、思いを語ってもらった。

【イベント情報】
『問わず語りの松之丞 presents まっちゃんまつり2019』
10月14日 有楽町・よみうりホール
「昼の部」午後1時~ ゲスト:小川彩佳
「夜の部」午後5時半~ ゲスト:立川志らく
チケット全席指定(入替制)
S席 3800円/A席 3500円/B席 3100円
e+で9月13日から2次プレオーダー、28日から一般発売

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