現役大学院生が彼氏の束縛目的でメンヘラ会社起業「病むことはアイデンティティ」
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 イベント会社の経営者である彼氏の社外取締役になるために「株式会社メンヘラテクノロジー」を起業した高桑蘭佳さん。彼氏に依存するあまり、返信がなければ着信履歴70件、職場や出張先に押し掛けることもあるという。いまや“メンヘラ”という言葉は日常的に使われており、“病みツイート”なるものも日々目にするが、高桑さんは「病むことは悪いことではない」と豪語する。その理由とは。

【画像】驚愕…!返信してくれない彼氏への鬼ライン画面ほかメンヘラフォトギャラリー

■得意のテクノロジーを彼氏束縛に活かしたい、理想は「彼氏をヒモにすること」

 「株式会社メンヘラテクノロジー」では、スタッフがLINEで話し相手になってくれる『メンヘラせんぱい』などのサービスを提供するベンチャー企業。起業のきっかけを高桑さんは「とある彼氏の言葉から」と話す。

「彼氏が会社経営をしていて、その会社に干渉したくて、役員にしてくれないかとお願いしていたんです。でも学生である私を役員にするわけにはいかないと彼氏に断られ。『会社を立ち上げて、事業をリリースできるぐらいの実績があればいいよ』という彼氏の言葉を聞いて起業しました」(高桑さん/以下同)

 高桑さんは昔から女の子集団で求められる“同調文化”が苦手で、恋愛に依存。彼氏と少しでも連絡がとれなくなると不安になり、高校時代には恋愛にのめりこむあまり躁鬱病になり不登校に、睡眠薬も手放せなくなった。自傷行為に走ることもあったほか、不特定多数の男性と関係を持ち、虚しさを感じる日々も送ったという。

「基本的に私との時間を最優先してほしいので、彼氏が遊びに行く相手が男でも女でも嫌なんです。大学での研究では、彼氏のTwitter解析ツールを生み出しました。Twitterの彼氏宛のコメントから、アカウントの属性や親密度を判定する仕組みで、彼氏のアカウントに限りますが精度は8割ぐらいまで上げられました。あと親密度の高いアカウントには私から自動でいいねを送る“威嚇いいね”システムも作ったら、彼氏はSNSをやめてくれました」

 パソコンに差すとエンドレスに「好き」と入力される特製のUSBを作成したこともある。自分の得意分野であるテクノロジーを使って彼氏を束縛することの成功体験となった。現在の極端な理想は、「彼氏をヒモにして、私がいないと生きていけないような関係を作る」とのことだ。

■勉強も仕事も全てのモチベーションは「彼氏」、人のためのサービスは考えていない

 昨今呼称される“メンヘラ”の人たちは「承認欲求をこじらせているタイプが多い」と高桑さん。現在の彼氏が高桑さんを否定する言動しないことで自身が落ち着いた体験も合わせ、「株式会社メンヘラテクノロジー」の基本ルールは「相手を決して否定しないこと」とした。また“メンヘラ”は「人に構ってもらいたい」という気質を持つ。いわゆる“かまってちゃん”だ。そのため『メンヘラせんぱい』では、自然言語処理などのテクノロジーを使用しつつも、AIではなく人が返信することにこだわった。

「基本的に、メンヘラの私がヘビーユーザーになれるサービスを作ることが大事だと考えて設計しています。実際に私も匿名でサービスを利用しており、とても助けられています。利用ユーザーの感想を見て、友達には言いづらいし、病院のカウンセリングへ行くほどではないが、誰かに話を聞いてほしい人がたくさんいることが分かりました」

 病院のカウンセリングの値段が高い要因の一つは、カウンセラー自身も話を聞いているうちに負担を受け、カウンセラー自身が定期的にカウンセリングを受けてメンタルを保つなどのリスクが重なるからだという。高桑さんはそこにも目を向け、安価にサービスを提供するために『メンヘラせんぱい』では言語学習機能を用いて、相談者が悲しいのか、興奮しているのかなどを分析するツールを開発中。どう答えたらいいかのアドバイスまで行ってくれるが、あくまでも話を聞き、考え、返信するのは“人間”だ。

「今はAIが自分の悩みを聞いてくれるということにまだ抵抗のある時代だと考えています。ですが、ロボットを子供やペットのように癒しの存在に近づける研究もなされており、もう少し未来になれば、AIやロボットに構ってもらって安心する時代が来るかもしれないという気もしています」

 あくまでモチベーションは彼氏を束縛する手段を作ること。そして自分が必要なサービスを作ることだ。メンヘラテクノロジーのサービス向上は、会社を大きくして、彼氏の会社を“買収”するため。彼氏は「また言ってる」ぐらいに笑っているというが、買収が実現すれば、彼氏の仕事にも干渉でき、彼女が理想とする関係に少し近付けるのではないかと期待している。

■「病むことはアイデンティティ」、感受性強いメンヘラの才能咲かせたい

 “メンヘラ”の定義はいまだ曖昧だ。様々な解釈があり、高桑さんは「メンヘラとは何か」についても並行して研究している。現段階では「愛されたい」「構って欲しい」という欲求が強く、病みやすい人をメンヘラと捉えている。

「病む原因をなくすのは無理だと思っています。だから病みながら幸せになる方法を考えるしかない。その第一歩として、誰かに話して自分の気持ちを整理すること。自分の感情が分からなくて、分からないまま爆発する人が多いように思います。何に対して怒っているのか、辛いのか。それを整理することで解決策が見えてくる。このあたりは大学院で臨床心理学を専攻しているメンバーと話をしながら研究を続けています」

 また「病むことがなくなると自分のアイデンティティがなくなると思っている」とも高桑さん。実際に、事業やサービスのアイデアが浮かぶのはいつも病んでいる時。病みやすいこと自体はその人自身のことだし、悪いことではない。ただ、病んでしまったときの対処方法が適切でないと、幸せになれなかったり、余計に辛い状態になってしまったりすることがある。そんなときに最適なサービスづくりをしたいのだという。

今年5月には、「好きで好きで仕方なかった」という理由で殺人未遂事件が起きたこともあったが、相手に依存するあまり自傷行為や時に殺人事件にまで発展する“メンヘラ”も存在する。高桑さんはこういった事件を耳にすると、「他人事ではない」と感じる。そうならないためにも彼女自身、同社のサービスが必要だそうだ。

「病みやすいというのは裏返せば感受性が高いともいえます。実際にクリエイティブ系、芸能系で成功している人はメンヘラが多いというお話を関係者の方から聞きました。大事なのは、自身をコントロール出来ているかどうか。メンヘラはすごい可能性を秘めているのに、自分をコントロールできないだけでその可能性をつぶしてしまうのはすごくもったいない。あくまでサービスは自分のために作るが、その上でそういった人たちへのサポートにもなってくれたらうれしいですね」と高桑さん。

“メンヘラ”というアイデンティティが生み出す未来に、どのようなサービスが作り出され、どのような才能が開花するのか。彼女と同企業の活躍を見届けたい。

(取材・文/衣輪晋一)

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