32歳で初主演の桜井ユキ、30代で築いた独自の女優論「流されるまま生きていきたい」
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 『第17回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞』でよるドラ『だから私は推しました』(NHK総合)が、優秀作品賞を受賞した。同作で初主演を務めた桜井ユキが、地下アイドルを追いかけて全てを失ったオタク女子・遠藤愛役を好演した。これまで演じたことのない役を演じるうえでの葛藤や撮影中のエピソードをはじめ、30代の生き方について語った。

【写真】ヲタ芸ポーズをキメる桜井ユキ

◆配役に「どうして私なの?」という疑問もあった

――『第17回 コンフィデンスアワード・ドラマ賞』でよるドラ『だから私は推しました』が、優秀作品賞を受賞しましたが、率直ないまの気持ちをお聞かせください。
【桜井】 感無量のひと言です。撮影に入る前からスタッフの方々と何度も話し合い、作品に対する想いを聞きました。その想いを聞いて撮影に望んだので、優秀作品賞をいただけてとても嬉しいです。そして何より、このドラマを観ていただいた方に、私たちの想いが伝わったことが大きいです。「ドラマを観てがんばろうと思えた」など、たくさんの方に感想をいただけました。キャスト、スタッフみんなで良かったねと言いたいです。

――本作が初主演ですがいかがですか?
【桜井】 主演ということを特に意識はしませんでした。というより余裕がなくて…普通のOLがアイドルオタクになるという遠藤愛のような役を今まで演じたことがなかったので、想像ができなかったんです。私が今まで出演した作品を観て、今回のような役をいただけたことに、「どうして私なの?」という疑問もありました。クランクインまでは気持ちの余裕がなかったです。

――桜井さんが起用された理由は聞きましたか?
【桜井】 はい。高橋プロデューサーは『モンテ・クリスト伯』(フジテレビ系)、演出の保坂監督は映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』を観て私と一緒に仕事がしたいと思ってくれたようですが、この2作を観てオタク女子の役というのが全く結びつかなくて(笑)。でも、どの作品を観て仕事のオファーにつながるのかは、演じている側からはわからないので、考えるのはやめました(笑)。

――主演を演じた実感はどうですか?
【桜井】 現場はとても和やかで楽しかったのですが、限られた時間のなかでの撮影なので大変でした。演技をするだけでなく、現場の雰囲気がとても大切だと感じました。私がテンションが低いと周りの人が気を使うので、楽しい現場づくりを心がけました。そうするとスタッフさんとの会話も増え、いろんな部署のスタッフさんと濃密な時間を過ごせたと思います。主演を演じたことだけでなく得るものがたくさんありました。

◆30分のドラマは繊密で、物語を成立させる上で葛藤がある

――よるドラの枠は、1話30分で8回放送と凝縮されていますがいかがですか?
【桜井】 保坂慶太監督のこだわりで、普段MVを制作している藤代雄一朗さんに、カメラの撮り方や編集をお願いしたようです。撮影現場でも監督と藤代さんが、カメラワークやシーンの撮り方など、モニター前でいつも会議をしていました。出来上がった映像を観ると、無駄がなく感動しました。面白かったのは、どうしても30分に収められない時に、監督から「このシーンの台詞は、巻き気味で」と言われたこともありました(笑)。間を詰めて十数秒稼ぐ、それぐらい30分のドラマは繊密で、だけど物語を成立させないといけないという葛藤が、常にあったと思います。そんなスタッフさんたちの姿を見ているとがんばろうという気持ちになりました。

――遠藤愛のような人に気を使うOL役というのも、桜井さんにとっては珍しいと思いますがいかがですか?
【桜井】 自己主張の強い役が多かったと思います。愛のように内でもがくより、気持ちを外に出していく役が多かったです。これまでと違う役だからと頭で考えて演じると観る方にもそれがわかってしまうので、あまり何も考えず初日の撮影を迎えました。

――撮影前に、オタク文化についての知識はありましたか?
【桜井】 なかったです。だからといって撮影前にアイドルのライブを観て予習をするのも違うなと。栗本ハナに出合って愛のオタク人生が始まるので、フレッシュな気持ちでいたいなと思いました。

――出演しているオタク役の方が、とてもリアルに感じました。
【桜井】 普段アイドルのライブに行く方が半数ぐらい出演しています。エキストラの方もかなり練習をされていました。

――アイドルオタクのエピソードも、森下さんがかなり調べて脚本にしているなと感じました。
【桜井】 出演していたオタク役の方も、“あるある”がたくさんあると言っていました。オタクを異色なものとして扱っていないし、オタクを美化するわけでもなく、多方面から描いた目線がすごく良かったです。一歩間違えると反感を買うこともあると思うので、素晴らしい脚本でした。

――栗本ハナを演じる白石聖さんとのやり取りが中心ですが、そこに見応えがありました。
【桜井】 2人の間に漂う近いようで遠いような雰囲気を大切にしました。愛とハナの距離感があまり近づきすぎないようしたほうがいいなと思い、一緒に演じる時間は長かったけどご飯にも行かず、「一度もご飯に誘ってくれませんでした」と後から白石聖ちゃんに言われたくらいです(笑)。

――“あまり近づきすぎないほうがいい”というのは直感ですか?
【桜井】 距離感が近くなった2人が画面に映ると、それが漏れ出ちゃうのでは……と思っていて。2人とも近づきたいけどできない、でも心は通じ合っている。その雰囲気をフレッシュな状態にしておきたかった。中盤から感情的なシーンが多かったので、あの距離感で良かったなと思っています。

◆30代は変化の歳、結婚出産を経験したい

――桜井さんは以前、「昔の自分は人の目を気にしていて、それが吹っ切れたタイミングがありました」と語っていました。今回の遠藤愛という役に通じるものがありますが、いかがでしたか?
【桜井】 人と対峙してもうまく乗り切るすべというか、間違った処世術が身についてしまって、それを息苦しく感じるようになった。私がこの仕事を始めた時に、今までの自分は通用しないと思うようになりました。そのときから自分のなかにある不要なものを捨てるようになって。だから愛の気持ちが少し理解できます。

――自分のなかにあるものを脱ぎ捨てるのに時間がかかりましたか?
【桜井】 そうですね。お芝居を始めた当初に言われたことで、それは私自身も感じていたことでもありました。自分自身がその言葉を認めてしまったから、その鎧を脱いでいかないとさらに違和感を感じる。鎧を脱ぐことで楽になりましたが、力を抜きすぎて全くといっていいほど愛想を振りまかなくなって。そうしたら今度は、「感じが悪い」と言われて(笑)。

――何でも全力になるタイプなんですね。
【桜井】 ゼロか百かどちらかで(笑)、時には中間が大切だなと学びました。

――今回主演を演じましたが、今後チャレンジしたいことはありますか?
【桜井】 明確にありますが、あまり言葉に出さないようにしています。今回の遠藤愛という役もそうですが、自分の想像を超えた役をいただけるのが面白いです。最近になってそういう機会が増えているので、今を楽しむことがこの先につながると思っています。いい意味で流されるまま生きていきたいと。

――では30代は、どのように過ごしたいですか?
【桜井】 漠然とですが、結婚出産は30代で経験したいと思っています。妻・母親になった時に、多分私自身の色も変わってくると思っています。年齢を重ねていく上でずっと同じでいることは難しいので、変化を楽しんでいきたい。私にとって30代は、変化の歳になると思っています。結婚も同じで波に乗れるか乗れないか、それぐらいの大きな流れに乗って、流れに身を任せられたら。

――その流れもゼロか百かということですかね。
【桜井】 はい。乗れるか乗れないかのどちらかですね。中間取るのが苦手なので(笑)。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事