▼野菜がたっぷり入ったミネストローネが、寒さで冷えた体を温めてくれる。素材を生かすため添加物を加えない...
2011年、東日本大震災による自粛ムードや風評被害による観光業への影響は計り知れないものでした。同年の...
新型コロナウイルス感染症に関わる医療従事者に感謝を伝えようと、前橋市駒形町の絵手紙講師、小林生子さん(...
キャットタワーにも登れるし、仲間たちと追いかけっこもできる。だが、その猫『メンメ』は、眼球のない、盲目の猫だった――。猫の殺処分ゼロを目指して活動するNPO法人『ねこけん』により、49頭もの多頭飼育崩壊の現場から救い出されたメンメ。『ねこけん』ブログでも、その際のリアルな様子が綴られている。メンメはその後、どんな運命をたどったのか。そして猫同士の助け合いとは? 代表理事・溝上奈緒子氏に取材した。
【写真】盲目の猫メンメ、壮絶な飼育現場から救われ今では仲間猫とラブラブ&モフモフ
■49頭もの多頭飼育崩壊の現場から、助け出された猫
最近、『ねこけん』のブログで、盲目の猫『メンメ』の現在の姿が報告された。一見、幸せそうな猫に見えるが、メンメには壮絶な過去がある。それは数年前のこと。練馬区で49頭もの猫を飼っていた男性が病院へ搬送され、猫の世話ができなくなったという連絡が仲間のボランティア団体に入り、そこから『ねこけん』にSOSが入ったところから始まる。早速、溝上氏はボランティアメンバーとともに、その家を下見に訪れた。
「もう、健康な子は誰もいないんじゃないかというくらい、みんな何かしらの病気を持っていました。私たちも、当初は下見だけのつもりだったのですが、翌日まで生きられるかどうかわからない子が3匹もいて、すぐに病院へ連れて行きました。中には5歳か6歳の大人の猫なのに、体重が1.2キロほどしかない子もいて。そのうちの1頭、メンメはガリガリで眼球がなかったのですが、それでもマシなほうだったんです」と、溝上氏は悲惨な現場を振り返る。
保護当時のブログを見ると、あまりの猫の多さにボランティアメンバーたちが途方に暮れた様子が書かれている。医療費や保護費用がどれだけかかるかもわからない。どんなに猫に愛情を持っていても、経済力や体力などがないと、多頭飼育は崩壊を招くケースが多く、猫からも人からも幸せを奪っていく。少ないフードでは栄養が足りず、健康を損ね、病気やけがをしてもケアされない場合が多い。そして劣悪な環境にもかかわらず、増え続けてしまうのだ。
レスキューされたメンメは、ほかの猫たちと同様、最初はひたすら隠れていたようだが、『ねこけん』が安心な場所だとわかってくると、次第に心を開き始めた。どうやら、メンメの兄弟たちが「もう大丈夫」と教えてくれたようだ。
「周りにいる猫たちが、弱い個体を助けることは実はよくあることなんです。足がない子がおしっこをした後、ほかの猫が砂をかけてあげることもあります。猫たちがコミュニケーションを取って、しっかり助け合って生きているという場面には何度も遭遇しました」と溝上氏。そんな助けもあり、『ねこけん』で保護してからは、メンメは少しぽっちゃりした元気な猫となった。
「もともと猫は、あまり目が良くないんです。たとえ目が見えなくても、ここにご飯がある、ここに段がある、ここに爪とぎがある、とわかってくると、見えている状況と変わらず動けるようになる。目が見えないまま外で生き抜いていた猫を保護したこともありますからね」。
■メンメの幸せに涙…ありのままを受け入れる家族と出会えた
近親交配で生まれたメンメは眼球がなく、目は見えない。いくら慣れれば生活に支障は少ないとはいえ、理解してありのままを受け入れて貰えるだろうか? 一抹の不安がよぎる。
だが、ある日そんなメンメを家族に迎えたいという夫婦が譲渡会に現れた。彼らはメンメが多頭飼育崩壊から保護されたこと、目が見えないこと、すべてを理解したうえで「ぜひ家族に迎えたい」と申し出たという。しかもその理由は、「目が見えなくてかわいそうだから」という同情ではなく、「メンメが可愛いから家族に迎えたい」というものだった。さらに1頭では寂しいだろうと、警察署から保健所へ送られそうになったところを保護した猫『鎮座』と一緒に。メンメを家族に迎え入れた夫婦は現在、アメリカンショートヘアの多頭飼育崩壊から保護された1頭も加え、3匹との生活を楽しんでいるという。
「猫を飼える環境であれば、仲間がいることは決して悪いことではありません」という溝上氏。『ねこけん』の保護猫譲渡の条件には、「一般家庭での飼育は4頭まで」と決められているが、条件さえクリアしていれば問題はない。
「メンメがキャットタワーに登れた」「鎮座と追いかけっこができた」と、メンメを迎えた夫婦は涙を流して喜んでいるそうだ。そして、そんな報告を受けた『ねこけん』メンバーも、ほっと胸をなでおろしている。目が見えなくても、何だってできる。メンメは今、新しい家族とともに愛情にどっぷり浸かった生活を送っている。
(文:今 泉)