「ポケモン」新たな遊び開拓続けた25年 石原恒和社長、核“人との繋がり”に手応え
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 1996年に発売されてから、きょう2月27日で25周年を迎えた人気ゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』。それを記念して、テレビアニメ、カードゲーム、ジェット機…など、これまでの『ポケモン』の歴史を振り返るアニバーサリー動画が公開されている。年代問わず今では知らない人はいない、ゲームの枠を超えた日本を代表するコンテンツとなったが、これまでの歩み方はどのようなものだったのだろうか? 株式会社ポケモン・石原恒和社長にインタビューを実施し、これまでの歴史を振り返ってもらうとともに、ORICON NEWSがこれまでの関連取材を通して感じた『ポケモン』の歴史を紹介していく。

【写真】どれで遊んだ?歴代『ポケモン』シリーズの全ソフトがズラリ

■企画スタートは“新しい遊びの実現” 画期的な通信交換、ソフト同時発売の狙い

 シリーズとしては、1996年に1作目『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されると、子どもたちの間で人気となり、その後アニメ、漫画、カードゲームなど、さまざまなメディアミックスが展開されてきた『ポケモン』。現在は8作目の最新作『ポケットモンスターソード・シールド』がNintendo Switchにて発売中で、すべての関連ゲームソフトの累計出荷本数は全世界で3億6800万本以上(※2020年3月末時点)。世界中の人々がポケモンと触れ合ってきた。

 ゲームは『ポケモン 赤・緑』、『ポケットモンスター ソード・シールド』など、2つのソフトが同時に発売されるが、1996年当時はそのようなゲームはほとんどなく画期的だった。面白いのが、それぞれのソフトで登場するポケモンの種類が違うため、1つのソフトでは全種類のポケモンをそろえることができないというところ。自分が『ポケモン 赤』を購入しているのであれば、『ポケモン 緑』で遊んでいる友人に頼んで、そのソフトでしか登場しないポケモンを交換してもらうなどし、全てのポケモンをそろえていくことになる。『ポケモン』は、どのような企画からスタートしたのだろうか。

 石原社長は「実際の開発は1990年ごろからスタートしています。当時、田尻智さん(現ゲームフリーク代表取締役)から、『通信ケーブルを用いた、新しい遊びが実現できるんじゃないか』という提案をいただきました。これが実現できれば今までとは全く違う遊びができるんじゃないかという印象はありました」と説明する。

 今回公開された記念動画でもわかる通り、1作目『ポケモン 赤・緑』は、携帯ゲーム機・ゲームボーイで発売され、画面はカラーではなく白黒。今のようにネットワーク環境が整備されている時代でもなく、ポケモンを交換するには「通信ケーブル」という有線のケーブルをお互いのゲーム機に繋いで交換しなくてはならなかった。33歳の筆者も当時、ポケモンをプレイしてから「通信ケーブル」という存在を知り、友人と遊ぶ上で必要なものだったため購入した記憶がある。年齢が近い20代後半~30代前半の人に聞いても、ポケモンがきっかけで購入した人が多く、業界としても「通信ケーブル」が普及したと同時に、友人と外で携帯ゲームをするきっかけになったと言えるだろう。

 続けて、石原社長はこう話す。「ゲームフリークさんが『交換するのが面白くなるにはどうしたらいいのか』ということに注力する中で、2種類のソフトで出現するポケモンが一部異なれば、双方が喜ぶ交換が成立し、より交換することが楽しくなるのではないか、交換でケーブルを通る時に進化するアイデアはどうだろう、里親に預けたら経験値を多めにしよう、というような楽しい仕組みが生まれてきたのです」。ゲームで『人との繋がり』を重点においたとし、ポケモンの核は“対人関係”だったことがわかる。

 実際、『ポケモン 赤・緑』の音楽やポケモンの鳴き声を制作して、初期からシリーズに参加している増田順一氏も、過去のポケモン関連のイベントでこう話している。それはポケモンの新作を携帯専用ゲームからNintendo Switchに発売した際、「大画面で遊べる『ポケモン』なので、みんながどうやってリビングで楽しめるかを考えました。音楽も優しい感じにし、みんながリビングに集まりやすくなるようにした」。1人で画面を見ることが多い携帯ゲーム機から据え置き型としても遊べるNintendo Switchに『ポケモン』のコンテンツを移行した際にも、「人との繋がり」を強調していた。

■山寺宏一、岡本信彦…関係者が感じたブーム「真のポケモン人気を実感」

 登場するポケモンも1作目は151種類だったが、新作が発売される度に種類が増えていき、現在は800種類以上。そろえるのも一苦労だが、ネットワークの普及とともにポケモンを集めやすくするためのサービスやコンテンツが提供されている。今ではスマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』と連携も可能で、任天堂のハード以外のサービスとの「接続する」プロダクトやハードと共に進化してきたコンテンツとなっているが、ポケモンにしかないユニークネス(独自性)は一体どこだろうか。

 石原社長は「先ほど述べた通り、2種類のソフトで出現するポケモンが一部異なり、交換や対戦をすることで、ポケモンが新しい遊びになっていったことは確かです。その後も、ハードの進化に合わせて、ワイヤレスでのすれ違い通信など、ほかのトレーナーとの繋がりを非常に大事にしてきています。やはり通信はポケモンにとって非常に大事なことですし、それで遊びが拡張していくということが根幹だと思います」と力を込める。

 “人との繋がり”を大切にしてきたポケモン。それに応えるかのように、これまで25年間、多くの人々が支持してきた。今回公開された映像でも見てわかる通り、1997年にテレビアニメ放送スタート、1998年から劇場版が公開、それと同時にポケモンたちが描かれたジェット機「ポケモンジェット」の運航がスタートするなど、発売1~2年でゲームの枠を超えて社会現象化したことがわかる。「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(1998年公開)に幻のポケモン・ミュウ役として出演した声優・山寺宏一は、当時のポケモンブームについて、ORICON NEWSのインタビューにこう話している。

 「一番思い出に残っているのは「ミュウツーの逆襲」の記者発表会の時ですね。レイモンドと2人で司会を務めることになったのですが…」「正直、僕も『ポケモンはすごいブーム』という認識はあったのですが、報道陣が200人以上来るほどの注目度に驚かされました。ここで、真のポケモン人気を実感しましたね」(※2019年公開「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」インタビューより)

 今でも名作と呼ばれる「ミュウツーの逆襲」は日本国内で興収72.4億円、全米においては、日本映画興行収入歴代1位の記録を未だに保持するなど、ゲームだけではなくアニメ・映画でも支持。そして、メディアミックス展開されたポケモンのブームは1~2年だけで終わらず、ハリウッド実写映画「名探偵ピカチュウ」(2019年公開)、世界中で社会現象化したスマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』(2016年)の配信など、コンテンツの衰えが見えない。

 ポケモン初登場から今でも触れている33歳の筆者だが、アニメ「ポケットモンスター サン&ムーン」にグラジオ役として出演した声優・岡本信彦(34)にインタビューした際、印象的だったエピソードがある。ポケモン好きの岡本は「僕が驚いたのは、『ポケモンの収録現場でここまでゲームのお話ができるのは岡本さんだけですね』と(スタッフさんから)言われたことです。僕の様に幼いころからポケモンに触れ合った人たちを、スタッフさんの間では“ポケモンネイティブ”と呼んでいるみたいです。20年以上続いているアニメ「ポケットモンスター」シリーズに、僕のようなポケモンに触れ合ってきた世代が多く出演してきているのです」と教えてくれたこと。ポケモンに触れて育ってきた人は今、ポケモンと近いところで仕事をし、コンテンツを支えていることを実感した瞬間だった。

■ポケモンが証明したゲーム世界の拡張 人々の生活をエンタメ化する今

 通信ケーブルの普及やソフトを2つ同時に発売することなど、画期的な挑戦や業界に大きな恩恵をもたらした『ポケモン』。そのほかにも、日本国産では初の本格的トレーディングカードゲームとなった「ポケモンカードゲーム」(1996年)の展開、NINTENDO64にて同梱発売されたVRS(音声認識システム)を使いピカチュウと会話・遊べるゲーム『ピカチュウげんきでちゅう』(1998年)、歩数計をゲーム化したと言えるピカチュウとお散歩する『ポケットピカチュウ』(1998年)、他社の人気ゲーム『鉄拳』シリーズとコラボしたアーケードゲーム『ポッ拳 POKKEN TOURNAMENT』(2015年)など、ゲーム機の枠を超えた製品が数多くある。

 ポケモン誕生25周年を迎えた今、石原社長は世の反響とともにゲームと現実世界の垣根が超えたことに手ごたえを感じていた。「映像を見て感じたことは、『ポケモン』の世界が広がったシーンが印象深いです。『ポケットモンスター 赤・緑』の発売と同じ1996年に、ゲームボーイの中だけではないポケモンの楽しみ方を広げた「ポケモンカードゲーム」の発売。その3年後、『ポケットモンスター 金・銀』において新たなポケモンやストーリーとの出会いにより、ポケモンの世界がさらに拡張していくことが証明されました。その後もシリーズを重ねていく中で、近年では、『ポケモンGO』や映画「名探偵ピカチュウ」により、世界の人々の間でより大きな広がりを獲得していきました」と振り返る。

 25周年の節目を迎えた『ポケモン』だが、街に出てポケモンを探す『ポケモンGO』(配信中)、毎日の歯磨きを楽しみにさせるゲーム『ポケモンスマイル』(配信中)、睡眠をエンタメ化する狙いがある朝起きることが楽しみになるゲーム『Pokemon Sleep』(今後配信予定)など、人々の生活をゲーム化している。ポケモンの核である“人との繋がり”とともに“人々の生活”に注力した新しいゲームを展開している今、これからどんな世界を見せてくれるのか、今後のポケモンの冒険に目が離せない。

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