『ラピュタ』のロボット兵がムスカ大佐にお尻ペンペン? 仕事と趣味を兼ねるアニメーターが伝えたい“コマ撮り”の魅力
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 物を少し動かして写真に撮り、また動かして撮る…。1秒間に12〜30枚の写真を使い、それを連続して再生したときに、物が自ら動いて見える「コマ撮り」という撮影手法。篠原健太(@shinohara_kenta)さんは、「コマ撮りアニメーター」として数多くの作品を発表。「仕事も趣味も『コマ撮り』」を公言するほど、「コマ撮り」に魅せられた同氏が、近作として『3分間待ったムスカ』を発表。『天空の城ラピュタ』のムスカ大佐と、ロボット兵のフィギュア、カップヌードルを使い、意外なオチが待っているこの動画は、2.6万いいねを獲得した。本作の制作の裏側、さらに同氏が“趣味”としてSNSで作品を発信し続けるのには、『コマ撮り』に対する熱い思いがあった。

【コマ撮り動画】ムスカ大佐はなぜ怒られた?『3分間待ったムスカ』全編

■“3分”というキーワードで結びついた「ムスカ大佐」と「カップヌードル」

――『3分間待ったムスカ』は、どういったところから発想したのですか?

【篠原健太】もともと、ムスカのフィギュアを持っていて、いつかコマ撮りしたいなと思っていました。そんなある日、カップヌードルのフタが変わるというニュースを見ました。『ラピュタ』の劇中に「3分間待ってやる」というムスカのセリフがあり、「3分といえばカップヌードル。この機会に取り入れてみよう」というような感じで、たまたま思いつきました。

――“3分”という共通のキーワードから広げていったのですね。物語、展開はどのように考えられたのですか?

【篠原健太】まず見せ場とオチを考え、その間が自然につながるように考えていきました。こだわったところは、ムスカがロボット兵にお仕置きされるところ。実は当初、カップヌードルがムスカに仕返しをするという展開を考えていました。しかし撮影している途中でロボット兵が現れて、ムスカにお尻叩きをしたほうが面白いと思い変更しました。

――最初の発想にとらわれることなく、柔軟に変化させているんですね。本作で一番苦労したのはどんなところですか?

【篠原健太】物語、見せ場、オチといった構成と同時に技術的なことも考えなくてはいけません。コマ撮りは、フィギュアを知ることから始まります。フィギュアの可動範囲や特徴を調べ、一番魅力的にコマ撮りできる演出を考えるのです。
 特に今回は、ムスカのフィギュアが小さかったため、難しかったですね。ムスカの全高は7センチメートル。フィギュアが小さいと、緻密に動かす技術も必要になってくるので苦労しました。撮影枚数は約300枚、制作日数は7日くらいです。

――フィギュアなどを用いた二次創作の作品では、『ラピュタ』のムスカをはじめ、『ドラゴンボール』シリーズのフリーザや『機動戦士ガンダム』のザクなど、“悪役”を題材にした作品を多いように思えます。悪役の汎用性の高さについてはどのようにお考えですか?

【篠原健太】私は二次創作の実情に詳しくないので何とも言えませんが…。悪役はたいていどこかに欠点があります。そこに魅力を感じる人が多いのではないでしょうか?こうした作品では、原作にはない要素を組み込むのも面白いですが、私は“キャラクターらしさ”というのものを大事にしています。 “キャラクターらしさ”を出しやすいのは悪役ということなのかもしれません。

■個人でSNS発信をした理由は、「コマ撮り」をもっと広く世間に知ってもらうため

――そもそも篠原さんが、「コマ撮り」にハマったきっかけはどんなことだったんですか?

【篠原健太】スタジオジブリの作品が好きで、小学生の頃からアニメーターを目指しており、専門学校でアニメーションを学ぶことになりました。その授業で「コマ撮りアニメーション」を学ぶ機会があり、同じ頃アニメーション作家のユーリ・ノルシュテインさんの『霧につつまれたハリネズミ』という切り絵をコマ撮りにした作品に感銘を受け、自分でもやってみたいと思うようになりました。

――目標がアニメーターから「コマ撮りアニメーター」になったわけですね?

【篠原健太】はい。24歳の頃に『dwarf』というコマ撮りスタジオで働きながら、先輩コマ撮りアニメーターの峰岸裕和さんから、本格的に学ばせていただきました。その後、働くうちにコマ撮りアニメーターとしてデビューし、『モリモリ島のモーグとペロル』やNetflix『リラックマとカオルさん』などに参加。今は『dwarf』を退職し、『LuaaZ』に所属しながら、さらにコマ撮りの可能性を探っています。

――『モリモリ島のモーグとペロル』などの作品を“仕事”として制作される一方で、先の『3分間待ったムスカ』のようなフィギュアを使った作品を“趣味”で制作。個人のアカウントとして発表されています。公私ともに『コマ撮りアニメーション』に捧げているわけですが、そこにはどんな思いがあるのですか?

【篠原健太】フィギュアを使った作品は、2019年2月から始めました。当時、「コマ撮りアニメーター」という存在は、私自身も含めて世間にあまり知られておらず、将来に危機感を抱いていました。仕事として続けていくためには何か今までとは違う行動を起こさなくてはならないと思い、SNSによる発信活動を始めようと決めました。

――なるほど。確かに動画も拡散しやすいですし、SNSとの親和性も高いですね。一方で“仕事”と“趣味”はどのように分けて考えていらっしゃいますか?

【篠原健太】大きな違いは、依頼主がいるかどうかですね。仕事のコマ撮りアニメーターでは、依頼者の望みを叶えるために制作しますから、私の好きには作れません。趣味は依頼主がいませんから、私が面白いと思うものを好きに作っています。

――ここまで篠原さんを魅了し続ける「コマ撮り」の魅力、面白みはどんなところですか?

【篠原健太】「体験」だと思います。コマ撮りをするという「体験」そのものがエンターテイメントなのです。私はコマ撮りをしていると「アニメーションとは何かということ」を直感的に感じます。また、実際に目の前にある物が動き出す喜びはとても大きいです。

――最後に、篠原さんにとって「コマ撮り」とは?

【篠原健太】当たり前のことですが、「好きなこと」です。自分の中から沸き出てくる「表現したい」というエネルギーを原動力に、これからもたくさんの作品を生み出していきたいと思います。

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