夭折の芸術家・山田かまちに感化 家入一真さん、木村昌史さんに聞く
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CAMPFIRE本社で山田かまちを語る(左から)木村昌史さん、家入一真さん
 いえいり・かずま 1978年生まれ、福岡県出身。「paperboy&co.(現GMOペパボ)」を創業し、ジャスダック市場最年少で上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を創業し、同社社長に就任。BASEの共同創業取締役、ベンチャーキャピタル「NOW」設立、投資家として多くのスタートアップを支援。現代の駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開など、生きづらさを抱える人の居場所づく
 きむら・まさし 1982年生まれ。富岡市出身。富岡高、高崎経済大卒。大手アパレルチェーン「ライトオン」を経て、2015年にオールユアーズを設立。着心地と機能性にこだわったジャケットとパンツのシリーズは、クラウドファンディングの国内のファッションカテゴリーで最高額となる約1800万円を調達した。17年5月から「CAMPFIRE」で24カ月連続のクラウドファンディングに挑戦中

 1977年、夏。17歳の山田かまちは群馬県高崎市の自宅で、インターネットの隆盛を知らずに早世した。連続起業家でクラウドファンディングのプラットフォーム「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」社長の家入一真さん(40)と、クラウドファンディングによる服作りを手掛ける「ALL YOURS(オールユアーズ)」社長の木村昌史さん(36)=富岡市出身。インターネットを舞台に革新的な事業に挑む2人に、かまちから受けた影響や今を生きる若者へのメッセージを聞いた。

―家入さんと木村さんは、クラウドファンディングの「CAMPFIRE」の創業者と利用者の立場にあります。互いの事業や生き方についての印象は。
 【木村】2017年5月から現在まで「CAMPFIRE」で「24カ月連続クラウドファンディング」に挑戦している。プロジェクトを始める前、家入さんと僕の対談を企画し、自社ブログに掲載させてほしいとお願いしたら実現してしまった。家入さんは、ツイッターなどさまざまなメディアで意見を発信している人だけど、実際に会ってみて、語る言葉に裏表のない人だと感じた。

 【家入】木村さんは会う前から服作りの思想が面白いなと思っていた。日本における服作りの文脈でクラウドファンディングを広めてくれた第一人者であり、ものづくりを志す若者の目標になっている。木村さんはファッションの文脈でないところで服を作っている。属しているカテゴリーから一歩飛び出すのは勇気がいることで、時に内部から批判されることもある。でも、イノベーションはそこから生まれると信じている。

―「かまち」とお二人の出会い、その詩や絵から受けた影響は。
 【家入】僕は熊本で生まれ福岡で育ち、中学2年の時にいじめがきっかけで学校に行けなくなった。引きこもりの生活を送っていた時、母から地元の百貨店で開かれた「山田かまち展」に誘われた。油絵を描いていたので関心を持ちそうだと、思ったのかな。

 展示会場でかまちの詩や絵を見て、強い衝撃を受けた。同じ17歳で駆け抜けるように生き、大量の作品を残したかまち。一方で、僕は何をしているんだろう。激しい嫉妬しっとも感じ、あらためて作品をつくる側になりたいと思った。その後、東京芸術大を目指して大学入学資格検定(大検)を受けたり、予備校に通ったりした。家庭の事情で進学はできなかったけれど、一歩を踏み出せたのは、かまちとの出会いがあったからだと思う。

 【木村】かまちは、テレビの特集を見て知った。僕は富岡出身、かまちは高崎出身。自宅から近いので、高崎のかまち美術館も行った。かまちと共通するのが、音楽が好きということ。僕は当時から古い洋楽、特にロックが好きだった。

 かまちを知る以前は、音楽や絵は好きだけれど鑑賞する側だった。でも、音楽や絵は言葉にならない感情を表している。技巧より感情に寄ったかまちの絵や詩によって「自分も表現していいんだ」と気付かされ、高校では美術部に入り、バンドも始めた。かまちには「プレーする大切さ」を教えられたと思っている。

―かまちが生きた時代と今では、情報技術や社会のあり方が大きく変わりました。今、かまちの作品が私たちに与える意味とは。
 【家入】かまちの生きた時代は、いい学校を出て就職するというレールに対する反発が、若い人のモチベーションとなっていた側面がある。今は就職せずに起業してもいいし、副業で複数の仕事を持ってもいい。選択肢が多いのは一見良いことだけれど、裏を返せば誰も正解を与えてくれない。なぜ生きるのか。なぜ働くのか。正解のない時代を歩む若い人は、本質的な問いに直面することになる。一人の人間として激しく生きたかまちの詩は、悩みを抱える人に普遍的なメッセージを与えてくれる。

 かまちの「ぼくは逃げる」という詩は僕のテーマになっているけど、僕の「逃げろ」とは「生き延びろ」ということ。「逃げろ」という言葉はネガティブに捉えがちだけれど、もっと軽やかに使っていい。いじめやパワハラ、災害、生きていれば理不尽な思いをすることもある。理不尽に立ち向かうのも一つの手段だけど、その結果自ら死を選ぶ人も多い。逃げられないほど追いつめられる人がいるのは事実。それでも「逃げろ」と発信し続けるしかない。逃げ続けて、僕は今ここにいる。

 【木村】かまちの詩集は実家に帰るたびに読み返し、読むたびに歌詞のようだと感じる。かまちの詩は一人称で書かれているから、そこに自分を重ね合わせることができるんですね。豊かさの価値観が変わり、高級車に乗るとか外面の価値よりも、内面を重視する時代になっている。好景気で何もしなくても豊かになる時代だったら、突き詰めて何か表現することもない。自己の内面をどう表現するか、誰もが考える今だからかまちの詩がすごく響く。

―インターネットで互いにつながりやすくなった今も、生きづらさを抱える若者は多くいます。今を生きる、若者へメッセージを。
 【家入】中学2年で不登校になった時、世界から自分の居場所がなくなったと感じた。あの頃は学校が世界の全てじゃないですか。大人になってみると、全くそんなことはない。実際にいろんな大人がいて、世界があって、生き方がある。

 もしタイムマシンに乗って中学2年の自分に会えたら「世界は広いよ」と言ってあげたい。若い人にも「学校がすべてじゃない。逃げる選択肢を持っていいよ」と伝え続けている。

 【木村】僕はファッションで一番になりたいと思った時、どの分野でなら一番になれるかを考えた。売上高の1位は難しいし、一番かっこいいというのも人それぞれ。クラウドファンディングのファッション業界で一番成功している会社ならなれそうだと思った。

 競争して誰かと戦おうとするから苦しくなる。戦い続けて消耗するより、戦わないで一番になれる場所を探したほうがいい。たとえ小さくても、そういう場所は誰にでも用意されている。

 ※特別サイト「ドローイングンマ 鶴舞う者たちプロジェクト FLY2」はこちらから見られます。

 ※特設サイト「ドローイングンマ」に関連し、Youtubeの上毛新聞アカウントに「特別授業」のページが動画がアップされています。こちらもぜひご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=skOC2OygyrY

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