聖火リレー中止 灯つなげず県内ランナーからも悲痛の声
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 東京五輪の聖火リレーの中止が決まった24日、さまざまな思いを聖火に託し、群馬県内を走るはずだった県民からは悲痛の声が上がった。大会組織委員会は現在の走者を優先して改めてリレーを開く方針を示しており、県内のランナーは「チャンスがあれば」と望みをつないだ。

 沼田東中1年の木幡悠紀さん(13)と会社員の隆直さん(46)=沼田市=は親子でランナーに決まっていた。木幡さん一家は9年前の東京電力福島第1原発事故の影響で、福島県南相馬市から移住。「温かくしてくれた群馬の人たちに、走ることで感謝を伝えたかった」と残念がった。

 館林市内を走る予定だった松沢和香さん(15)=板倉町=は今月卒業した板倉中でソフトボール部に所属。人数不足のため、松沢さんの卒業で休部となる事情があっただけに、「部員として最後の活動のつもりだった。顧問の先生や先輩たちに見てもらいたかった」と肩を落とした。

 一方、県内で初日の31日にアンカーを予定していた日本人初の冬季五輪メダリスト、猪谷千春さん(88)=東京都=は「大会を目前に控えた今なおコロナウイルスが猛威を振るう現時点では、難しいだろう」と理解を示した。

 前橋桂萱東小の金井健太郎君(12)は3年前に仕事中の事故で亡くした父、誠さん(享年42)に元気な姿を見せたいと応募。金井君は「天国にいるお父さんに見せたかった。悔しく、残念」と話した。金井君は24日に小学校を卒業。中学でも誠さんに教わったサッカーを続け、再び聖火ランナーを目指したいとし、「またチャンスをもらえたら、みんなに走る姿を見てもらいたい」と前を向いた。

 中学1年時の交通事故の影響で「高次脳機能障害」があり、高崎市の第1走者を務める予定だったパラアスリート(陸上短距離)の反町公紀まさとしさん(21)=同市=も「楽しみにしていたので残念だが、仕方ない。また走れれば」とした。

 一般県民も落胆の色を隠せない様子だった。高崎市のパート社員、田辺和美さん(61)は「練習や準備を重ねてきたランナーが気の毒」と気遣い、桐生市本町のリレールート沿いで靴店を営む西井憲一郎さん(50)は「子どもと沿道で応援しようと思っていたから、残念」と話した。

 県スポーツ振興課の担当者は「コロナの終息が第一だが、リレーを楽しみにしていたランナーや県民の期待に沿えるよう、大変だが準備を進めたい」と方針が定まったことに安堵あんどした。

 【おことわり】東京五輪の聖火リレー中止に伴い、連載「聖火に託す」は終了します。

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