《NEWSインサイド》コロナ禍の音楽業界 3密が壁 活動を模索
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音楽業界の苦境について語る茂木さん(左)と高崎クラブフリーズの下平研社長

 新型コロナウイルスの影響で、バンドなどを中心とした音楽業界が苦境に立たされている。複数のアーティストが出演し、多くの来場者が見込まれる音楽フェスティバルが群馬県内でも定着してきたが、中止や延期が相次ぐ状況だ。密閉、密集、密接の「3密」が懸念されるとして、ライブハウスも緊急事態宣言明けの6月まで休業を余儀なくされ、アーティストが活動の場を失っている。

■実質不可能
 コロナ禍で、春先から音楽施設が軒並み閉鎖となった。緊急事態宣言解除後の6月18日まで、国が定めたイベントの人数上限は室内100人、屋外200人に制限され、フェスの開催は実質不可能だった。

 高崎市の群馬音楽センターで4月に予定していた「I ROCKS」は来場者の安全が確保できないとして来年への延期を決定。主催者は「来年も実施できるのか分からない部分もある」と不安を抱きつつ、「その都度できることを最大限考えたい」としている。

 Gメッセ群馬(同市)を会場とした5月の「FINAL GBGB 2020」は来年に延期。渋川市で5月に開催予定だった「1000人ROCK FES. GUNMA 2020」は中止になった。

 近隣県では、国内最大級の「フジロックフェスティバル」(新潟県)、「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」(茨城県)が開催を断念している。

 屋外のイベント上限人数が今月10日に5000人、8月1日に上限なし(屋内は収容率の50%以内)に移行する中、新たなフェス像を模索する動きも出てきた。

■安全性検証
 大阪府豊中市で予定された屋外イベント「SLOW DAYS」は入場者を定員半分以下の800人程度とし、ステージ周辺の密集禁止やサーモグラフィーの設置など対策を講じて、今月18、19日に開催。同じく屋外開催の「ハイライフ八ケ岳2020」は会場となる山梨県北杜市と協議を重ね、当初の7月から9月に日程を延期して行う。

 感染状況を踏まえつつ、群馬では二つのフェスが9月開催の可能性を探っている。みなかみ町の屋外で開催予定の「ニューアコースティックキャンプ」は安全性について会場で検証している。

 前橋市のヤマダグリーンドーム前橋での「山人音楽祭」も協議中だが、3密に配慮した会場への輸送手段や、感染疑いの人が出た場合の対応方法など課題は多い。運営に携わる群馬県出身のロックバンド「G-FREAK FACTORY」の茂木洋晃さん(45)は「何とか開催を模索したい。ただ、数日限りのフェスに対し、活動の拠点のライブハウスが厳しい状態にある」と危機感を訴える。

◎音楽文化 絶やさない ルール作り求める
 新型コロナウイルスの集団感染が大阪市のライブハウスで2月に発生した影響もあり、県内の音楽施設でも3月上旬ごろからライブのキャンセルが相次いだ。ライブハウスに対する群馬県の休業要請は5月末に解除されたが、本格的な再開は程遠い。

■慎重に対応
 前橋市の「前橋ダイバー」はステージとの間にビニールの仕切りを設け、6月に営業を再開。以前から出演が決まっていたバンドに改めて出演の意向を確認するなど、慎重に対応している。須田純矢代表は「ほかに仕事を持っているバンドマンの中には、勤め先からライブハウスに行くことを避けるように言われている人もいるようだ」と打ち明ける。

 「高崎クラブフリーズ」(高崎市)は8月に本格的な再開を計画。最大約450人の収容人数を90人程度に制限する一方、客の減少を補うため、バンドに1日2回公演してもらうことを検討中だ。下平研社長は支給された持続化給付金は「すぐに消えてしまった」と厳しい経営状況を語るが、「ライブハウスでの演奏に感動し、音楽を志す若者は多い。音楽文化を絶やさないため、苦しくてもやめない」と前を向く。

 音楽の発信拠点であるライブハウスを残そうと、支援の輪は広がる。音楽関連大手のタワーレコード(東京都)は5月、グッズの販売収益を支援金とするプロジェクトを行い、県内は前橋ダイバーと高崎クラブフリーズ、群馬サンバースト(高崎市)が支援対象となった。

■救済策
 伊勢崎市出身者を中心とするロックバンド「LACCO TOWER」はチケット制デジタル生配信ライブのツアーを始め、8月2日には高崎クラブフリーズと共同開催する。メンバーの塩崎啓示さんは「さまざまな救済策はあるが、自分たちが考えたのはこの形。ライブハウスが苦境にあるまま、アーティストだけが生き残るのは違うと思う」と力を込めた。

 群馬県出身バンド「G-FREAK FACTORY」は8月23日、高崎クラブフリーズでライブに臨む。ボーカルの茂木洋晃さんは「ライブハウスを守るためなら何でもやりたい。目に見えない疫病への不安は、どんな影響力がある人が語っても消えない。現状を変えるのはルールを作ることであり、政治にしかやれない」と訴えた。

 音楽業界への対応で、大阪府はイベント会場で感染者が出た場合に、その場にいた登録者にメールが配信される「コロナ追跡システム」を導入。ライブハウスなどが新たに映像配信を始める経費を支援する事業を大阪府や東京都新宿区、福岡市、大分市などが行っている。(三神和晃)

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