草津・栗生楽泉園の機関誌「高原」が終刊 藤田三四郎さん死去で
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約74年の歴史に幕を降ろし、最終号となった通巻第821号の「高原」

 国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」(群馬県草津町)に入所する元患者たちの文芸活動の場として親しまれてきた機関誌「高原」が、22日発行の第821号で終刊する。入園者の高齢化や文芸活動を行う入園者の減少などから、作品や寄稿文が集まらなくなったことが理由という。74年にわたって入園者たちの表現の場となってきただけに、関係者は終刊を惜しんでいる。

◎園外と懸け橋74年 詩歌など高い評価
 「高原」は、文芸活動に励んでいた入園者たちによって1946年12月に創刊された。当時の療養所は、国が管理する一般療養地区と同町湯ノ沢地区で暮らしていた患者が集団移転した自由療養地区に分かれ、文芸活動する会派が幾つもあったという。それぞれの活動をまとめ、発表の場として「高原」が誕生した。

 創刊から約6年間は同療養所で印刷しており、活版印刷の設備不足や冬の寒さでインクが延びないことなどから、厳冬期である1~3月を除く隔月の年5回発行が続いた。その後、53年から前橋市内の印刷所での印刷が始まり、月刊での発行となった。

 「高原」の発行に伴い、短歌会、俳句会、川柳会、詩話会など園内の文芸団体に多くの入園者が参加し、文芸活動が活発になった。創刊当初は園内の文芸活動家の発表の場としての役割が強かった「高原」だが、選者に作品の講評を依頼するなど施設外との交流をつなぐ役割も担っていった。

 その結果、一般の文芸誌に投稿する入園者も多く現れた。俳句界の代表的な賞である「蛇笏賞」を受賞した俳人の村越化石さんや現代詩のこだま雄二さん、県文学賞を受賞した歌人、沢田五郎さんら高い評価を受ける作家も輩出した。

 しかし、創刊した46年に1259人いた入園者は、現在53人(12月17日時点)まで減少。文芸活動を行う団体の活動停止などで原稿が集まらなくなり、2019年に月刊から隔月刊、20年には季刊となった。

 近年は、自身も詩文集や句集を出版するなど文芸活動に励んだ元入園者自治会長の藤田三四郎さんが精力的に刊行に取り組んでいたが、今年3月に94歳で亡くなり、これが終刊への決定打となった。

 05年から11年間、藤田さんと共に編集に携わった同園社会交流会館の干川直康学芸員は「原稿集めは大変だったが、入所者から暮らしや思いなど貴重な話を聞くことができ、今では楽しい思い出。なくなるのは寂しい」と惜しむ。

 藤田さんの後任の自治会長、岸従一さんは最終号で「閉鎖された中の入所者と一般社会との懸け橋でもあった。70余年にわたって発行された高原が終わるのは残念なことだが、時の流れとともに致し方ない」と記した。

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