《マニアアカデミア》カラス 鳴き声に種類? 生活や文化に根付く 身近な存在、興味を
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フィールドワークに欠かせないスピーカーと録音媒体を手に、カラスの鳴き声について説明する塚原さん
カラス害対策事業で使用する剥製。頭部は遠隔で動かすことができ、スピーカーから鳴き声を流す

 市街地など生活空間で、ごみを荒らし、ふん害や食害をもたらすカラス。嫌われ者の印象が強いが、一方で伝承や歌などから、われわれの文化に根付いていることが分かる。カラスの鳴き声研究の第一人者で、カラス害の対策事業を手掛ける宇都宮大発ベンチャー企業「CrowLab(クロウラボ)」社長の塚原直樹さんに、人間との親和性や共生の未来などについて教えてもらった。

6種類を推測

 約20年、鳴き声研究を続ける塚原さんだが、真意をすべてくみ取った外国語翻訳が難しいように「何をしゃべっているのかはまだ明らかではない」という。研究では、録音した声と「どんなシチュエーションで発したか」という観察記録から推測し、500超の声を41に分類。うち6種類に「和訳」を付けた。

 優しい「アー」は、あいさつ。群れの中で「私はここだよ」と鳴き交わしている。声には個体情報が含まれ、互いに「どこの誰か」が分かるそうだ。

 長めの「アーー」は自己存在をアピール。鳴き交わしはしない。平たんで短い「アッアッアッ」は「餌を見つけたよ」。この声に群れのメンバーが集まってくるという。「グワ~ワワ」は求愛の声で、つがいの一方が相手に甘えている。

 冒頭が強めの「アッアッアッ」は、警戒の声。群れに危険を知らせ、度合いが強まると間隔と回数が増える。「ガーガーガー」と濁りを含んだ声は、いよいよ「威嚇」になる。塚原さんは「ドスが効いた感じ。攻撃の臨戦態勢に入っている」と注意を促す。

 「親離れ」時期の7月下旬は人間が襲われるケースが見られるが、自立訓練中のひなの安全第一で動く親カラスの親心の表れと説明する。

 子育てはカラスにも葛藤があるようだ。自立間際のひなが餌をねだると親は無視するのだという。ただ、しばらくすると根負けしたかのように餌をあげてしまう親鳥もおり、塚原さんも思わず「心情は分かる」と笑う。

観察が第一歩

 暮らしや文化を改めて見直すと、嫌われ者ではないカラスが存在する。群馬県高崎市内などを流れる1級河川の名称は「烏川」。前橋市の熊野神社が祭るのは「八咫烏(やたがらす)」で、古事記にも登場する伝説の霊鳥だ。宮沢賢治の「烏の北斗七星」はカラスの群像を描き、童謡「七つの子」はわが子を思う親ガラスを歌う。

 塚原さんはカラスの賢さに加え、人間との生活圏の一致を理由に挙げ「より身近であることが長年、人間の想像をかき立てているのでは」と推測する。

 収穫前日にほとんどをカラスについばまれて廃業を決意したナシ農家との出会いを契機にクロウラボを創業。カラス害対策事業剥製とスピーカーから流す警戒の鳴き声で、「理解させて」遠ざける。大きな音などで反射的に追い払うよりも「賢さゆえに効果がある」と話す。

 より良い共生には「よく観察することが第一歩」。カラスが群れる場所は油分の多い食べ残しや、出荷に満たないと廃棄された果樹の周辺など「実は人間が作っていることが多い」という。「興味を持ちカラスを見上げると、理解、寛容が生まれるかもしれない」(北沢彩)

 食肉としての可能性 有害鳥獣として捕獲後の利活用法が少ないカラスだが、「カラス料理研究家」の肩書も持つ塚原直樹さんは「ジビエ食材としての活路はある」とみる。高タンパク、低コレステロールで鉄分を多く含有。お薦めは、じっくり時間をかけて煮込んだ「クロウシチュー」。カラスの世話をしたことがある人だけが感じる独特の香りがあるという。

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