山本一太氏が群馬県新知事に 歴代最多得票「県民 幸せにする」
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当選を果たし、勢いよく飛び跳ねて「頑張ろう」を三唱する山本氏=21日午後8時すぎ、前橋市総社町総社の選挙事務所
妻の信子さん(左)と共に感謝の言葉を述べる石田氏=21日午後9時35分ごろ、前橋市朝日町の選挙事務所
 

 任期満了に伴う群馬県知事選は21日投開票され、無所属新人で元沖縄北方担当相の山本一太氏(61)=自民・公明両党推薦=が歴代最多となる57万6935票を獲得し、初当選を果たした。抜群の知名度と組織力を背景に県全域で支持を広げ、無所属新人の群馬県労働組合会議副議長、石田清人氏(62)=共産党推薦=を大差で退けた。参院選と同日程で行われたこともあり、投票率は過去最低だった前回を17.15ポイント上回り、48.51%まで上昇した。

◎閣僚経験や知名度アピール 石田氏に大差
 大沢正明知事の引退に伴い、12年ぶりに県政の新たなリーダーを「選択」する選挙戦となり、参院議員を4期務め閣僚経験もある山本氏と、元小中学校教諭の石田氏が争った。新人同士による一騎打ちは1991年以来28年ぶり。

 得票数は三つどもえの戦いとなった95年、2期目の当選を果たした小寺弘之氏(当時)の57万1834票が最多だった。山本氏は2013年参院選で58万0144票を得ており、それに迫る得票となった。

 山本氏は、70の地区後援会を基に全県をカバーする選対を立ち上げた。商工や建設、農業、医療関連など幅広い業界団体から支援を受けて選挙戦に臨んだ。市長会と町村会も推薦を決め、各地の遊説で市町村長や地元県議、市議らが選挙カーを先導して支持拡大を後押しした。

 立候補に当たって群馬県の強みと課題を整理し、180の基本政策を盛り込んだ政策集を発表。県内総生産(GDP)や県民所得の拡大、安心を支える社会基盤整備などを公約に掲げた。人脈もフル活用して群馬県の魅力を国内外に発信することも強く訴えた。

 山本氏は21日夜、前橋市内の選挙事務所で「県民を少しでも幸せにする。最も身近な知事として公務に取り組む」と決意を語った。

 石田氏は学校給食費の無料化や子ども医療費無料化の対象範囲拡大など暮らしや福祉に関する政策に取り組むと主張したが、支持が広がらなかった。

やまもと いちた 61 元沖縄北方担当相 無所属新人=自民・公明推薦
 【略歴】 参院議員4期、元自民党参院政審会長、元参院予算委員長、元沖縄北方担当相。米国ジョージタウン大大学院修了
 【公約】 (1)県GDP・県民所得拡大 (2)安心を支える社会基盤整備 (3)新たな県民の誇り育成 (4)官民連携で行財政改革 (5)県政の透明化

◎「県庁に動画スタジオ」…ネットで世界に魅力発信 方針
 午後8時すぎ、山本一太氏の当選確実がテレビで伝えられると、前橋市総社町総社の選挙事務所は、集まった支持者の拍手で沸いた。12年ぶりの新知事誕生に、事務所は高揚感に包まれた。

 「浮かれた気持ちは一切ない。ここからが本当の戦いだ」。当選のあいさつに立った山本氏は、表情を引き締め、選挙戦で訴えてきた政策の実現には政府や県議会、市町村との連携が不可欠とした。「県民一人一人の知恵と力を借りたい。新しい群馬をつくるため、私の挑戦に力を貸していただきたい」と求めた。

 「群馬の発展のための挑戦が始まる」という山本氏の意向から、万歳ではなく「頑張ろう」の三唱で祝った。山本氏は選挙戦の際と同様に3回目はジャンプし、高く拳を突き上げた。

 インタビューを受けた山本氏は重点公約に掲げた県の情報発信の在り方を巡り、「世界に発信するためネット戦略を本格的に展開する。県庁内に最新の動画スタジオを作りたい」と明かした。市町村を応援、発信できる体制が必要だとして、「トップセールスの一つの柱になる」と強調した。

 自民党県連の星名建市幹事長は「群馬を大きく変えてもらえる。とても楽しみな知事が誕生した」と大きな期待感を示した。山本氏の出馬表明の時期や方法などを巡り、県連内の一部に異論もあったが、「確認書を取り交わし、一丸となって応援した。県民のために協力してやっていく」と述べた。

《解説》身近な知事 実現を
 自民党の参院議員として閣僚も経験した山本一太氏が、大差で知事選を制した。新たなリーダーを選ぶ決戦は群馬県の将来像をどう描くかが焦点となった。参院選と同日程の効果もあり、投票率は前回を上回った。だが、28年ぶりとなった新人同士の一騎打ちの構図は前回と同じ「与党系対共産系」。選択肢が限られたことに不満を抱く有権者は少なくなかった。

 旧民主系は「国政と地方選挙は別」として、独自候補を擁立せずに自主投票を決め、共闘態勢を敷いた参院選と対応を分けた。

 山本氏は昨年12月、党公認を得ていた参院選を見送り、知事選への立候補を明らかにした。自民県連内部で4選出馬への期待が根強かった大沢正明知事の進退表明に先行したため、県連会長だった山本氏の行動に衝撃が走った。

 特に一部県議には反発が強かったが、大沢氏の不出馬表明以降、県議選終了に合わせた党県連の新体制発足で山本氏支持の流れができ、5月に自民が推薦を決定。「山本知事」を目指す県連の支援態勢を構築することに成功した。内部調整を経ず、先行して立候補表明した“山本流”の手法が奏功したといえる。

 発表した政策集(公約)は経済対策や道路整備、子育て支援、福祉、教育など多岐にわたる分野に言及。人脈もフル活用し、本県の魅力を国内外に発信する意気込みを強くアピールした。県民の「幸福度を上げる」「新たなプライドをつくる」と主張。群馬県の魅力度が低迷する民間調査を引き合いに、停滞感や閉塞へいそく感が漂う現状を変えるには、先頭に立つ人の圧倒的な元気が必要だと訴えた。

 知事就任は山本氏の亡父、富雄元農水相の悲願でもあった。県民との直接対話の機会を拡大し、「これまでで最も身近な知事になりたい」とした山本氏。自身のブログのタイトルともしている「直滑降」で県政にまい進しながら、細かい地域課題や社会的弱者の声にも耳を傾け、県政をより身近に感じられる環境づくりを進めてもらいたい。(報道部・小沢宜信)

◎「応援が力に」 支持者に感謝…落選の石田清人氏
 「もう出たの」「早すぎる」。21日午後8時すぎ、テレビが山本一太氏の当選確実を伝えると、前橋市朝日町の石田清人氏の選挙事務所は静まり返った。集まった支持者はテレビ画面を厳しい表情で見つめた。

 午後9時半ごろ、姿を見せた石田氏は「選挙戦全体の中身としては負けていないと思っている。皆さんの応援が力になって頑張り抜くことができた」と支援に感謝した。

 石田氏は「憲法をくらしに生かす県政の会」が擁立。街頭演説を重ね、学校給食費無料化や交通弱者支援、消費増税と改憲の反対などを訴えたが、山本氏の組織力と知名度に及ばなかった。

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