《消費税10% 増税前夜》軽減税率 消費者と店 線引きに混乱
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7月に改定した料金を増税後も据え置くことで混乱を避ける登利平=前橋市六供町の本店
 
 

 5年半ぶりの消費税増税が1日に迫った。増税と同時に軽減税率やポイント還元など、複雑な制度が導入されるとあって、群馬県内でも消費者は負担と戸惑いを感じ、小売店などは対応に追われている。増税直前の関係者の動きを追った。

◎3、5、6、8、10%の5種類に
 「軽減税率の導入はありがたいが、消費者も店も混乱するのではないか」。週末によく外食するという前橋市前箱田町の主婦(31)は表情を曇らせた。

 今回の消費税増税は軽減税率が初めて導入される。生活必需品の食料品などはこれまでと同じ8%、それ以外は10%の税率が適用される。ただ、外食は10%、持ち帰りは8%になるなど制度は複雑。並行して導入されるキャッシュレス決済によるポイント還元も合わせると、中小店と大手チェーンのフランチャイズ加盟店の還元率が異なるため、消費者が負担する実質的な税率は3、5、6、8、10%の5種類に及び、より複雑になる。

■大きな負担
 焼きまんじゅうの老舗、原嶋屋総本家(前橋市)の原嶋雄蔵ゆうぞう社長は増税後も「税込み1本200円」を変えない。「税率を分けていたら混乱する。当面は我慢して、税込み価格を据え置く」とし、店内飲食と持ち帰りの価格を統一する。

 同店の場合、店内でまんじゅうを食べている人がさらに持ち帰り用を注文したり、食べきれなかったものを持ち帰ったりと、さまざまなケースが想定される。その都度、税率を変えていては混乱は必至だ。このため、店内飲食用の価格を値下げし、税込み価格を合わせる。

 ただ、納税のため、持ち帰りと店内消費を分けて記録する必要もある。客には店内飲食か持ち帰りかを聞き、レジを打ち分けることで混在する税率に対応しなければならず、手間は多い。「税率が二つになって会計処理も複雑になる。企業の負担は本当に大きい」。原嶋社長はため息をつく。

■対応分かれる
 大手チェーンでも対応は分かれる。吉野家やミスタードーナツなどは店内飲食と持ち帰りで異なる税率を適用。すき家や松屋、マクドナルドは本体価格を調整し、店内飲食と持ち帰りの値段を統一する。

 パン店8店を展開するグンイチパン(伊勢崎市)は店内飲食と持ち帰りで税率を分ける予定だ。レジなども対応済みだが、小此木大典取締役総括は「初めてなので何があるか分からない。トラブルにならなければいいが」と不安を拭えない。

 県内外に32店舗がある登利平(前橋市)は資材価格の高騰や増税の影響を織り込み、7月に持ち帰り弁当などを値上げし、10月以降は価格を据え置く。担当者は「混乱防止も含めて、7月に値上げした。お客さまに迷惑が掛からないようにしたい」と話した。

 スーパーやコンビニのイートインコーナーで食べる場合は税率10%が適用される。国税庁は、大半の商品が持ち帰り前提の店の場合、「店内で飲食する場合は申し出て下さい」などと掲示すれば、個々の客への確認は不要とする。

 高崎市新保田中町の主婦(52)は「8%と10%の線引きが分かりづらい。店ごとにしっかりと示してほしい」と注文を付けた。

◎客の「税逃れ」にも懸念の声
 消費税増税に併せて導入される軽減税率制度。飲食料品と定期購読の新聞に適用され、税率が8%に据え置かれる。生活必需品への税率を軽くし、暮らしへの影響を抑える狙いだ。ただ対象外の酒類や外食との区分けが分かりづらく、事業者や消費者の対応を難しくしている。

 軽減税率の対象になる飲食料品は「人の飲用または食用に供されるもの」とされ、健康食品も医薬品や医薬部外品でなければ税率は8%だ。ただ、生活用にも使われる水道水や一定のアルコール分を含む「本みりん」は10%の税率で、一般の感覚では判断が難しい。

 病院食は原則、非課税だが、患者が料金を支払って食事の特別メニューを提供されている場合は課税対象となり、10%の標準税率が適用される。

 政府は制度を周知するため、商品や事例ごとの線引きを明示した「事例集」を作成。事業者などを対象にした説明会も6万7000回開き、約210万の事業者が参加したが、不安は消えていない。

 外食は持ち帰り用と店内飲食用の価格設定で企業の対応が割れた。コンビニでは「イートインコーナー」で食事をする場合、税率は外食扱いで10%。ただ来店客がレジで持ち帰り用と告げて税率8%で買う「税逃れ」も想定される。

 関東学園大の羽田亨教授(財政学)は「税逃れにどう対処するかは店側の裁量に任される。あらかじめ方針を決めて周知しておくべきだろう」と指摘。「運用当初は大きな混乱が予想される。出てきた問題を集約し、政府が丁寧に対応していくことが重要だ」としている。

◎イギリスは生鮮食品0%…各国の軽減税率
 消費税と同様の税金や軽減税率は世界各国で採用されている。財務省によると、英国では標準税率は20%だが、生鮮食品などは0%、家庭用燃料は5%としている。フランスは20%で、食料品やスポーツ観戦は5.5%。中国は標準税率16%に対し食料品は10%とするなど、標準税率も軽減税率の対象も国によってさまざまだ。

 軽減税率を巡っては、英国でチョコレートのかかったビスケットをケーキと見なして税率0%とするよう求める訴訟が起きた。日本でもファストフード店での持ち帰りは8%となる一方、店内で食べた場合は10%になるなど複雑な仕組みで、導入後の混乱が懸念される。

 消費税は生活に直結するため、制度導入や増税のたびに国民の反発を受けている。自民党は1978年に「一般消費税」を80年度から導入すると決定したものの、翌年の衆院選に敗北して見送った。87年の「売上税」導入の法案廃案などを経て、89年4月に税率3%で消費税はスタートした。

 97年4月には5%に増税され、2012年に民主、自民、公明の3党が合意し、財政再建と社会保障費に充てるため8%を経て10%まで2段階で引き上げることが決まった。

 当初は、15年10月に10%とする予定だったが、安倍晋三首相は2度にわたって増税時期の延期を表明。その間に軽減税率制度の導入や、増収分の使途を変更して幼児教育などの無償化にも活用することを決めた。

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