《消費税10% 増税前夜》ポイント還元 キャッシュレス進むか
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レジを入れ替え、ペイペイを導入した鈴木ストア=前橋市千代田町
 
 

 「レジを買い替え、スマホ決済もできるようにした。急いで準備を進めている」。前橋市の中心市街地で化粧品や婦人衣料品を販売する鈴木ストアの大橋慶人社長は国のポイント還元事業を活用しようと、スマホ決済サービス「PayPay(ペイペイ)」などを導入、経済産業省の審査通過を待つ。

■判断難しい
 消費税引き上げと同時に、中小企業の対象店でクレジットカードや電子マネー、スマートフォン決済などのキャッシュレス支払いをすると、購入金額の最大5%のポイントが消費者に還元される。10月から9カ月間の期間限定だ。群馬県内で4店展開する「しみずスーパー」(前橋市)も5%還元の対象店。「買い物がお得にできるのは来店動機になる。客を呼び寄せたい」と意気込む。

 ポイント還元の対象店になるには経産省への事前申請が必要だ。対象店は5日現在、県内で約3200店、全国で約60万店で、中小企業の3割程度にとどまる。高崎市内の人形店は当面は申請しない考えだ。男性経営主は「購買層は中高年が中心。キャッシュレス決済がなじむのか、判断が難しい」と打ち明ける。

 消費者にポイントが還元されるのはキャッシュレス支払いの時だけ。この点に疑問を抱く個人経営主もいる。「もうかるのはキャッシュレス事業者だ」「クレジットカードが作れない、スマホが持てない低所得者と利用できる人の格差を広げる制度」などと、国の対策を不十分とみる。

 キャッシュレス決済の広がりに懐疑的な声も聞かれる。前橋市内の電器店は6月にペイペイを導入したが、この3カ月で利用者は1人だけ。男性経営主は「一応準備はしたが、現金で支払う年配の客が多く、意味がない」と首をかしげる。

■独自セール
 消費者の受け止めもまちまちだ。高崎市の団体職員の男性(24)は8月にスマホ決済を始めた。「以前は現金主義者だったが、ポイント還元は非常にお得感がある」と歓迎する。

 一方、同市の60代女性は「(キャッシュレスを)信用していない。他人の乗っ取りが怖い」と顔をしかめる。セブン&アイ・ホールディングスのスマホ決済サービス「7pay(セブンペイ)」が不正アクセスを受けて中止した問題もあり、慎重姿勢を崩さない。

 ポイント還元の恩恵を受けられない事業者や消費者がいる中、太田市新田商工会は10月から12月1日まで、現金キャッシュバックをする「消費拡大キャンペーンセール」を独自に企画した。衣料品店や飲食店、美容院など約70店が参加。購入金額に応じたくじ引きで、10~500円の現金をその場で還元する。

 同商工会商業部会長を務める鈴木浩和さんは「増税で消費の冷え込みが懸念されるが、個人商店の生き残りへ、地域一丸となって対策に取り組む」とする。

◎消費者には恩恵も中小店には重荷 税率5種類 理解深まらず
 消費増税に伴い、景気の落ち込みを防ぐために導入されるポイント還元。中小店で8%の軽減税率対応の食料品を現金以外で買えば、5%のポイントが還元され、税率は実質3%とお得になる。だが制度が複雑で実質税率は5種類に及ぶため、消費者の理解はなかなか深まらない。

 還元策は、10月から来年6月までの9カ月間限定で、中小店でクレジットカード、電子マネーやQRコードで決済すると、購入金額の5%分、コンビニや外食など大手チェーンのフランチャイズ加盟店では2%分が政府の補助で還元される。

 日用品など10%の消費税が適用される商品は、5%のポイント還元で実質税率は5%、2%還元で8%となる。飲食品など8%の軽減税率が適用される商品は実質税率は3%または6%となる。一方、ポイント還元のない大手スーパーなどでは実質税率は8%と10%で変わらないため、実質税率は3、5、6、8、10%の5種類となる。

 実店舗だけでなく、アマゾン、ヤフー、楽天といったECサイトも対象となる。出品者が中小規模、個人の事業主であれば5%還元が適用される。

 消費者に恩恵のある還元制度だが、中小店の参加に広がりは見られない。政府は景気対策として、低所得者層や子育て世帯にプレミアム付き商品券も用意。自動車や住宅購入時の減税措置も設けている。

◎決済で覇権争いも
 10月の消費税増税に合わせ、中小店舗での現金を使わないキャッシュレス決済には、国の補助で最大5%のポイント還元が実施される。期間限定の特需を取り込もうと、決済事業者が全国各地で覇権争いを繰り広げる。どのサービスが生き残り、手数料負担はどうなるのか。店舗側は「うたげの後」をにらみつつ、導入の損得を慎重に見極める。

 キャッシュレス決済は、現金を使わない支払い手段を総称する。ポイント還元制度の対象となる決済方法は、クレジットカード、デビットカード、電子マネー(プリペイド式)、QRコードなど。急速に普及しているのが、スマートフォンを使った「ペイペイ」「ラインペイ」などのQRコード決済だ。

 ポイント還元の盛り上がりを受け、キャッシュレス決済の導入が遅れていた地方の中小店舗は絶好の草刈り場になっている。スマホ決済事業者は店舗側が負担する手数料を優遇して囲い込みを図るとともに、消費者にも自前の還元策を上乗せし「大盤振る舞い」で攻め入る。「メルペイ」の青柳直樹代表は「地方での営業活動を本格化させている」と明かす。

 クレジットカード業界も負けていない。長年培ってきた顧客基盤や外国人観光客への対応力を強みに地方での加盟店開拓を進める。大手の一角、三井住友カードは「銀行の営業網で全国隅々までキャッシュレスを広める」(担当者)作戦だ。地銀や地銀系カード会社など37社とタッグを組む。

 決済事業者の競争が過熱する一方、店舗側には様子見ムードも広がる。「売り上げが増えない」「ゆくゆくは手数料が重荷になる」と二の足を踏む経営者も少なくない。

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