《ぐんま再発見》下仁田ネギ 情報発信・差別化でブランド力磨く
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夏場の植え替えが終わった下仁田ネギ=下仁田町馬山、8月下旬

 県内各地で猛威を振るった台風19号により、群馬県下仁田町西野牧では降り始めから48時間の降水量が県内最多の496.5ミリに達し、観測史上最大の雨量を記録した。町内には道路の崩落など大きな爪跡が残ったが、11月以降に本格的な収穫期を迎える特産の下仁田ネギは、大半が被害を免れた。自然災害に加えて後継者不足という課題に直面する地元では、会員制交流サイト(SNS)を生かした情報発信などに取り組みながら、ブランド力を磨き上げようとする動きが広がっている。

 台風19号の影響で、町内では鏑川沿いの畑が流されたり、猛烈な雨でネギの根が表出するなどの被害が出たものの、産地としては大きな被害を免れた。生産者の60代男性は、例年この時季に行う種まきが進められない中でも「来週は好天が続く予報なので、ようやく畑に入れそう」と前を向く。

 台風を乗り越えたネギ産地で、生産者が中心となって組織しているのが「下仁田ねぎの会」だ。下仁田ネギは春先に苗として植えた後、夏場にいったん土から抜き、耕した地面に再度植え替える。しかし、会が発足した約20年前は、省力化のため夏場の植え替えをしない下仁田ネギが流通し、全国から「風味が落ちた」と指摘されていた。

■ルール設定■
 そのような中、同町馬山地区の生産者らが伝統野菜の味を守ろうと、同会を結成した。夏場の植え替えや品種の統一、町内で生産するといったルールを設定。会員限定の箱で出荷するなど、本格的なブランド化をスタートさせた。手間の掛かる植え替え作業により、とろけるような独特の柔らかさと甘みが生まれる下仁田ネギは、群馬県を代表する特産品として全国に知られるようになった。

 ただ、生産現場では近年、農家の高齢化による担い手不足が深刻化している。発足時に100人だった会員は現在70人に減り、過酷な夏場の植え替え作業が、高齢の生産者の大きな負担となっている。

 課題を乗り越えるため、生産者らが目指すのが、積極的な情報発信と、さらなるブランド化の推進だ。

■ブランド保護■
 SNSを活用した情報発信に力を入れているのが、都内からUターンして就農した同地区の小金沢章文さん(56)だ。大学進学で上京し、都内でアパレル会社の経営に携わった後、13年前に帰郷した。父親からネギ栽培の手ほどきを受け、現在は「下仁田ファーム・小金沢農園」を経営している。

 情報発信を重視する小金沢さんは、1年前から写真共有アプリ「インスタグラム」を使って、ネギ畑の風景などを定期的に投稿している。小金沢さんは「簡単に発信でき、若い世代にもアピールできる。生産現場の今を伝えることが、ファンを増やすことにつながる」と話す。

 さらなるブランド力の維持に向け、会が2年前から取り組むのが、地域の農水産物の名称を国がブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」への登録だ。登録されると商品に専用のマークを付けられるなど、ブランドを守りやすくなる。

 田中芳重会長(78)は「普通の農産物とは差別化された、完全なブランド化が実現する。昔ながらの下仁田ネギをこれからも守りたい」と力を込める。(水村希英)

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