《NEWSインサイド》明和町の農業支援 先端技術で次代継承
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「ラジコン草刈り機」など先端技術を取り入れた農機具を見学する農家ら
 

 農家の高齢化や後継者不足が課題となる中、群馬県明和町は農家の育成や新規就農者の獲得に力を注いでいる。先端技術の導入を検討する協議会を設立したり、コンサルティング会社を招いた経営塾を開催したりと、多彩な事業を展開。町の取り組みは農林水産省の昨年度の「次世代につなぐ営農体系確立支援事業」に採択された。新型コロナウイルス感染拡大が農業分野にも影を落とすが、農家にとって魅力的なビジネスモデルを構築することにより、将来的に移住者や交流人口を増やし、町の盛り上げにつなげたい考えだ。(高木大喜)

■推進協が実演
 農家が抱える問題の改善に向け、町は昨年11月、町内農家や町職員らで構成する「明和町次世代につなぐ先端技術導入推進協議会」を設立した。農水省の同支援事業に採択されたのは県内市町村としては初のケースで、独自の取り組みを進めている。

 昨年度の町の対象品目は水稲・麦と、キャベツの複合経営。同協議会は生産者の高齢化や農業に携わる人がなかなか増えない現状を踏まえ、持ち上げる力を増幅させるアシストスーツの貸し出しや、小型無人機ドローンなどを使った実演会を実施した。貸し出しと実演会は好評で、アシストスーツを購入した農家もいるという。

■特産のナシで
 同支援事業は、先端技術を組み入れた新たな営農技術体系や、その実現に向けた取り組みを支援する。産地に適したロボットや人工知能(AI)を活用し、課題解決を目指す。事業主体は生産者や農機メーカー、自治体などで構成されている団体で、上限200万円の補助金が交付される。

 全国各地の取り組みが採択されており、昨年度は29道府県53地区(9月24日時点)で実施。ヤマトイモや茶など多様な品目が対象になっており、日射センサーによる自動灌水かんすいや生産履歴管理システムといった先端技術を導入する際に活用されている。

 町は本年度、ナシを対象にした先端技術の導入を検討している。町内には多くの果樹園があり、これまでも特産のナシを使ったジュースやカレーといった新商品の開発が積極的に進められてきた。

 ナシの栽培に伴う負担の軽減や作業効率化につなげようと、剪定せんてい時に使用するアシストスーツ、果実に傷を付けなくても糖度が測れる器材などの効果の検証を想定している。

◎稼げる農業 若者誘う
 離れた場所から操作する「ラジコン草刈り機」や、直進アシスト付きのトラクターなどの実演会が、明和町内のほ場で2月下旬に開かれた。見学に訪れた大勢の農家は、新技術がもたらす効果を実感した。

 「若者にとって魅力のある農業のモデルケースを目指していく」。同町次世代につなぐ先端技術導入推進協議会で会長を務める黒沢幸広さん(35)は今後の目標をこう語る。

 黒沢さんは県外で働いていたが、3年ほど前に町へ戻って農業を始めた。農家の親の助けもあってこれまで続けてこられたが、現状のやり方では労力も大きく、「個人が気軽に始められる職業ではない」とも実感。「就農者が増えなければ農業の発展はなくなる。経験のない若者でも気軽に農業を始められるようにしていきたい」と意気込んだ。

■食農経営
 町は先端技術に触れる機会を提供するだけでなく、農業経営者としての成長の場も用意する。1月下旬には、農業のビジネスモデルなどを学ぶ「食農経営塾」を開催。農業コンサルティング会社のアグリコネクト(東京都港区)の熊本伊織社長を講師に招き、町内の農家や食農ビジネスに関心のある20~40代が初回講座に参加した。

 熊本社長は国内外の食や農業の現状を理解することの重要性を説明。フランスのワインが産地や畑によって価値が異なっていることなどを例に挙げ、「農家が自分の作物の良さをきちんと説明できることで、価値を生み出すことができる」と指摘した。

 会場で熱心にメモを取っていた造園業の稲田裕佳さん(42)は「視野が広がった。より良いビジネスを考えていきたい」と、将来に向けたヒントをつかんだ様子だった。

■終息後
 新型コロナウイルスの終息後を見据え、町は農業を軸とした移住・定住策や活性化策を模索する。

 町外から人を呼び込む方策として、首都圏の学生や社会人らを対象にした就農体験会のほか、先進事例に取り組む農家の見学会などを検討。こうした企画で訪れた人たちと地元農家が交流することで、新たな視点を取り入れた農業経営が進むことにも期待する。

 町の担当者は「稼げる農家を増やすことは地域の活性化につながる。町が農家にとって魅力あふれる場所となるように、これからも事業を続けていきたい」としている。

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