《住宅団地の行方》(下)再生策 課題認識も対応苦慮
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コロナ禍で需要が出ている安中榛名駅周辺の住宅団地
 
 

 老朽化する住宅団地に対し、地元市町村はどう向き合っているだろうか。上毛新聞は9~10月、群馬県内自治体を対象に、管内の住宅団地についての課題、街づくりの方向性などを尋ねる政策アンケートを実施した。高齢化など将来的な可能性を含めて課題を認識している市町村は8割近くに上った。ただ、団地再生への基本姿勢は分かれ、地元が政策的に対応することの難しさを浮き彫りにした。地方重視を掲げる菅政権に対し、東京一極集中の是正など地方が活性化する政策を期待する声も上がった。

 アンケートは住宅団地が開発された地理的傾向を考慮し、国が近年推進している立地適正化計画に基づいた「コンパクトシティー」の街づくりも参考に、都市計画区域があって適正化計画の対象となる27市町村を対象にした。全ての市町村から回答を得た。

《アンケート対象の市町村》
 前橋、高崎、桐生、伊勢崎、太田、沼田、館林、渋川、藤岡、富岡、安中、みどり、榛東、吉岡、下仁田、甘楽、中之条、長野原、草津、東吾妻、みなかみ、玉村、板倉、明和、千代田、大泉、邑楽

■空き家対策
 住宅団地について「課題が顕在化している。またはしつつある」と回答したのは9市町(33.3%)、「近い将来、課題となりそうだ」とした12市町村(44.4%)を合わせると、課題を認識しているのは21市町村(77.8%)に達した。顕在化しているとした自治体から「高齢者(65歳以上)人口が5割前後だったり、5年前と比較して3割から4割になっている団地がある」(渋川)との切実な指摘があった。

 具体的な課題(複数回答可)では「高齢化、少子化」(66.7%)が最も多く、「空き家の増加」(55.6%)、「人口や世帯の減少」(51.9%)、「商業施設の不足」(22.2%)と続いた。千代田は「少子高齢化における地域コミュニティーの低下」を予想した。

 課題への対応で最も多く挙がったのは空き家対策で前橋、高崎など11市町村(40.7%)。バスによる高齢者の移動手段確保や、「団地内施設管理の外部委託で負担軽減」(甘楽)との施策もあった。

■居住地域の集約
 団地再生に向けた姿勢は「行政としてさまざまな施策を講じるべき」(29.6%)、「需要の動向に委ねるべきで、積極的な誘導は控えたい」(22.2%)、「国の支援策を活用すべき」(14.8%)と割れた。「その他」(25.9%)とした明和は「老朽化した住宅団地は用途廃止などを検討し、まちのまとまりに必要な団地のみ積極的に誘導すべき」と強調した。

 街づくりの在り方として、都市機能を誘導したり、居住地域を集約化するコンパクトシティーを目指す立地適正化計画に沿って進めるとしたのは前橋、桐生など11市町(40.7%)。一方で、高崎など5市町(18.5%)は計画にとらわれず、地域の需要に応じた施策を柔軟に進めるとした。

 地方の居住環境改善や人口増加策に関する菅政権への期待では多くの意見が寄せられた。玉村は人口減少が全国的な問題であるとし、「自治体がゼロサムゲームで移住者を奪い合っている。自治体は疲弊し始めている」と訴え、省庁が連携して具体的な施策を打ち出すよう求めた。「地方への移住後押し」(桐生)、「企業の地方進出」(館林)、「デジタル庁創設で自治体の情報技術や通信環境を整備し、地方への人の流れを」(安中)との要望が上がった。

◎コロナで需要に変化
 新型コロナウイルス感染症が住宅需要に与えた影響についてアンケートで聞いたところ、前橋、渋川、安中、吉岡、下仁田、東吾妻、玉村の7市町が今後を含めた需要の変化を感じていると回答した。

 渋川は「東京一極集中によるリスクの回避やサテライトオフィス、リモートワークの普及」を根拠に、移住受け入れに意欲を見せた。雑誌の企画「コロナ時代の移住先ランキング」で都内と政令指定都市を除く関東自治体で1位になった吉岡。人口は増加基調で、アンケートでは「今後も需要は増加するのでないか」と展望した。

 一方、コロナ禍を受けた住宅団地の需給状況では北陸新幹線安中榛名駅(安中市)周辺に開発された団地で動きが出ている。団地は「びゅうヴェルジェ安中榛名」として、JR東日本が2003年に販売を開始。約600区画はいったん完売したが、購入したものの居住に至らなかったり、家庭内の事情で中古住宅を売りに出したりする人が少なくないという。

 物件を扱う高崎市内の不動産業者は「コロナ禍でリモートワークが常態化したことが影響し、老後を見据えた都内の富裕層などから購入を求める動きが出ている」と説明する。 (1)東京や軽井沢に行きやすい (2)都会にないスローライフを味わえる (3)街が新しく、団地内の人間関係が濃密でない―といった点に魅力があるとしている。

 アンケートでは、地元安中市もセカンドハウスや事業移転の相談を受けることが増えたと回答。「自治体職員には柔軟に対応できるようコーディネート力が求められている」と強調している。

「物件増やして移住誘う」…カチタス・マーケティング室長 大江治利さん
 住宅団地の再生で鍵となるのが空き家など、古くなった住宅の利活用だ。民間業者は県内の住宅団地の状況や中古住宅の需給動向をどう見ているか。中古戸建て住宅買い取り再生販売大手、カチタス(桐生市美原町、新井健資社長)のマーケティング室長、大江治利さん(52)に聞いた。

―住宅団地が老朽化している。物件の扱いは。
 団地を取り扱うことは多い。一般論として団地は区画や周辺環境が整っている所が多いのが利点となる。ただ、開発年代やプロセスによるが、今となっては住みづらい場所もある。立地による差は大きい。

―群馬の団地の特徴は。
 主に3通りある。開発時期が遅い団地は山沿いや傾斜地にある所が一定数ある。傾斜地だと駐車場を拡張しにくい。買い手が付かず、安くても手を出せない。

 駅や幹線道路から遠い郊外にある団地も厳しい。子どもが学校に通いにくいと購入に二の足を踏むが、価格で折り合えるケースもある。最も安定して販売が見込めるのは駅や高速道路のインターチェンジ、大型商業施設近くなど利便性が高い所だ。

―直近の市場動向は。
 新型コロナウイルスの影響で今年に入って群馬の団地は活況だ。徐々にテレワークが浸透し、「東京を離れてもいいかな」と都会から流れ、群馬を選ぶケースが出ている。一斉休校もきっかけになったようだ。

―主に地方の戸建てを取り扱い、成長している。
 平均すると築30年程度の住宅をリフォームして販売している。東京一極集中で地方が廃れると思われるが、地方の経済規模が縮小していくと、他の住宅供給会社が撤退する。人口はゼロにならないから、需要過多の地方が出てくる。人口減少が厳しい地域でシェアを伸ばしている。所得が伸びないことが背景にあるが、特に若い人を中心に、日本人の価値観にあった新築志向は崩れている。

―自治体も空き家バンクなどの対策に取り組む。
 取り壊すしかない物件もあるが、持ち主が処分を決断できず、流通しないまま放置されていることもある。バンクには難しい物件もある。少しでも流通する物件が増えれば地方に住む人が生まれる。ニーズに合う住宅を仕入れ、きちんとリフォームすることが大事。地方の活性化につながるよう、役に立ちたい。

《視点》地域の未来 住民も提案を
 県企業局や民間企業が主体となって各地に建設された住宅団地は、増加した人口の受け皿となり、県民が快適な生活を過ごすのに大きな役割を果たした。その団地が古くなり、対策が求められるのは時間の経過を考えれば当然行き着く問題だ。中心は空き家となった建物の有効活用などになるだろうが、地元自治体は民間企業と協力し、積極的に対策を取る必要がある。

 個人の所有権が絡む空き家は、扱いが難しい面がある。良い物件でも所在地域に魅力がないと、購入につながらない。自治体は売買しやすい制度設計に力を入れ、どうすれば地域の魅力向上につながるか考えるべきだ。

 新型コロナウイルス感染拡大で変化が生じた新しい価値観を意識しながら、団地を含む街づくりを進めることが求められる。

 国土交通省が主導し、自治体や企業などで活性化策を考える「住宅団地再生連絡会議」が2017年に設立され、県内の一部自治体も加入しているが、コロナ禍もあって動きは鈍い。財政難で身動きしづらい自治体も少なくない。ただ、さらなる人口減少など地方の先行きは厳しい。だからこそ住民一人一人が地域と向き合い、豊かに生きるための提案をしていくことが大切なのではないか。(高崎支社報道部・塚越毅)

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