《NEWSインサイド》コロナ下の群馬県内経済 影響長期化し明暗
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団体旅行が全く入らなかった7月を振り返る武井社長。今も団体旅行の顧客は戻っていない

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、群馬県内経済にリーマン・ショック以来の深刻な影響を与えた。群馬県内全産業の景況感を示す日銀短観の業況判断指数(DI)は、6月がマイナス35、9月マイナス31と、リーマン・ショック後の2009年に並ぶ低水準に。影響が長期化する中で、業績が徐々に上向く動きがある一方、回復に苦しむ企業や業種もあり、明暗が分かれる。政府が経済の下支えとして行う需要喚起策「Go To」事業の効果は、対象となる観光関連産業や飲食店でも業態によって大きな差が出ている。(宮村恵介)

■続く苦戦
 日銀前橋支店が11月の群馬県金融経済概況で、主力の輸送用機械産業の回復を受けて「生産」を「持ち直している」から「増加している」に引き上げるなど、改善の兆しも見える。だが、自動車産業でもサンデンホールディングス(伊勢崎市)やミツバ(桐生市)は苦戦が続く。

 サンデンは私的整理の一つ「事業再生ADR」を申請し、支援企業の選定と事業再生計画の策定を急ぐ。下請け企業は「昨年から受注が少なくなっており、生産効率向上のために工場の縮小を図っている」とする。ミツバも10月に希望退職者を募集。ファンドの出資を受け、立て直しに力を入れる。投資意欲の減退で設備関連の産業も苦戦している。

■勝ち組
 一方、SUBARU(スバル)が国内唯一の自動車生産拠点を置く太田市。下請け企業の男性社長は「生産が9割に戻っている。回復が鈍い自動車メーカーもある中で、勝ち組のスバルのおかげだ」と話す。新型コロナの影響で受注は一時4分の1まで落ち込み、肝を冷やしたが、フル操業に近い状態に戻ってきた。

 スバルは4月から5月上旬にかけ、日米両工場の操業を停止したが、その後は主力の米国の販売復調に伴い生産を回復。世界の生産台数は10月まで4カ月連続で前年を超え、群馬でも2カ月続けて前年を超えた。

 非製造業では宿泊飲食などサービス業が落ち込んだ一方、小売業は好調だった。9月の中間決算では、スーパーのフレッセイを展開するアクシアルリテイリング(新潟県長岡市)が増収増益、家電量販店もヤマダホールディングス(高崎市)の純利益が前年同期比39%増になるなど、「巣ごもり需要」を取り込むなどして好調だった。

■宿泊好調
 新型コロナウイルスによる県内経済への影響について、群馬経済研究所は (1)雇用・所得環境の悪化 (2)コロナの感染拡大 (3)新しい生活様式による制約―の三つを懸念材料として挙げる。企業によって業績にばらつきが出ていることについて、「大きく環境が変化しており、対応力の差で業績も変わってくる」と指摘する。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」を追い風に、草津温泉は10月の宿泊客数が前年並みに回復した。日本医師会が不要不急の外出自粛を呼び掛けた「我慢の3連休」(11月21~23日)でも草津、伊香保両温泉への人出は昨年の同時期より増え、宿泊者数も順調だった。

 満室だった草津温泉(草津町)の旅館の支配人は「(GoToトラベルの)効果を実感している」と喜ぶ。当面の実施期間とされた来年1月までは予約で埋まっており、「ここ数カ月はむしろ、例年より順調」とする。東京発着旅行で高齢者らにGoToの利用自粛が呼び掛けられるなど先行きに不透明感もあるが、「GoToの延長のニュースも出てきた」と期待を膨らます。

■バス 客足遠く
 一方、中小の旅行代理店やバス会社は客足が遠のいたままだ。

 社会インフラを担うバス業界は苦境に陥っており、日本中央バス(前橋市)は貸し切りバスの運行が激減し、高速バスも乗客は例年の4分の1。利幅が薄い自主運行の路線バスでも利用者が約3割減って、赤字が続いている。政府の補助事業を活用して従業員には休職してもらい、制度融資などで資金繰りをしのいでいる。経営幹部は「支援制度で何とか息をつないでいるが…。このままでは廃業が増えるだろう」とこぼす。

 県旅行業協会長を務めるさくら観光(富岡市)の武井哲郎社長も「GoToトラベルは事務ばかり増え、中小の旅行業者にはメリットがない」と訴える。県内の旅行代理店が主力とする団体旅行の回復は鈍く、売り上げの大幅減が続いている。「政府はアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状況。いい方向に向かわせるのは難しい」とうなだれた。

 飲食店は書き入れ時の忘・新年会シーズンに感染が拡大する事態を警戒する。炭火焼きワインバル「Lom」(前橋市)では個人や少人数グループが増えているが宴会が入らず、売り上げは落ち込む。池下道夫代表は「うちは個人の比率が多いのでまだいい方。大規模な宴会が多い店では年明けに廃業が増えるのではないか」と心配する。

 法事や大人数の宴会が主力の和食料理店(同市)は「忘年会の予約がほぼない。稼ぎ時の春に続き、年末年始がこの状態では経営的には厳しい」と嘆いた。

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