《“双子都市” 前橋・高崎》中核市で「幸福度」そろって上位に
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さまざまな遊具を備えた高崎市の観音山公園。都市公園の多さは暮らしやすさにもつながっている
分娩を扱う施設が減少する中、2015年に新規開院したマザーズクリニックTAMURAの田村院長(右)=前橋市
 

 昨年12月に公表された「全47都道府県幸福度ランキング2020年版」の中核市部門で群馬県の高崎市が3位、前橋市が7位になった。イメージによる順位付けではなく、公的な統計を基にした物差しで暮らしやすさを評価したものだ。とかく「魅力度」や「ブランド力」が低いとされる群馬県だが、県央部の都市力は高い証拠。長所と弱点を知り、長年張り合ってきた両市が補完し合う魅力的な都市圏をつくれるか。

 上下各10位以内だった指標

■「商都」高崎 文化も
 冷たい風が吹く観音山公園(高崎市)に子どもの声が響く。2歳と0歳の娘を連れた有賀巳智香さん(31)=同市=は「公園はたくさんあるし、駅前はにぎやか。コロナ以前は新幹線で東京にもよく出掛けていた」と話す。以前暮らしていた伊勢崎市も便利だと思ったが、高崎市の住環境は「予想以上だった」。

 同市は群馬の森など県立の都市公園もあり、1人当たりの都市公園面積は21.9平方メートルで3位。文化活動のNPO数は1位で、「文化水準が高く、住民が暮らしやすい環境」とされた。

 住環境以外で高い評価を受けたのが、商都を支える経済活動だ。従業者1人当たりの小売業販売額が2330万円で7位となるなど、企業分野は11位だった。一方、雇用分野は24位と中位にあるものの、若者完全失業率32位(6.4%)、正規雇用者比率23位(65.3%)が課題と指摘されている。

■前橋は「健康分野」
 前橋市は医療福祉など健康分野が初めて1位になった。特に全国的に医師不足が深刻な産科・産婦人科医師数が2位。群馬大医学部附属病院や前橋赤十字病院など大規模病院の多さが理由だが、2015年開院のマザーズクリニックTAMURA=同市小屋原町=のように新規開院した例もある。田村友宏院長(44)は「市内で分娩ができる施設としては新設が約10年ぶり」と話す。県内でも最も新しい産婦人科の一つだ。

 学校と社会教育の7指標を含む教育分野は5位で、「質の高い教育が受けられる環境が整備されている」とされた。

 複数分野が上位に入ったが、財政健全度(34位)や人口10万人当たり自殺死亡者数(43位)など6項目を総合した基本指標は35位と低い。製造業の労働生産性や事業所の新設率はともに30位台と企業分野も低迷している。

■「政令市」求める声
 人口規模や群馬県庁を取り合った歴史的経緯などから両市は長く政治、経済などさまざまな分野で競い合ってきた双子都市でもある。同規模の都市が並び立つことで活力の分散を招いたとも指摘されてきた。

 高度経済成長で右肩上がりの発展を目指したライバル関係は、バブル経済崩壊やリーマン・ショック、相次ぐ災害のあった平成時代を経て変化している。高崎駅周辺整備を進めにぎわいを生んできた商都高崎、前橋は住都として医療の充実や広瀬川沿いを中心に落ち着いた街並み整備を目指す。

 県央地域のブランド力を高めるため、両市の合併による政令市実現を目指してきた民間団体「理想の都市建設研究会」も昨年方針を転換。当面は各市・地域で持続可能な住みたくなる「理想の都市」を目指し、長期的に政令市を見据える。

 ただ、急速な人口減少社会を迎え、持続可能な開発目標を世界が共有する中、一自治体だけで発展し市民の幸福度を高めることは望めない。同研究会代表幹事の吉岡慧治さんは「道州制をにらめば、やはり合併により政令市ができなければ群馬は完全に埋没する」と危機感を示し、「前橋と高崎はもっと連携し、補完し合うべきだ」と訴えた。

◎豊かな税収暮らし充実…3回連続首位は愛知の豊田市
 幸福度ランキングの中核市部門で2016年から3回連続トップの愛知県豊田市。トヨタ自動車お膝元の同市は、独自の税収が豊かで交付税を受け取らずに財政運営できる不交付団体だ。堅調な法人市民税に支えられた市財政を背景に、多くの指標がハイレベルな都市の実力を示している。

 財政健全度1位や市民所得4位、合計特殊出生率5位を含む基本指標はトップだ。若者完全失業率と製造業労働生産性が1位で雇用や企業分野の評価も高い。

 暮らしに関わる数字も上位にある。1人当たり医療費3位をはじめ健康分野は前橋市に次いで2位、1人暮らし高齢者率1位、社会教育費2位などだ。「自動車産業が中核なので働く人の暮らしやすさを支えることが大切」(経営戦略課)と市の方向性は明確だ。

 体育・スポーツ施設数も1位。19年のラグビーワールドカップ(W杯)の会場にもなった豊田スタジアムをはじめ、国際大会の開催が可能な施設が充実し、市民のスポーツ活動が街に活気をもたらしているという。

「地域色 生かして発展」…中核市3位の高崎・富岡賢治市長
 評価はうれしい。最近、商工業・ビジネスといったいろいろなランキングで高い位置に入っている。テレビなどマスコミへの露出も増え、選ばれるまちになってきたと感じている。

 文化での評価は市民美術展を続けてきたり、市民が群馬交響楽団を長く支援してきたことが認められたのだろう。年末にコロナ禍の中で高崎第九合唱団のコンサートを開くことができたのも市民の熱意の表れだ。福祉・子育て環境はトップクラスになったと言える。

 雇用の数字が悪いというのは肌感覚と異なる。事実とすれば改善しなければならない。子どもの学力レベルも悪くない。

 前橋とは張り合っても意味がない。医療では前橋に群馬大医学部附属病院や前橋赤十字病院があり、協力し合ってやっている。いいところを補完し合うのは当然のこと。合併して政令指定都市になると市の格が高くなるように見えるが、実益がないので反対だ。

 前橋は潤いのある文人のまち。高崎は、動きがあってビジネスが盛んなエキサイティングなまちであると同時に、落ち着いた居住環境のあるまちにしたい。西毛広域幹線道路沿いなどの規制緩和を進めて美しい住環境を確保し、地域の特色を生かして発展させたい。

「市民サービス 共有化」…中核市7位の前橋・山本龍市長
 きちんとしたデータを基に外部の評価をいただけたのはうれしい。特に健康分野は高い。産婦人科医師数と健診受診率が高く、介護予防も図られている。「医療健康都市」としての前橋のスローガンを数字で裏付けてもらえた。

 教員1人当たりの児童生徒数の順位は真ん中だ。教育への予算をもう少しかけていきたい。パソコン1人1台のGIGAスクール構想による新たなICT教育で教師の負担感を減らしたい。

 前橋、高崎というランキング上位の2市が隣接しているのはまれな環境だ。前橋は住都、高崎は商都であり、都市圏として十分に補完し合える。連携を進めていけば求心力が高まり、その先に合併はあり得るだろう。ただ、道州制で北関東信越の州都を目指すなど大きなビジョンを政治が描けるかどうか。合理的で便利になるだけでは、歴史ある都市が一つになるには乗り越えるべき壁が多い。

 前橋と高崎、伊勢崎の3市は基幹系システムを共同化している。今後、消防や下水道、ごみ処理などさまざまな連携をするべきだ。ドクターカーも3市で共有すれば、命を支えるサービスをより広く提供できる。市民サービスのプラットフォームを自治体からエリア単位に拡大していく時代だ。

 《幸福度ランキング》 日本総合研究所(東京)がさまざまな統計資料を基にした指標で順位付けしている。都道府県は2012年から2年ごとに公表。中核市部門は16年に始まり、人口増加率など基本指標と健康、文化、仕事、生活、教育の5分野39指標を基に分析した。20年版は18年度以降に中核市へ移行の12市を除く48市で比較した。

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