《NEWSインサイド》草津湯畑周辺整備 収束後の観光 起爆剤に
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観光客でにぎわう湯畑=昨年10月
地蔵地区の高台に整備される漫画図書館の完成イメージ
 

 新型コロナウイルスの影響で多くの観光地が苦境に立たされる中、群馬県草津町の草津温泉で温泉街の再整備が着々と進んでいる。今春には湯畑近くの地蔵地区に漫画図書館など新たな観光拠点が完成する。温泉街の入り口となる国道292号沿いには新たなシンボルとして温泉門の整備が予定され、年内にも工事が始まる。コロナ収束後の誘客への起爆剤になるとして、観光関係者の期待が高まっている。(桜井俊大)

◎漫画図書館や体験館 ゆったり滞在型拠点
 再整備が進む地蔵地区は、草津温泉のシンボルである「湯畑」から徒歩数分の距離にある。江戸時代後期に湯治場として栄えたが、昭和の中ごろから同地区に背を向ける形で湯畑周辺に大規模ホテルが建設され、人通りが減少。温泉が眼病を癒やすとの言い伝えに由来する「目洗い地蔵」のお堂や共同浴場「地蔵の湯」などが残るのみだった。

 にぎわいを取り戻そうと、町は温泉街の表の顔である「湯畑」に対し、地蔵地区を「裏草津」と位置付けた再整備を2018年度に始めた。

 共同浴場前の広場には、温泉の蒸気で顔を潤す「顔湯」や、絵や文字を書いた石灰石を温泉に漬けて作る「百年石」の体験館などを整備する。共同浴場北側の高台には、ちばてつやさんや故・赤塚不二夫さんら草津温泉にゆかりのある作家の作品約1万冊を集めた漫画図書館やカフェ、芝生広場が完成する予定だ。町企画創造課は「散策がメインの湯畑や西の河原公園とは対照的に、ゆっくりとくつろげる滞在型の拠点としたい」と展望する。

 周遊性を高め、温泉街を一体的に楽しんでもらうため、湯畑からつながる約270メートルの路地を整備する。石畳と木製の柵などを施して温泉情緒が感じられる通りに変え、夜間のライトアップも充実させる。

 再開発に伴い、旅館の開業も進む。19年8月には草津温泉で複数の宿泊施設を運営する奈良屋が素泊まり専用ホテル「源泉一乃湯」をオープン。創業から120年以上続く老舗旅館の金みどりも、新館となる「けい」を開業した。草津温泉旅館協同組合は「5年前に比べて旅館の数も増え、徐々に活性化してきている」と説明する。今後も複数の施設がリニューアルや開業を予定し、「コロナ禍で臨時休業や客室を減らして営業している宿泊施設が増えているが、再開発は唯一の明るい話題。誘客への期待は大きい」としている。

◎街全体をテーマパークに 年間400万人目標に個人客誘う
 旅行のプロが選ぶ「にっぽんの温泉100選」で18年連続1位に選ばれ、日本有数の温泉地として知られる草津温泉だが、入り込み客数はバブル期の300万人を頂点に、一時は265万人程度まで減少するなど伸び悩んだ。

 客足の回復が課題となる中、草津温泉でしか見ることのできない景色を創出しようと、草津町は2010年から再整備に取り組む。黒岩信忠町長は「街全体を一つのテーマパークとして楽しめるようにしたい。コロナ収束後に(年間入り込み客)400万人を目指す」と、魅力ある温泉街への構想を練る。

 1990年代には多くの団体客が訪れたが、バブル崩壊に伴って団体利用が減少。かつては大型の宿泊施設が観光客を囲い込み、飲食、買い物など施設内で旅行が完結していた。町はこの構造を転換し、温泉街の散策自体を旅の目的にしてもらい、にぎわいづくりに生かそうと、湯畑周辺の景観整備に力を注ぐ。

 温泉街を訪れる際に便利な一方、渋滞や散策の妨げになっていた湯畑の駐車場2カ所を廃止。2013年には跡地に共同浴場「御座之湯」、14年にはイベント会場にもなる「湯路広場」と新たな観光拠点を生み出した。16年以降に湯畑や西の河原公園のライトアップを開始し、若い世代の反響を呼んだ。

 景観整備が奏功し、入り込み客数は19年度に過去最多の327万人を記録。草津温泉観光協会は「若者や家族連れなど客層が広がり、個人客が増えた。旅行の楽しみ方が増えた結果」と温泉街の変化を指摘する。

 湯畑周辺以外の周遊エリア拡大を図ろうと、地蔵地区に続く新たな整備も予定される。温泉街の玄関口である国道292号と町道(中央通り)の交差点には、渋滞解消のための立体交差事業に合わせ、温泉が流れる「温泉門」の整備を計画。温泉門近くには、100台以上が駐車できる大規模な無料駐車場を造る。駐車場から温泉門をくぐって湯畑へつながる中央通りには、公園を設けたり植樹したりして、新たな人の流れを創出する。いずれも年内の着工が見込まれる。

 「アフターコロナのためにも、魅力ある温泉地を創るためにも、立ち止まっていられない」(黒岩町長)。入り込み客数400万人達成を目標に掲げた「日本一の温泉街づくり」が加速している。

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