《女性参画の現在地》“後進県” 自治会長0.8%は全国最下位
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
政策・方針決定の場における群馬県の女性参画の状況
現役の自治会長として「難しいことだと考えずに、多くの女性に経験してほしい」と話す諸井さん
前橋市議選の出陣式で演説する女性候補=1月31日

 性別にかかわらず、誰もがあらゆる分野へ参画する機会が保障される社会に―。男女共同参画社会基本法の制定(1999年)から20年以上が経過したが、いまだに多くの分野で女性の参画が遅れている。政府が2003年に掲げた「20年までに、指導的地位に占める女性の割合を30%程度」との目標は達成には程遠く、先送りされた。群馬県は各分野への女性登用に関する指標で全国下位が目立ち、“後進県”の様相だ。固定的な性別役割意識や男性中心の慣例など越えるべきハードルは多い。

■活動に相乗効果
 地域のリーダーとして、住みやすい街づくりや問題解決に取り組む自治会長。県内の自治会長2429人のうち女性はわずか19人、割合は0.8%(昨年4月現在)で、9年連続で全国最下位となった。群馬県特有の事情があるのだろうか。自治会長経験者の女性2人の話や県民意識調査の結果から、男女双方が抵抗感をなくすことの重要性が浮かび上がる。

 桐生市広沢町の諸井佐恵子さん(54)はフルタイムのパートとして働きながら、広沢町6丁目町会長(自治会長)と連合組織である市第13区の区長代理を務める。

 女性初の市PTA連絡協議会長を務めたのをきっかけに2016年、49歳の時に区長代理の就任を打診された。役員は定年退職後の男性が就任するのが慣例だったため戸惑ったが、「これからは男女共同参画の時代。力を貸してほしい」と依頼されて引き受けた。18年から町会長を兼務する。

 町会長の業務は環境美化や防犯活動、役員会議、主催行事の運営など多岐にわたる。諸井さんは就任後、地元婦人会と連携してお茶のみサロンを企画。市の広報配布などを担う町務委員は女性が増え、10人中4人を占めるという相乗効果もあった。

 自治会役員は、自治会内部で候補者を挙げたり、当番・輪番制で選出するケースが多い。諸井さんが町会長を引き受けた際は「候補だった男性の体調不良により急きょ頼まれた」といい、県内で女性自治会長が少ない理由について「そもそも女性の名前が挙がらないのではないか」と推測する。

■自分から手を
 前橋市五代町の小沢晴美さん(70)は19年まで6年にわたり、端気町自治会長(2年)を含む自治会役員を務めた。就任を打診された夫が体調を崩したため、小沢さんが引き受ける旨を伝えたところ、高齢男性から「女じゃなあ」と否定的な反応をされたという。

 陸上自衛官として定年まで勤め、男女が一緒に働く環境が当たり前だった小沢さんは「女のどこが悪いんですか」と反論。就任後は途絶えていた地元の夏祭りを復活させるなど地域おこしに奔走し、否定的な発言をした男性からも「よくやっている」と励まされたという。

 小沢さんは「群馬はかかあ天下と言われる割に、積極的に前に出たがらない女性が多いと感じる。ぜひ自分から手を挙げてほしい」と呼び掛け、「PTAや子ども育成会など、地域の団体で活動歴のある女性はたくさんいる。そういう人たちに自治会役員に入ってもらえれば活性化されるのではないか」と語った。

 県が19年度に実施した県民意識調査で、女性が地域活動のリーダーになるために何が必要かを尋ねたところ(複数回答可)、「男性の抵抗感をなくす」(43.1%)、「女性自身の抵抗感をなくす」(32.7%)の順に回答が多かった。

 地域社会学を研究する坂本祐子・群馬パース大非常勤講師は「女性自治会長が増えれば、住民の半数を占める女性の意見が地域に反映される」と強調。「男性が就くのが当たり前になってしまい、問題にすら思っていない地域が多いのではないか。すぐに意識を変えるのは難しい。男女交互に選出するなどルールの見直しが必要だ」とした。

【議員の割合 全国平均以下】家庭と両立 理解必要
 女性の参画は政治分野で特に遅れている。スイスのシンクタンクが毎年発表する男女格差報告「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本は2019年、153カ国中121位で過去最低を記録。分析対象となる4分野のうち、政治分野が144位と格差が際立った。

 群馬県の議員に占める女性の割合(19年12月現在)は県議が8.0%(全国33位)、市議13.0%(同23位)、町村議7.7%(同38位)で、いずれも全国平均以下。群馬県関係の国会議員と県議、市町村議でつくる「ぐんま女性議員政策会議」などを通じ、政治参画が進まない理由や必要な環境整備について尋ねた。

 県議と市町村議の女性24人が回答。女性議員が少ない原因として考えられる理由(複数回答可)は、「家庭と議員活動の両立が難しい」(16人)、「家族や周囲の理解を得づらい」(14人)、「立候補に必要な資金を調達する負担が大きい」(11人)の順に多かった。「議員活動に力を入れるほど家庭は犠牲になる」との意見もあった。

 女性議員であることで差別やハラスメントを受けた経験はあるかを尋ねたところ、ある(14人)がない(10人)を上回った。具体的には、「性的嫌がらせの手紙を送り付けられた」「男性の支援者がいると特別な関係があるようにうわさされる」「議会で子育て支援の質問をしたら『自分で産めばいい』と言われた」(複数人が回答)などが寄せられた。

 女性議員の割合を一定数に定めるクオータ制を「導入するべきだ」は8人で、「慎重に検討するべきだ」は12人、「導入は必要ない」は4人だった。「制度自体は有効だが、無所属が多い地方議会にはなじまないのではないか」「立候補のハードルを越えられるのなら、男女平等に戦うべきだ」といった意見が目立った。

 女性の立候補者や議員を増やすために必要な環境整備に関する質問では、「議会の会議規則に出産や育児、介護休暇を明文化する」(複数人が回答)、「性別に関係なく家事育児をする環境整備」(同)、「政治活動に必要な知識や立候補に関するセミナーを女性議員が行う」などが挙がった。

【7日投開票の前橋市議選】女性候補は8人のみ
 7日に投開票された前橋市議選は、立候補者47人のうち8人が女性だった。ある候補の陣営は、子育て世代の母親や女子学生が中心。告示日に開いた出陣式では支持者の半数以上を女性が占めた。立候補した女性は「議員がどんな仕事をしているのか、接する機会がなければ分からない。若い世代に当事者意識を持ってほしくて陣営に入ってもらった」と話す。

 会員制交流サイト(SNS)の普及などで、支援組織や地盤を持たない女性や若者が政治活動をしやすくなったと受け止める。「単に女性を増やすというより、さまざまな年代や経歴の人が議員になることで変わっていくのではないか」と語った。

 選挙への立候補には、供託金(同市議選は30万円)をはじめ印刷費、人件費、選挙事務所を借りる場合の賃料などの資金が必要になる。ただ、別の女性は「パートナーや子どもがいる場合、資金以上に重要なのは家事や育児を支援してもらえるかどうか」と指摘する。

 子育て中のこの女性は、家族や“ママ友”の協力を得て選挙戦に臨んだ。子育て世代や、地域団体の役職に就いている女性の反応が特に良かったという。「誰でも手を挙げられるような環境をつくるには、身近に立候補者や議員がいることが大事。そこから政治に興味を持ってもらい、ゆくゆくは立候補につながる」と力を込めた。

【群馬県内35市町村審議会】女性委員の登用 中之条が割合最低の9%
 自治会長の少なさと同様、県内35市町村が法律に基づいて設置する審議会などの女性登用も低迷している。女性委員の割合は21.6%(2020年)と全国最下位で、群馬県の審議会の女性割合(33.9%、全国17位)との開きが目立つ。

 内閣府の調査によると、市町村別では人口の少ない西北毛の町村で割合が特に低い傾向が見られた。最も低い中之条町(9.1%)は、調査対象となる25審議会のうち、10審議会で女性ゼロだった。同町は男女共同参画に関する計画を策定していない自治体の一つであり、担当者は「今後、各団体に働き掛けて女性委員を増やしていきたい」と話す。

 一方、最も高い大泉町(32.8%)は35%を目標に掲げて取り組んでおり、女性が7割を超える審議会もあるという。県人権男女共同参画室は「審議会の委員は各団体の長が就任するケースが多く、『町村では適任の女性が見つからない』という話も聞く。目標値を定めればそれに向けて進められるのではないか」としている。

 他県では、一定数の女性を割り当てる「クオータ制」を導入した自治体もある。栃木県日光市は、各審議会で一方の性が40%を下回らないように定め(努力目標)、昨年4月現在で女性が36.6%を占めた。同県内で最も割合が高い小山市(38.4%)は、市全体で40%を目指すという目標を設定。女性割合の低い審議会については、改選時の上昇を働き掛けている。

 ※2回続きの連載です。2回目は9日6時に配信します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事