《震動》サンデンが中国企業傘下へ
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八斗島事業所へ向かう社員たち。スポンサー企業の決定に、再生への期待を寄せる=2日午前8時ごろ、伊勢崎市
 

◎交錯―畑違いの再建相手 EV集中の布石か

 1943年に群馬県伊勢崎市で産声を上げ、カーエアコン用コンプレッサーなどを核に世界展開するようになったサンデンHDが、中国企業の下で再起を図ることが決まった。本県製造業の雄に生じた震動に、関係者や地元企業はさまざまな思いを巡らせている。

 「予想が外れた。(再建相手に)あっと思った。電気自動車(EV)などに経営資源を集中する。そんな意思表示なんだろう」
 経営再建の一環で、中国のハイセンス(海信集団)傘下に入ることになった自動車部品メーカーのサンデンホールディングス(伊勢崎市)。子会社化の発表から一夜明けた2日朝、元幹部は取材に語った。

 サンデンHDは、カーエアコン用コンプレッサーを主力製品の一つとする。元幹部は、自社製品と親和性が高い自動車関連企業を再建相手に選ぶ可能性が高いと踏んでいたという。ハイセンスは家電製品や電子情報機器の世界的メーカーで、近年は東芝から「レグザ」で知られるテレビ事業を買収するなどしている。

EV市場を席巻する米テスラや自動運転技術で先行する米グーグルなど新興勢力の台頭により、自動車産業は大変革期を迎えている。「空調だけをとことん伸ばす。そうした時代ではなく、車というシステム全体として考える必要があるのかもしれない」。EV開発は莫大(ばくだい)な資金が必要ともされる。そんな観点からもハイセンスは妥当。元幹部は「複雑な気持ち」としつつ、企業の継続に必要な選択と受け止めた。

 サンデンHDは世界各国に拠点を持ち、元幹部も現役時代は20カ国以上を回った。現地生産は合理化などに寄与する半面、経営悪化時には負担になる。同社も新型コロナウイルスの影響で中国や欧州、アジアの拠点が生産停止に追い込まれた。「グローバル化は良い面も、悪い面もある」

 私的整理の一種「事業再生ADR」の申請から、約8カ月後となったスポンサー企業の公表に、現役社員も思いを交錯させる。
 2日朝、同市と埼玉県を結ぶ坂東大橋近くにあるサンデン八斗島事業所。制服姿の従業員がいつものように工場内へ吸い込まれた。「これで再生が進めば」。男性社員は不安よりも期待の方が大きいという。

 「会社がなくなるわけじゃない。ポジティブに捉えたい」。別の20代の男性社員も前を向く。活躍の場が広がることを希望し、「良くなると信じて、できることを精いっぱいやりたい」と自分に言い聞かせた。

 サンデン労働組合の山村康郎中央執行委員長は「事業再生に向けた第一歩。会社と組合でしっかり協議していく」と話した。

◎波及―不安募る取引先 雇用や拠点の維持焦点

 25社以上にスポンサーの検討を打診し、数社から反応を得た。うち何社かが意欲を示して調査したが、最終的に出資の考えを表明したのは、中国のハイセンス(海信集団)のみだった―。

 サンデンホールディングス(HD、伊勢崎市)が1日公表した資料。行間からは、昨年6月末に私的整理の一種「事業再生ADR」を申請してから、ハイセンスの傘下入りが決まるまでの曲折が伝わってくる。

 同日のニュースリリースは、両者の融合で「空調制御をより高度化した統合熱マネジメントシステムを提供」することや、原材料や電子部品の共同調達に臨んでいくなどと記す。一方、サンデンHDがこれまで築いてきた地元のサプライヤー(部品供給企業)との今後の関係性について、具体的な記述はなかった。

 製造業の中でも自動車産業はとりわけ関連企業が多く、裾野が広い。「巨大市場を狙えるようになるのはメリットだが、議決権75%を握られる意味は大きい。技術を取られ、県内の拠点や雇用に影響が出ないか」(県幹部)との見方もある。

 緒に就いた元請けの再建に、関係者の思いも多様だ。「サンデンさんの仕事をやっているところほど、専用のラインは多い。先方の調子が悪くったって、そんなに簡単に取引先は変えられないんだよ」

 県内で半世紀以上、サンデンHDが手掛けるカーエアコン用コンプレッサーの部品を作る企業の男性経営者は語る。口ぶりからは、両者が表裏一体の関係であることがうかがえた。新型コロナウイルスの影響で入る情報量が減ったこともあり、再建相手の話は聞こえてこなかったという。「(手を組むなら)日本企業かと思っていたけどね」

 中国企業は勢いがある。一方で、経営意識はシビアではないかと思いを巡らせながら、「悪い風に考えても仕方ない。すぐに(サンデンの)拠点を閉鎖することも、恐らくないだろう」とうなずいた。

 「正直どうなるか分からない。協力企業に仕事が回ってきたり、地元を盛り上げてくれれば良いけど」。県央地域の取引先企業の男性経営者は、サンデン側から明確な説明がないとして不安を募らせる。「地元企業に社長が自分の言葉で将来を語って」と願う。

 金融機関勤務の際に中国駐在の経験があり、野村証券シニア・アドバイザーなども勤めた上武大の小関広洋教授(経営学)は、自動車産業はIT化などで変革期にあるとして、サンデンHDがハイセンスを選んだ点を評価する。「焦点は、相手とウィンウィンの関係をつくり、国内で培った技術や雇用を守れるか。日本企業として矜持の見せどころになる」と話した。

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