《ニュース最前線》外国人労働者 人手不足で熱い視線
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規格通りに自動車部品をつくる中国人の技能実習生=黒田製作所
群馬県で暮らしながら日本語を学ぶ学生=NIPPON語学院
 

 製造業が盛んな群馬県は人手を必要とし、外国人抜きには企業経営が成り立たない状況にある。厚生労働省によると、県内の外国人労働者(昨年10月末)は2万9319人、雇用事業所は3466カ所でいずれも過去最高を記録した。

 外国人労働者を求める企業は多いが、在留資格によって働ける期間や職種は限られ、失踪や不法就労が絶えず課題となっている。仕事に携わりながら日本の技術を学ぶ外国人技能実習制度は、雇用主と外国人が合意していても就労できる年限があり、双方が戸惑っているのが現状だ。

 深刻な人手不足を受け、国は外国人の就労を拡大しようとしている。高齢社会を迎え、介護サービス利用者が増える中で介護業界は外国人労働者に熱い視線を送る。県内の留学生も増えてきた。帰国せず、群馬で働くことを希望する学生もいる。外国人就労を巡る雇用側の考えと、外国人が抱く仕事への思いを探った。

◎多業種で担い手に 雇用、労働 双方に戸惑い

 「実習生がいなければ仕事が回らない。一生懸命に作業をしてくれている」。自動車部品メーカーの黒田製作所(太田市沖之郷町)の黒田雪久社長(67)は外国人技能実習生が行うプレス作業を安心して見つめる。

■別れの日
 同社には現在、中国・大連からやって来た8人の実習生がいる。3年目の曲爽チュシュアンさん(22)は実家がリンゴ農家で、「大変な仕事なのに収入が少ない。ここでためたお金は両親に送る」と実習に励む。

 中国の製造工場で働いていた時の収入は日本円で月5万円程度だったが、同社では残業代も含め月15万円程度になる。曲さんは「これからも日本で働きたい」と希望するが、10月が実習の期限だ。

 制度では、実習生として再来日することはできない。仕事に対して意欲的な曲さんと、戦力となっている曲さんに残ってほしい同社の別れの日は近い。

 人口減少や高齢化による労働力不足は、とりわけ地方で深刻になっている。群馬労働局によると、製造業が盛んな県内の有効求人倍率(6月)は1.68倍で、全国平均よりも高い状況が続く。人手不足に悩む企業では、労働力を外国人に頼らざるを得ない状態だ。

 ただ、外国人技能実習制度は、習得した技術を母国の経済発展に役立ててもらうのが目的で、単純労働とは一線を画す。外国人が日本で働くには在留資格などでさまざまなハードルがあり、労働力を確保したい企業と就労したい外国人の要望を取り込めていない。

■基準緩和を
 特別養護老人ホーム八瀬川の里(太田市高林北町)。職員の河野トシオさん(44)はブラジル生まれで18歳の時に来日した。栃木、埼玉、群馬の3県で派遣社員を経験した後、介護職に就いた。介護福祉士の資格につながる実務者研修を修了。日本語がうまく、利用者から人気だ。「お年寄りと関わるのにやりがいを感じる」と話すトシオさん。日本でこの仕事を続けると決めている。

 トシオさんは実習生ではなく、日系人の在留資格で働いている。介護は昨年11月、技能実習制度の対象職種に加わったが、他の職種に比べて高い日本語能力が求められるなどハードルもあり、該当事例はまだ少ない。

 金田正明施設長(67)は「人と接する仕事なので、日本語ができなければ働けないのは理解できる。しかし、介護現場で人が足りないのは国も分かっているはず。国策で人を増やす手だてを講じてもらわないと成り立たない」と、基準の緩和を要望する。

 将来の働き手となる留学生も増えてきた。前橋市のNIPPON語学院に在籍するベトナム人のグェン・ティ・ミン・ダオさん(31)は「日本で仕事をしてお金をため、ベトナムで農業をしたい」と、若いうちは日本で働きながらビジネスや農業を学ぶ考えだ。

■日本文化好き
 同校の系列校で、同市の「NIPPONおもてなし専門学校」を卒業したネパール人のライ・ムスカンさん(28)とタパ・クマさん(28)は、与謝野晶子ら文人も定宿にした明治創業の法師温泉長寿館(みなかみ町永井)に技術・人文知識・国際業務の資格で就職。2人とも日本文化が好きで、フロント業務や案内をこなす。

 同社は2016年4月に初めて外国人を雇った。現在、ネパール人3人、ベトナム人1人が働く。県の温泉協会長も務める岡村興太郎社長(72)は「日本の温泉を理解し、温泉文化を伝えようと頑張る外国人の中には、日本人より礼儀作法が良い人もいる」と評価し、温泉文化の担い手として期待を寄せる。

 厚労省によると、県内の外国人労働者は17年10月末で2万9319人と5年間で65%増えた。このうち実習生の資格で働く人は6774人と、2.1倍に急増。今後も増加が予想される。

 一方で、外国人の労働には、しばしば違法な低賃金や長時間労働といった問題事例がつきまとう。外国人を受け入れる経営者や従業員には法令順守の意識が求められる。外国人が働く場として日本を選択し続けるのか、労働環境の善しあしが鍵を握る。

「知恵を積極的に活用」群馬大・結城恵教授に聞く

 留学生就職促進プログラム事業に携わる群馬大の結城恵教授に、外国人就労の課題や助言を聞いた。

―国が検討する外国人就労の拡大をどう考えるか。
 単純労働の人数が少ない分を外国人で補う発想ではなく、作業を見直し機械化やロボット、人工知能(AI)を組み込むことが先だ。人為的ミスを減らす方策にもなる。その上で、単純労働の内容、賃金、生活保障が制度で定義されれば、単純労働の受け入れもありだと思う。わが国の英知が試されている。

―企業が外国人を受け入れる際に注意すべき点は何か。
 外国人を助けてあげないといけないという上から目線があると感じ、外国人への見方が成熟していない。単純労働者の学歴ではなく人として見た時、考え方や暮らしの知恵が優れている。企業はそれを活用することで、職場環境の改善や生産性向上、新たな商品開発にもつながるだろう。

―日本で学ぶ外国人も多い。就職につなぐヒントは。
 留学生と企業との接点を多くつくることだ。合同企業説明会で留学生も対象にする程度ではなく、日常生活で企業の人と接する必要がある。留学生のインターンシップがある企業でも1日ではなく、1、2週間しっかり見て採用を決めれば企業と学生の双方に良い。

《記者の視点》雇用継続 選択肢に

 前橋市中心部を自転車で行き交う留学生、コンビニの店員、取材先の工場や農家で作業をする実習生―。群馬県でも外国人を見かけない日はない。

 取材を通じて 出会った外国人は「自分の夢をかなえたい」「稼いだお金を両親にあげて喜ばせたい」と意欲的だった。雇用主からの評価も高い。一方、日本で 働くためには、専門的・技術的分野や日系人、日本人配偶者がいることなど、在留資格のハードルが高い。

 そんな中、技術取得を前提に働く意欲があれば来日の機会を与える外国人技能実習制度は風穴を開けたと感じるが、改善は必要だ。「実習生」という表現は学生のようだが、現実は企業の「助っ人」。プロ野球選手のように働きぶりを評価され、労使双方の合意で雇用の継続が選べる仕組みを求めたい。人種に関係なく一人一人の意欲と能力の結果が、国の経済力を左右すると思う。(報道部 関坂典生)

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