群馬県の八ツ場ダムの建設事業に伴う発掘調査の出土品などを展示する「町営水没文化財保存センター(仮称)」を、長野原町が2020年春に林地区に開設することが11日、分かった。江戸時代の天明泥流の被災遺跡で出土した生活道具を展示するほか、泥流を再現したCGを鑑賞する常設シアターを設ける。近くに整備されるダム湖に臨む公園とともに、八ツ場ダムの周遊観光の拠点になりそうだ。
道の駅「八ツ場ふるさと館」から西に約600メートル離れた、約4500平方メートルの国有地を取得して建設する。建物は鉄筋コンクリート造り3階建てで、延べ床面積は約1700平方メートル。入り口がある3階が展示スペースで、1、2階は文化財の保存庫として活用する。総事業費は約19億円。本年度に着工し、八ツ場ダムの完成時期に合わせて整備する。
天明泥流で埋没した東宮、西宮、石川原などの遺跡で県埋蔵文化財調査事業団が発掘した、げたやあんどん、うちわ、香炉、きせるといった生活用品を展示する。泥流が集落を飲み込む様子を体感できるCGシアターのほか、被災後の復興の様子を示す絵図や供養碑の分布図を配置する。
縄文、平安時代の出土品を展示するコーナーや、ものづくり体験ができる体験学習室、関連グッズを取り扱うミュージアムショップも設ける。卒業生の要望で代替地に復元した旧第一小校舎の一部を敷地内に移築し、民具や農具を展示する。
発掘調査の出土品を収蔵・展示するセンターは20年以上前から構想されていたが、ダム中止宣言などの
町の担当者は「江戸時代の中山間地域の暮らしぶりが分かる展示になる。子どもたちが学習でき、観光客も楽しめる施設にしたい」と話している。
《天明泥流》 1783(天明3)年8月の浅間山の噴火で、大量の土石が吾妻川に流れ込んで泥流が発生。流域の集落に甚大な被害をもたらした。泥流は吾妻川から利根川を下って、被害は現在の東京都や千葉県に及んだ。死者は県内外で約1500人に上った。