介護離職 テレワークや在宅勤務 理解広まりにくく浸透せず
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介護しながら自宅で仕事を続けた桐生市の男性。今は同居する父親の世話をする

 「体力的にも、精神的にも限界だった」。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の妻(56)を介護する群馬県伊勢崎市の男性(57)は休職を決意した1年半前をこう振り返る。

◎仕事と両立 支援望む
 男性は、集合住宅の運営管理会社に勤務していた。妻がALSと診断された2016年当時は長野県内の営業所を統括する立場だったが、介護のため、高崎市内の店舗に異動。それでも仕事を休まざるを得ない場面が多々あった。

 病状が進行すると、生活の負担が増した。出勤前や帰宅後は家事や介護に追われた。床ずれを防ぐため、夜は2時間ごとに妻の体の位置を変えなくてはならなかった。1日2時間以下の睡眠で働いたが、収入を失う経済的な不安の方が大きかった。結局、そんな状況が1年続き、耐えきれずに休職を余儀なくされた。

 その後、会社からは復職の選択肢を示されたが、休職の9カ月後に退職。「散々迷惑を掛け、職場には戻りづらかった。病気の程度や経済状況は違っても、同じような状況で仕事を辞めた人は他にもいるでしょう」とつぶやいた。

 総務省の就業構造基本調査によると、17年9月までの1年間に家族の介護や看護を理由に離職した人は全国で9万9000人。12年の前回調査(10万1000人)とほぼ同程度だった。政府は「介護離職ゼロ」を目標に掲げるが、どこまで実現できるかは不透明な状況だ。

 こうした中、自宅で働きながら家族を介護する人もいる。都内のウェブ制作会社に勤務していた桐生市の男性(53)は17年4月、母親(81)が認知症と診断されたことを受けて実家に戻った。個人事業主として、在宅でウェブデザインなどを手掛け、介護と仕事の両立を試みた。

 母親が自宅を抜け出し、警察に保護されたこともある。ただ、「自分の目が行き届くため、安心して作業に打ち込めた」という。その後、入所先を見つけ、現在母親は市内の介護施設で生活。自宅で同居する父親の世話をする。

 最期まで地域で過ごす地域包括ケアシステムの構築が進められ、令和の時代ではさらに在宅医療・介護の重要性が高まるとみられる。男性は「まだテレワークや在宅勤務が浸透しておらず、介護者を支援する仕組みが不十分。介護で離職する人をなくすため、仕事と両立できる態勢を早く整えてほしい」と願う。

 【メモ】 民間調査会社の2015年の調査によると、介護離職者の約6割が仕事を辞めた理由について「介護との両立が難しい職場だった」と回答。一方、半数以上が「仕事を続けたかった」と答え、多くの人が自らの意に反して退職を選んだことがうかがえる。

◎柔軟な働き方認めて…おおたテレワーク推進協議会・大橋志帆会長に聞く
 介護離職は労働者本人が収入を失うだけでなく、人材が流出する雇用側にとっても大きな損失だ。団塊の世代が75歳以上になる2025年以降、問題がさらに顕在化するとみられる。おおたテレワーク推進協議会の大橋志帆会長(48)は「状況に応じた柔軟な働き方を認め、どんな人も仕事を続けられる社会になってほしい」と強調する。

―介護離職はどのような影響を及ぼすか。
 総務省の統計によると、群馬県内で16年10月~17年9月に介護などを理由に退職した人は1300人。8割以上が40~60代で、管理職に就くことが多い年代だ。これを踏まえれば、労働者は (1)離職で必要な収入が得られない (2)培ったキャリアが途絶えてしまう (3)中高年だと復職が困難 ―などの深刻な問題を抱えることになる。雇用側からすると経験豊富なベテラン社員が抜けて他の人材を充てなくてはならず、双方にとってデメリットとなる。

―離職防止の有効な方策としてテレワークへの期待が高まっている。
 情報通信技術(ICT)の発達によって、場所にとらわれない勤務形態が可能になっている。通勤時間がなくなるため、効率的な働き方とも言える。スマートフォンのアプリを使った同僚との情報共有やテレビ電話による会議を活用すれば、自宅で介護しながら仕事をこなせる業種も多いはずだ。

―群馬県内ではまだ浸透していない。
 管理職が強い不安を抱いていることが背景にある。部下の仕事ぶりを間近で見られないため、本当に働いているのかが分かりにくい。経営者が導入を考えているものの、管理職が強く反対する会社もあると聞く。この問題は密にコミュニケーションをとることで解消できる。テレワーク普及には何より職場全体の理解が重要だ。

―今後広がっていくのか。
 15~64歳の労働生産人口の減少が見込まれる中、限られた人材をフルに活用しなければいけない時代に入った。介護や育児に参加したら会社と切り離されるのではなく、個々の状況に応じた働き方を認める社会になってほしい。

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