浅間山噴火 一部で降灰 人や建物に被害なし 観光シーズンに暗雲
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全面通行禁止となった浅間火山博物館へ通じる道路脇には、うっすらと火山灰が積もっていた=8日午前10時50分ごろ、嬬恋村鎌原

 7日夜の浅間山の小規模噴火を受け、災害警戒本部を設置した群馬、長野両県は8日、それぞれ対策会議を開き、人や建物の被害がないことを確認した。長野原町と嬬恋村では少量の降灰があった。山頂の火口から約4キロの範囲で大きな噴石が飛んだり、火砕流が起きたりする恐れがあるとして、気象庁は噴火警戒レベル3(入山規制)を維持し、引き続き警戒を呼び掛けている。

 国土交通省関東地方整備局は8日午前、ヘリコプターで上空から火口を調査。目視の観察で火口周辺の一部に降灰の堆積を確認した。気象庁は職員を現地に派遣し、降灰などの状況を調べた。噴火のタイプの特定を急ぐ。

 気象庁によると、これまでの観測で明確な地殻変動は確認されず、火山ガス(二酸化硫黄)の噴出量も増えていないため、マグマ活動が高まった状態ではないという。

 県では災害警戒本部の会議後、横室光良危機管理監が山本一太知事に状況を報告。山本知事は「自然現象だけに今後の展開が予想しにくい。県として万全の態勢が取れるよう引き続き状況をウオッチしてほしい」と職員に指示した。

 県によると、長野原町と嬬恋村が自主避難所を開設した。住民のほか、火口から4キロ圏内にあるキャンプ場利用者が最大で計25人避難した。長野原町は4キロ圏内の浅間火山博物館周辺の町道を通行止めにした。嬬恋村の有料道路「鬼押ハイウェー」は、一部区間が8日朝まで一時通行止めとなった。

 特産のキャベツの出荷が最盛期を迎えている嬬恋村では、JA嬬恋村などが畑への降灰を調査した。一部でごく微量の灰が確認されたものの、出荷への影響はないという。農地や農業施設の被害は確認されていない。

 7日夜に設置された長野原町と嬬恋村の災害対策本部は8日昼までに災害警戒本部に移行した。

 周辺観光地では、宿泊などの予約のキャンセルが出始めており、お盆休み直前の噴火に、影響を懸念する声も上がっている。

 噴火は7日午後10時8分ごろ発生し、約20分間続いた。噴煙の高さは火口から1800メートルを超え、大きな噴石は火口から200メートル程度まで飛んだとみられる。

◎予兆見られず…気象庁
 浅間山の噴火警戒レベルは7日の噴火後、1(活火山であることに留意)から3(入山規制)に引き上げられた。以前の噴火で見られたような予兆がなく、気象庁は事前に警戒を呼び掛けられなかった。

 噴火前の状態について、同庁は火山性地震は少なく推移し、明確な地殻変動など予兆とされる現象がなかったと説明。「噴火に向けての明瞭な変化がなく、(噴火の可能性を)判断できなかった」とした。

 こうした状況に、県危機管理室は「火山予知の難しさを感じた。近隣住民に火山をより理解してもらい、訓練などの対策を講じる必要がある」としている。

◎「風評被害 一番怖い」…観光関係者
 浅間山(群馬、長野県)の小規模噴火から一夜明けた8日、関係自治体は安全の確認に追われた。噴火直後に避難したキャンプ場の宿泊客らには疲れがにじんだ。収穫最盛期のキャベツに降灰被害はなく、観光施設への被害もなかった。一方、キャンプ場を中心に宿泊施設ではキャンセルが相次いだ。夏休みの行楽シーズンの中、“風評被害”の懸念も強まっている。

 「まさか噴火とは」―。火口の4キロ圏内にある嬬恋村のキャンプ場や別荘に滞在していた約30人は7日夜から、嬬恋会館(同村)と北軽井沢住民センター(長野原町)に避難。突然の噴火に戸惑い、不安な夜を過ごした。

 同センターに家族5人で避難したさいたま市の国府田俊輔さん(39)は、たき火をしている時に噴煙を確認し、急いでテントを片付けたという。「爆発音もなかった。まさかと思った」と驚いた様子だった。

 「車のフロントガラスが火山灰で真っ黒になっていた」と振り返るのは、東京都町田市の矢ケ部重隆さん(47)。家族は灰の影響で目や喉に痛みを感じていたという。都内の夫婦は「車から山を見たら、真っ赤な火が吹き出していて怖かった」と声を震わせた。

 1783(天明3)年の「天明の大噴火」で被災した同村鎌原地区では、5日に237回忌供養祭を開催したばかり。鎌原観音堂奉仕会の鎌原郷司会長(71)は「住民は小さい噴火に慣れていて心配している様子がなく、逆に怖い。規模の大きな噴火が起こらないことを願う」と話した。

 特産のキャベツの収穫が最盛期を迎える同村。JAの職員らは8日朝から、キャベツ畑で被害状況を調べた。目視や手で触るなどして降灰の有無を確認したところ、火口に近い地区で外葉にごくわずかな火山灰が見られたが、キャベツ本体への被害はなく、出荷への影響はないという。

 同村大笹の田村直行さん(67)は「灰が積もることなく、収穫に影響がなくて安心した」と話した。別の農家の女性(55)は「噴火の影響があると思われてしまう風評被害が一番怖い」と心配していた。

 レジャーや宿泊施設はキャンセルや営業停止などが相次いだ。火口4キロ圏内の同村鎌原の「アサマパークフィールド」は8日から営業を停止。18日までの宿泊客に連絡する予定だが、影響は約500組2000人に上るという。長野原町応桑の「軽井沢キャンプクレスト」は通常通り営業しているものの、客の約1割が予約を取り消した。

 嬬恋村田代の「嬬恋鹿沢キャンピングガーデン」は30件ほどキャンセルの連絡を受けた。担当者は「地元にいても報道で噴火を知ったほどで影響はほぼない。心配する声は多いが、極めて安全だということを知ってほしい」と強調した。

 浅間山周辺の自治体でつくる「浅間山火山防災協議会」は8日、同村内で会議を開いた。終了後、会長を務める熊川栄村長は「レジャーやキャベツ収穫の大事な時季なので、被害がなく安心している」と述べた。

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