山間部の文化財保護に難題 碓氷峠の鉄道遺産で被害相次ぐ
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 群馬県安中市の国指定重要文化財(重文)でれんが造りのトンネル「碓氷第17隧道ずいどう」の内壁に落書きが見つかってから、2カ月半が経過した。落書きはいたずらの域を超えており、安中署が文化財保護法違反の疑いで捜査している。碓氷峠の鉄道遺産は貴重な観光資源だが、2月には旧信越線のレールが切断される被害も確認されている。山間部にある鉄道遺産をどう守るのか。有効な手だてがなく、関係者が頭を悩ませている。

■見回り強化
 国道18号(旧道)沿いに位置する旧信越線のトンネル入り口で落書きが見つかったのは5月22日。ピンクや水色の塗料で、人の顔やアルファベットのような文字が描かれているのを通行人が発見した。市は7月下旬、修復を開始し、作業は現在も続いている。

 現場周辺では2月、1997年に廃線となった旧信越線で、レールが切断される被害が発生している。碓氷第三橋梁きょうりょう(通称・めがね橋)をはじめ、一帯の鉄道遺産を観光資源とする市が見回りの回数を増やし、防犯対策を講じているさなかだった。

 碓氷峠の鉄道遺産の維持、管理は長年、同市の懸案だった。93年に国重文に指定されためがね橋の橋脚も、名前や日付などのいたずら書きがあり、大半は重文指定前のものとみられるという。復元は難しく、修復作業は行われていない。

 文化庁によると、国重文の建造物に落書きをされたケースは2016年度に10件、17年度に8件、18年度に8件。塗料などを使った落書きのほとんどは消せるが、洗浄に特殊な溶剤を使い、慎重に作業しなければならない場合もあり、手間や費用がかかる。

■立ち入り禁止
 国重文の落書きを消すには文化庁に修理届を出し、許可を得る必要がある。市文化財保護課によると、碓氷第17隧道の被害の発見から修繕開始まで2カ月以上かかった。事件を受け、市は古くなっていたトンネルへの侵入を防ぐ柵を修復し、立ち入り禁止を告げる看板を新たに設置した。

 だが、完全な防犯対策とは言い切れない。同課の担当者は「今後は防犯カメラの設置なども検討する必要があると思うが、現段階では見回りを強化して警戒し続けるしかない」と話す。

 県文化財保護審議会副会長の村田敬一さんは「自分たちの生活に直結した近代化遺産が、一般の人に文化財として認識されていない」と指摘。その上で「行政は観光だけに目を向けるのではなく、文化財の価値を知ってもらうための取り組みや学校教育を展開していく必要がある」と強調する。(井部友太)

 碓氷第17隧道ずいどう 1893(明治26)年に開通した旧信越線の横川―軽井沢間のアプト式路線(1963年廃止)で使用されたトンネルの一つ。内部は立ち入り禁止になっている。昨年8月、国重文の「旧碓氷峠鉄道施設」に追加指定された。

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