《NEWSインサイド》一般病院のBCP 災害備え全国に遅れ
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 大規模災害時などに有効とされる事業継続計画(BCP)の策定が、群馬県内の病院で遅れている。17の災害拠点病院は策定済みだが、113ある一般病院の策定率は9.7%(11病院)と低調。国や県が策定を勧める一方で、災害発生直後を想定すると計画に盛り込むべき内容は多岐にわたるため、策定をためらう病院も少なくない。身近な地域で災害医療の機能維持に対策が求められている。

◎「必要性少ない」
 「明日、50人程度を転院させたい。引き受けてもらえないか」。県庁で4日に開かれた病院向けの策定セミナー。大地震を想定したワークショップで、災害拠点病院からの要請が示されると、参加者から戸惑いの声が上がった。

 一般病院の策定率は、全国の20.1%(昨年12月時点)の半分にとどまる。その背景を「災害が少なく、必要性を感じにくい」とみる病院関係者もいる。策定率は2016年度末から変わっていない状況だ。

 県内で策定が足踏みする間も全国で災害が相次ぐ。昨年7月の西日本豪雨で6府県の95医療機関が被災。今月の台風15号で強風が襲った千葉県では、多くの医療機関が停電や断水の影響を受けている。

 昨年9月の北海道の大地震では、道内全域停電のために人工透析が一部で行えず、電子カルテなどの院内システムが稼働しない事例もあった。非常時に住民の命と健康を守る態勢を整え、地域医療の役割を果たすことがBCP策定の意義とされる。

◎23年度に50%
 策定の遅れには、人手やノウハウの不足に加え病院特有の事情もあるようだ。本県などで策定を支援する東京海上日動火災保険(東京)の園田浩嘉さんは「災害発生直後に重症者が殺到するなどして、企業に比べて業務量が数倍になる」と説明。策定予定がないという病院の担当者は「相当膨大な業務量になり、時間も労力もかかる。それを考えるだけで難しい」と話す。

 策定に取り掛かった場合でも、業務の優先順位を付けたい事務部門と、普段に近い診療を目指そうとする医師らの間で調整がつかないケースもあるという。園田さんは「医療部門をどれだけ巻き込めるかが重要。病院トップのリーダーシップも必要だ」と指摘する。

 災害対策マニュアルを発展させる進め方も有効とされ、黒沢病院(高崎市)は本年度中の策定を目指す。同病院の現行マニュアルでは具体的な被害想定は盛り込んでおらず、定めた対応も発生初期に限られるという。担当者は「精度を高めなければ今のマニュアルでは対応できない」と見通す。千葉県の台風被害でも危機感を強めたという。

 県は一般病院の策定率を23年度に50%とするのが目標で、セミナーや各地での災害医療訓練を通じて向上させる考えだ。各地の災害を踏まえ、県医務課は「一般病院でもBCPの重要性は増している。さらにきめ細かい支援を検討する」としている。

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