《八ツ場新時代》観光拠点 ダムをチャンスに
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県内外からの観光客でにぎわう道の駅「八ツ場ふるさと館」

 「とにかく広い。これほどの場所が水に漬かるとは信じられない」。5月下旬の週末、湛水たんすい予定地に架かる不動大橋を訪れた都内の男性会社員(28)は、橋からの眺望に感嘆の声を上げた。周囲は緑の山に囲まれ、眼下ではショベルカーやトラックが慌ただしく動いていた。

◎道の駅来場 推計100万人
 2009年の政権交代で八ツ場ダムの建設中止が表明された際、建設中の姿が十字架のようだと注目された不動大橋。政治に振り回された八ツ場地域の象徴となったこの橋は、ダム完成を間近に控え、観光客でにぎわうスポットとなっている。

 国道145号沿いで橋のたもとに位置する道の駅「八ツ場ふるさと館」(長野原町林)は現在、八ツ場地域の観光の中核を担う存在だ。練馬、新潟、長野、とちぎ、大宮。週末は県外ナンバーが目立ち、186台分の駐車場はたびたび満車となる。

 付近の交通量が少なく、オープン当初は地域住民に経営を危惧された。しかし、ダム完成が迫るにつれて客が増え、売り上げは右肩上がりに。13年度の約2億7500万円から昨年度は約4億700万円にまで増加した。被雇用者はパートを含めて44人と倍近く増え、今年は3人の新入社員を迎えた。レジ通過客は年間約50万人で、来場者は100万人を超えると推計される。

 道の駅の一角にあるコンビニエンスストアは、地元産の花豆を使った花豆パンや八ツ場ダムカレーパンなどのパンの品ぞろえが充実。直売スペースは地域の高原野菜が手頃な価格で並び、9月にはダム堤体を模した新メニューとして、嬬恋村産キャベツを使ったお好み焼き風の「ダム焼き」を発売した。無料の足湯は旅の疲れを癒やすと人気だ。

◎文化財施設 公園を整備
 道の駅周辺では、複数の開発事業が進行している。道路を挟んだ向かいには農産物加工施設、その隣には幅広の滑り台や水遊び場を備えた広大な水辺公園が本年度中に出来上がり、遊歩道で道の駅とつながる予定だ。水辺公園の隣には、浅間山の天明泥流の展示をメインにした水没文化財保存センターが来年度に完成する。

 道の駅の社長を務める篠原茂さん(68)は、地元の林地区出身。住民がダムによって引き裂かれた負の歴史を肌で感じながら育った。今も複雑な思いは残るが、「これからはダムをチャンスにしないといけない」と力を込める。「ここら辺一帯はもっとにぎわいを創出できる可能性を秘めている。好機をどう生かすか、重要なのはこれから」。さらなる商品開発や周囲の新たな施設との連携など、課題を一つ一つ乗り越えた先の明るい未来を思い描いている。

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