豚コレラの感染確定 県内で捕獲の野生イノシシ2頭から
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立ち入り検査に向け、出発の準備をする群馬県職員=4日午前10時55分ごろ、県西部農業事務所家畜保健衛生課

 農林水産省と群馬県は4日、藤岡市と上野村で捕獲された野生イノシシ2頭を検査した結果、とんコレラへの感染が確定したと発表した。県は捕獲地点からそれぞれ半径10キロ圏内にある13の養豚場を「監視対象農場」に指定し、豚に異常がないかなどを確認する立ち入り検査を実施した。昨年9月の岐阜県での発生以降、感染拡大が続く豚コレラが全国4位の養豚県である県内で確認されたことを受け、県は飼育豚への感染防止に全力を注ぐ。

 

◎ワクチン推奨地域に 知事「リスクを少しでも減らす」

 農水省は今後、有識者の意見も踏まえた上で、豚コレラ対策として豚へのワクチン接種を実施する「推奨地域」に群馬県も加える方針。臨時会見を開いた山本一太知事は「感染が確認され、新しいステージに入った。100%の対策はないが、リスクを少しでも減らすことを積み重ねていく」と県民に呼び掛けた。

 発表によると、国が実施した遺伝子解析の結果、9月26日に上野村新羽で捕獲したメスの幼獣と、28日に藤岡市高山で捕獲したメスの成獣への感染を確認した。豚コレラの感染は、昨年9月に国内で26年ぶりに確認されて以来、本県では初めてで、全国では10県目。上野村で捕獲した個体は感染初期とみられ、抗体検査では陰性だったが遺伝子検査で陽性となった。県は今月から、抗体検査で陰性の個体にも遺伝子検査を行う二重の検査を実施していた。

 4日早朝に県の遺伝子検査で2頭の陽性が確認されたことを受け、県は同日午前、国の検査の確定を待たずに前倒しで立ち入り検査を開始した。半径10キロ圏内には高崎、藤岡、上野、甘楽の4市町村に計13養豚場があり、約7900頭が飼育されている。

 県職員は各養豚場で、衛生管理が適正に行われているかや豚の体調、出荷計画などを確認した。同日の検査では養豚場の豚に異常はみられなかった。監視対象農場となっても出荷制限はないが、各養豚場には今後、出荷時の全頭の検温や、県に対して豚の健康状態を毎日報告することなどが義務付けられる。

 県は県内の全養豚農家に対し、衛生管理基準の徹底や野生鳥獣の進入防止措置などを改めて呼び掛けた。早期実施を目指す野生イノシシへの経口ワクチンの散布箇所や方法については、感染が確認された状況を踏まえて再検討する。

 県は本年度、9月末までに捕獲した野生イノシシ210頭の抗体検査を実施し、全てで陰性を確認していた。

◎◎「早期にワクチンをしていれば」関係者から悲痛の訴え

 藤岡市と上野村で捕獲された野生のイノシシ計2頭で豚コレラの感染が確認された4日、県内の養豚関係者に衝撃が広がった。恐れていた県内での発生に危機感を強め、感染を防ぐため飼育する豚へのワクチン接種の早期実施を求める声が強まっている。「豚に感染すれば壊滅的」「農家ももう限界」。ワクチン使用をためらってきた国の姿勢に対する不満も噴出した。

 藤岡市と高崎市吉井町の養豚農家7軒でつくる多野藤岡養豚連絡協議会の堀越勝徳会長(41)は「この先どうなるのか分からない。みんな不安な気持ちでいる」と打ち明ける。自身も藤岡市で約900頭を飼育する。仮に農場の豚が感染すれば、全頭処分を余儀なくされる。「早期のワクチン接種をお願いしたい。豚の命を奪われるのは経営だけでなく、人生を奪われることに等しい」と焦りをにじませた。

 同市で約2500頭を飼育する男性は「こうなることは最初から予想できたからワクチン接種を要請しているのに…」とこぼす。

 上野村の養豚施設を管理運営するJA上野村は隣接する長野県などでの豚コレラの発生を受け、9月中旬には高さ2メートルほどの鉄板をはめた野生生物侵入防止柵を整備した。餌の運搬などで出入りする車両の消毒や周辺への石灰散布も行ってきた。担当者は「今後も対策を強化するしかない」と硬い表情だった。

 全国有数の養豚地域の前橋市などにも危機感が強まっている。同市で約2000頭を飼育する男性は「埼玉や長野まで来ていれば、県内でも年内には感染が確認されるとは思っていたが、予想以上に拡大が早い」と驚きを隠せない。ワクチン接種以外に有効な対策はないとして、「豚が感染すれば風評被害どころではなく、養豚は壊滅的。国の対応は遅い。一日も早い接種へ迅速に動いてほしい」と要望した。

 渋川市のJA関係者も「埼玉で発生した時に、これはまずいと思った。進入防止柵を早急に設置したい」、「農家ももう限界。一刻も早くワクチンを接種してほしい」などと悲痛な声を上げている。

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