豚コレラワクチン 藤岡で5200頭接種 「国の判断 遅すぎる」声も
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豚コレラワクチン接種の作業を進める獣医師=藤岡市(県提供)

 とんコレラ感染予防のための豚へのワクチン接種が27日、群馬県内で始まった。初日は藤岡市内にある6カ所の養豚場の計約5200頭が対象となった。群馬県は来年2月末までに、県内の268農場で飼育する約60万頭への接種を終了させる方針。当面は野生イノシシへの豚コレラ感染が確認された場所から一定範囲内にある監視対象農場で、優先的に接種を行っていく。県は全国4位の「養豚県」として、飼育豚への感染防止に全力を注ぐ。

◎養豚県の危機 消毒徹底で乗り切る方針
 県家畜防疫対策室によると、27日は午前10時~午後3時半にかけ、獣医師15人が5班態勢(1班3人)で作業に当たった。一部農場では、地元農協の職員が補助作業に加わったという。初日に実施した概要の説明とともに、県が25日に国から34万2000頭分のワクチンを受け取っていたことを明らかにした。

 接種作業の開始を受け、山本一太知事は上毛新聞の取材に「ひとまず接種が始まったことは良かったが、危険が去ったわけではない。オール群馬でこの危機を乗り切っていきたい」と述べ、各農場での消毒徹底を継続する必要があるとの認識を示した。

 ワクチン接種を巡り、農林水産省は防疫指針を改定し、飼育豚や野生イノシシへの感染が確認された11県を「推奨地域」に選定した。このうち富山、石川、福井、岐阜、愛知、三重の6県では25日から作業を開始している。

 初回接種の対象が富山の約3万頭、石川の約2万1000頭、福井の約1700頭などと比べ、群馬県は格段に多い。ワクチン接種を獣医師が担うことから、県内では人手不足が懸念される。県によると、約150人の県職員(嘱託などを含む)が獣医師資格を持っているが、作業に専念できる職員は限られる。現状を踏まえ、県は県獣医師会に協力を要請している。

 昨年9月に岐阜市の養豚場で国内26年ぶりの発生が判明してから感染拡大が止まらず、国は2006年4月に中止したワクチン使用に踏み切った。一連の豚コレラで最初の感染確認から2年となる20年9月に、国際獣疫事務局(OIE)が認定する「清浄国」ではなくなることが事実上確定した。

 農水省はこれまで、非清浄国となれば輸出入に影響するなどとして接種に消極的だった。その間、感染は岐阜や愛知から北陸、関東に広がり、これまでに計14万頭超が殺処分された。

◎「まだ終わらない」感染への不安残る 監視外は時期未定
 豚コレラ感染予防のため、飼育豚へのワクチン接種が藤岡市内の農場で始まった27日、県内の養豚農家は感染への不安を拭えず、「まだ安心できない」との声が多数を占めた。これまで国がワクチン使用をためらい、対応が後手に回ったことへの不満は根強く、「判断が遅すぎる」と嘆く農家もいた。

 多野藤岡養豚連絡協議会の堀越勝徳会長(41)=藤岡市=はこの日、飼育豚のワクチン接種を受けた。感染リスクは軽減したが、野生イノシシへの感染が終息していない現状を警戒。「一歩前進だが、まだこれで終わりではない。今後もワクチンは打ち続ける必要がある」とし、防疫体制を維持する考えだ。ワクチン接種のめどが立ったという富岡市の70代男性は「接種をありがたく思うが、安心できない」と話した。

 これまでワクチン使用をためらってきた国の姿勢に対する不満は根強い。藤岡市で約2500頭を飼育する40代男性は「県や市の対応には感謝している。ただ、国の判断が遅すぎる。全頭処分となった他県の農家のことを思うと手放しでは喜べない」と打ち明けた。

 桐生市で約800頭を飼育する50代男性は「あまりにも遅い」とあきれたように語った。県内のワクチン接種は決まったものの、監視対象農場を除いてはまだ接種時期が示されていないという。「現在はイノシシの繁殖期で移動も活発。豚コレラがいつ入ってくるか分からない」と不安を募らせる。

 前橋市で約2000頭を飼う60代男性は「接種が始まったことは歓迎するが、もっとスピード感を持って進められないものか」と注文を付けた。県は来年2月末までに完了させる方針を示しているが、「2月までに新たな感染が出れば大打撃になりかねない。一刻も早く接種してもらいたい」と危機感をあらわにした。

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