生活再建「降雪の前に」 台風19号から1カ月 今なお残る爪痕
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
嬬恋村大笹の国道144号は吾妻川に崩落した。現在も復旧の見通しは立っていない=11月8日
土砂や倒木が線路に流入したまま復旧が進まないJR吾妻線=8日、嬬恋村

 群馬県内に甚大な被害をもたらした台風19号の接近から12日で1カ月。各地で復旧作業が進められるが、今なお爪痕が深く残る。富岡市で現在も4世帯11人が避難所での生活を余儀なくされるなど生活再建への道のりは険しい。

◎嬬恋の橋 ひしゃげたまま残る
 「今は何も考えられない」。吾妻川の増水で家屋流失などの被害が出た嬬恋村田代地区。土砂が流れ込み、住めなくなってしまった家の周りを一人で掃除していた女性は、力なくうつむいた。周囲には基礎がむき出しになり、玄関が宙に浮いた住宅もある。

 村の中心部を走る国道144号が複数箇所で崩落。落橋した鳴岩橋は1カ月たった今も大きくひしゃげたまま残り、台風の猛威を物語る。同地区の中村広区長は「片付けもようやく落ち着いてきたが、復興はここからがスタート。雪が降る前に少しでも作業を進めてほしい」と話す。

 土砂崩れで3人が亡くなった富岡市内匠。全壊した住宅近くでは今も、業者が重機で土砂を運び出す作業に追われる。土のうが積み重ねられた現場には、崩れ落ちた墓石が散乱する。

 復旧を請け負う業者に勤める荻原大器さん(22)は自宅が被災し、長く家族で避難所に身を寄せた。自宅の修理には当面手が付かない。「同僚や仲間の支えに本当に感謝している。こんなこともあったね、なんて言える時がきっと来る。そこまで頑張らないと」と話した。

 太田市では浸水被害が300件を超えた。利根川に近い同市古戸町の泉福寺は床上20センチほどまで浸水した。畳を全て搬出した本堂の床は今も木の構造材がむき出しのまま。廊下は土ぼこりでくすみ、柱やふすまに水染みが残る。

 田辺明文住職は「できれば春までに元に戻したいが……」と気をもむ。9日には法事があった。「椅子を並べ、スリッパ持参をお願いした」と申し訳なさそうにつぶやいた。

 藤岡市上日野では、土砂崩れにより男性1人が亡くなった。現場の住宅は現在も大木が撤去されずに覆いかぶさったまま。親族の1人は「せめてきれいにしてあげたいが、費用もかかり、なかなか進まない」と胸の内を明かした。

◎鉄道の不通続く 農林漁業にも影
 台風19号では鉄道や農林漁業にも被害が出た。復旧に時間がかかり、今なお県民生活に影を落とす。

 JR吾妻線では長野原草津口―大前間で線路に土砂が流入し、擁壁が倒壊。復旧作業は進まず、運転再開が見通せない。浅間山北麓ジオパークのガイド、土屋茂次さん(69)は「通学や観光を担う吾妻線は村の生命線」と復旧を切望する。

 JR八高線は神流川の増水で橋の橋脚が傾き、北藤岡―寄居間で不通が続く。JR東日本高崎支社によると復旧は今月下旬の予定。岩舟―栃木間で運転を見合わせていたJR両毛線は11日、全線で運転を再開した。

 伊勢崎市では野菜栽培が被害を受けた。チヂミホウレンソウ農家の同市境上武士の男性(65)は「大雨で土が硬くなり、根腐れの恐れもある」と不安そうだ。養殖するヤマメなど計約2600匹が被害に遭った桐生市の養殖業の女性(46)は「補償も考えてほしい」と訴える。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事