群馬の食用コイ 生産量激減 社会の変化大きく後継者不足も影響
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県内で生産量が減少している食用コイの養殖場。後継者がいない業者が増えている
 

 冬季に脂が乗る食用コイの生産量が群馬県内で減少している。全国有数の産地であるものの、2018年の生産量はピーク時の1970年代後半と比べて27分の1にまで落ち込んだ。群馬県を支えた製糸業とともに発展してきた養鯉業は、消費の低迷や後継者不足などの影響で携わる人が少なくなっている。苦しい実情を嘆く声も上がる中で、関係者は「食文化を残したい」と再興を目指し前を向く。

◎社会の影響大きく 重労働も負担に
 県内での食用コイの養殖は明治時代以降、製糸業とともに盛んになった。化学飼料が一般的になるまでは、栄養豊富なカイコのさなぎを餌に使った。県が県民から募って作成した県産食材のリスト「ぐんま食材セレクション100」に選ばれるなど、身近な食文化としても親しまれてきた。

 だが製糸業の衰退や食生活の変化に伴い全国的に消費量、生産量がいずれも減少。生産量はピークだった1978年の3987トンから2018年には149トンまで減った。コイヘルペスの影響も大きく、農林水産省が18年に実施した調査によると、県内で養鯉業を営むのはわずか9戸だった。

 県養鯉振興会長を務める元川養魚場(高崎市)の佐々木光平さんは「消費が減っているだけでなく、重労働でコストがかかる。多くの業者に後継ぎがいない。世の中の流れなのかな」と話す。自身も後継者に託すつもりはないという。

◎食文化の継承を 県外の生産地でも取り組み進む
 ただ食文化が途絶えてしまったわけではない。「遠くからコイ料理を食べに来るお客さんもいる」と話すのはあづま養魚場(東吾妻町)の池田克彦さん。県内の業者から仕入れ、食堂でこいこくや洗いを提供している。川魚文化が根付く館林や邑楽といった地域ではウナギなどと一緒にメニューに並ぶ。

 県外では郷土食としてPRする自治体もある。市町村別生産量が全国有数の福島県郡山市は「鯉に恋するプロジェクト」を展開。コイを使ったメニューを提供する飲食店はここ4年で3店舗から90店舗ほどに増えた。市の担当者は「コイのおいしさを多くの人に知ってもらえ、東日本大震災の風評で減った生産量も増えている」と手応えを話す。

 コイはビタミンを豊富に含み、おいしいだけでなく栄養価も高いとされる。群馬の食文化研究会の森村孝利理事長は「地域の食文化が失われてしまうのは残念。次世代につないでいく必要がある」と訴える。

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