「やり切った」100年の愛顧に感謝 南牧唯一のうどん店30日閉店
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人気の「ナベやきうどん」を手に常連客と笑顔で接する井上さん

 群馬県南牧村で唯一のうどん店「井上うどん店」(同村大日向)が30日に閉店し、約100年の歴史に幕を下ろす。創業から一貫して手打ちにこだわり、住民や観光客から長年愛されてきた。4代目の井上倍夫ますおさん(51)が過労で膝を痛めたことなどから、閉店を決めた。「長い間、本当にお世話になり感謝している」と話している。

◎柔らかめな麺「ナベやきうどん」が一番人気
 うどん店の創業は1920年ごろ。それ以前は井上商店として酒や雑貨、菓子などを扱ってきたが、井上さんの曽祖母、すてさんが店を始めた。「おすてうどん」の愛称で評判を呼んだという。

 現在は15種類ほどのメニューがあり、一番人気は地元産のネギやこんにゃくをはじめ、天ぷら、豚肉、卵などが入った具だくさんの「ナベやきうどん」。味が染み込みやすいように麺は軟らかめで、適度なこしを残すのが特徴だ。

 常連客で同村出身の男性(81)=富岡市=は「子どもの頃から食べてきた。麺もつゆの味もちょうど良く、値段も手頃。(閉店は)もったいない」と惜しむ。

 井上さんは都内で会社員として勤務後、24歳でUターンし家業を手伝い始めた。今年1月、3代目の文夫さん(79)から経営を引き継ぎ、現在は文夫さん、妻の久美子さん(52)と3人で切り盛りする。店舗での営業のほか、出前や宴会、仕出し料理など幅広く対応してきた。

 これまで業者から機械の導入を勧められたこともあったが、伝統の手打ち一筋でやってきた。店は午前11時半~午後7時まで通しで営業し、閉店後は翌日の仕込みの準備に追われる。立ち仕事は一日12時間以上。繁忙期には徹夜で麺を打つこともあった。

 多忙による過労から井上さんは昨年、膝が曲がらなくなり、今もリハビリのために通院している。健康面などを考え、閉店を決めた。今月初めから店の扉に紙を貼って閉店を知らせると、「さみしくなるね」「やめないでほしかった」などと声を掛けられ、涙を流す人もいたという。

 井上さんは「力及ばず閉店となったが、やり切ったという思いがある。(前向きに)新たな生活を楽しみにしたい」と穏やかに話している。

 閉店までは23日のみ休みとなる。

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