外国人向けの医療通訳 病院の費用負担で利用半減 問われる制度
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 ボランティア頼みになっている医療通訳の仕組みに黄色信号がともっている。群馬県やNPOでつくる運営委員会が本年度、安定運用を目指して必要な費用の一部負担を医療機関に求めたところ、11月末までの利用が半減。一部機関は翻訳機を使うが、通訳を代替できるか未知数で、関係者の危機感は強い。外国人の受け入れが進む中、命に関わる制度の費用を誰が負担するのか。国や県、関係機関が一体となった持続可能な制度の早期整備が求められている。

◎ボランティア頼みも限界に 不足する言語も
 本年度、医療通訳ボランティアを利用するため、運営委と協力関係を結んだ医療機関は昨年同期の39から23へ41%減、通訳派遣回数は204から93へと54%も減った。

 2017年度62回、18年度30回利用した群馬大医学部附属病院は本年度、派遣を受けていない。「負担金の支払いが必要になったことや、ボランティアから『待ち時間を少なくしてほしい』などの要望が多いこと」を理由に挙げる。代わりに民間開発の翻訳機を使っているという。

 昨年度までは、交通費などボランティアに払う派遣費用1回3000円のうち、2000円を「医療機関または患者」が、1000円を運営委が払うことになっていた。実際には2000円は、公的保険の診療報酬に計上できないことから、多くのケースで患者が全額負担していた。

 仕組みを安定させたい運営委は本年度、受益者でもある医療機関に対し、昨年度までの2000円に加えてさらに2000円を負担してもらった上、年間を通じた一定の負担金の支払いを求めたところ、利用をやめる機関が続出した。

 一方で、負担増を「持続可能な運営のために必要」と受け止める病院もある。昨年度28回派遣を受けた伊勢崎市民病院は「市内には多くの外国人居住者がいる」ことを理由に本年度も継続する。昨年度65回の前橋赤十字病院は「目の前に座って通訳してくれることに安心感がある」と通訳の必要性を指摘する。

 県内の医療通訳ボランティア登録者数は170人だが、実際に稼働しているのは数十人だ。県外国人活躍推進課によるとベトナムなどアジア言語の通訳者が特に不足しているという。

 こうした状況に、医療通訳ボランティアの仕組みを県と運営するNPO法人群馬の医療と言語・文化を考える会(前橋市)は「現状でもボランティアや運営の負担が大きく限界。しかも、4月の入管難民法改正で外国人の受け入れが進む」と危機感を募らせる。誰が費用を負担するか合意形成のための県と医療機関との話し合いと、国や県主導の医療通訳制度の整備を求めている。

 医療通訳ボランティア 一般の人が登録し、診察時などの通訳を担う。2016年度まで県が直営。17年度はNPO法人群馬の医療と言語・文化を考える会(MIG)に運営委託し、18年度から県、県観光物産国際協会、MIGで構成する運営委員会制に変わった。神奈川県などでも運用されている。

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