製糸の原点・上州座繰り 存続奮闘も担い手激減で存続ピンチ
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座繰りのワークショップで参加者に指導する東さん(右)=安中市のton-cara

 群馬県の伝統的な製糸技法である上州座繰りの担い手が激減し、関係者が危機感を強めている。専業で生産していた前橋市の工房が昨夏、原料繭の高騰などを理由に稼働を停止した。座繰りは、器械製糸を導入した世界文化遺産の富岡製糸場につながる製糸業の原点。現在、県内で本業として担うのは女性2人のみとみられ、繭から生産したり座繰りの魅力を広めたりして、伝統を絶やすまいと奮闘している。

◎場所も道具もあるのに 技術の継承どうする
 上州座繰りは、大小の歯車を組み合わせた木製の器械を手で回し、繭から糸を引く技法。速度がゆっくりなので糸に空気が入り、節のある個性的な糸ができる。特に、引き手の女性が数多くいた赤城山周辺では「赤城の節糸」と呼ばれ、近年は価値が見直されていた。

 自宅で糸を引く女性の高齢化を受け、繭糸商の石田明雄さん(72)は2004年、同市富士見町に赤城座繰り工房を設立。女性4人が作業していたが、近年は繭価格が上がって採算が取れなくなり、昨年夏ごろに稼働を停止した。石田さんは「工房には道具一式が残っているのでもったいない。誰か使ってくれる人がいれば…」と話す。

 新潟県十日町市の織物業、小杉健一さん(44)は同工房の糸を着物に使い、「赤城つむぎ」と銘打って販売している。「座繰り糸は丈夫なのに軽く、染料が浸透しやすい。まだ糸の在庫はあるが、できれば使い続けたいのでほかの入手先を探している」という。

 安中市に座繰り工房「蚕絲館」を構える東宣江さん(44)は07年から養蚕に取り組み、すべて自家製の繭から製糸している。市内の体験施設「ton-cara(トンカラ)」が月4回開く座繰りのワークショップで技法を指導。「座繰りを商売として成り立たせるのは難しいが、始めるのにコストがかからず、自分でいろんな糸を作り出せる」と魅力を語った。

 自ら引いた糸を染織し、製品化している高崎市の中野紘子さん(42)は「時代に合ったものづくりをしていかないと、座繰りを含む絹文化は残せない」と強調する。主宰する工房「canoan(カノアン)」でストールやバッグを作って富岡製糸場などで販売するほか、月6回のワークショップを開く。「着物離れが進む中で、養蚕、製糸、織物に携わる人たちが協力して知恵を出し合うことが大事」とした。

 担い手減少について、県蚕糸園芸課は「上州座繰りは群馬の伝統技術であり、途絶えさせてはいけない。今後、需要に応じて後継者育成などを考えたい」としている。

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