女子高生死傷事故 被告に無罪判決 前橋地裁 予見「認められず」
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前橋地裁

 前橋市北代田町の県道で2018年1月、乗用車で女子高校生2人をはねて死傷させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた男(87)=同市=の判決公判が5日、前橋地裁で開かれた。国井恒志裁判長は「(事故前に陥った意識障害の)予見可能性は認められず、運転を避ける義務を負わせることはできない」として無罪(求刑・禁錮4年6月)を言い渡した。

◎禁錮4年6月の求刑に対し地裁判断
 国井裁判長は遅くとも16年7月以降、被告に低血圧やめまいの症状があったと認めつつ、「めまいの原因が低血圧であることを示す医学的根拠は見当たらない」と指摘。慢性的な低血圧によって意識障害が生じた事実はなく、医師からの指示も生活上の指導にとどまっており、検察側の「医師が意識障害を生じる恐れから運転しないように注意していた」などとする訴えは認められないとした。

 また、今回の事故につながった意識障害については、服用していた排尿障害の薬の副作用による急激な血圧低下が原因となった可能性があると説明。被告が医師から服用により血圧が下がるといった副作用が生じることについて説明を受けた証拠はなく、「意識障害が生じることを予見することはできなかった」と結論付けた。

 事故は18年1月9日朝に発生。男は乗用車を運転中、急激な血圧変動などで意識障害に陥り、対向車線の路側帯を自転車で走っていた市立前橋高1年の女子生徒=当時(16)=と同校3年だった少女=同(18)=をはね、女子生徒は死亡し、少女は脳挫傷などの大けがを負った。

 判決後、女子生徒の両親は「大切な娘の命を奪ったのに、なんの罪にも問われないことに大変驚き、落胆している」とコメントを寄せた。前橋地検の上本哲司次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とした。

 被告の弁護人は「難しく複雑な事件で、裁判所がこのような判断をしたことに敬意を表したい」と話した。

◎関係者 複雑な胸の内 被告の親族「無罪はあり得ない」
 前橋市で登校中の女子高校生2人が乗用車にはねられ死傷した事故から2年余り。前橋地裁が5日、運転していた男に言い渡した判決は無罪だった。犠牲になった市立前橋高1年の女子生徒の遺族は「頭が真っ白になった」。傍聴した関係者は予想もしなかった判決に複雑な胸の内を明かした。

 「無罪とする」。国井恒志裁判長が車いすの被告にこう告げると、傍聴席はしんと静まり返った。その後、30分余りにわたって判決理由が読み上げられる間、遺族らの関係者席にはハンカチで涙をぬぐい続ける女性や、両肩を震わせる男性の姿があった。

 「人を殺して無罪なのか!」。読み上げ後、傍聴席から突然大きな声が上がった。「静かに願います」と制止した国井裁判長は「事故が起きたのは事実。ただ、被告個人の責任であるというのは真相ではない」とし、「同じ悲劇を繰り返さないための無罪判決です」と声を詰まらせながら締めくくった。

 判決後、被告の親族は「無罪はあり得ないと思う。被害者の方には申し訳ないの一言。親御さんの気持ちを思えば許せないと思う」と神妙に話した。

 傍聴した同校の天野正明校長は、裁判所の判断を尊重した上で「遺族や周囲の人の気持ちを考えるとつらく、やりきれない。何の落ち度もない本校の生徒が犠牲になったのは事実で、悲惨な事故が二度と起こらないようにしたい」と述べた。

 事故現場となった県道前橋赤城線では現在、道路を広げる拡幅工事計画が始まり、ガードレールを増やすなど再発防止に向けた取り組みが進められている。

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