台風19号から半年 復旧進むも…新型コロナ感染が新たな不安に
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男女3人が死亡した土砂崩れの現場には、花が添えられていた=7日、富岡市内匠
復旧工事が進む国道144号鳴岩橋=10日、嬬恋村大笹

 群馬県内で4人の犠牲者が出た昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)の再接近から、半年が経過した。被災した道路や河川などでは復旧工事が着々と進められ、災害時の被害軽減に向けた対策の検討も各地で始まっている。

◎群馬県内の被害額は238億円
 国の災害査定の結果、県内の土木施設の被害は計703カ所、被害総額は約238億3100万円と確定した。過去最大とされる1982年の台風10号での被害245億円に迫る規模となった。

 犠牲者の出た藤岡、富岡両市の土砂災害の現場では応急工事が進み、その後の対策工事も本年度中に完了する見通し。嬬恋村では、橋が崩落するなどした国道144号の復旧を国が代行し、5月中にも仮橋の供用開始が見込まれる。

 一方、ソフト面の対策の充実は喫緊の課題。豪雨災害などの際には逃げ遅れることなく、自らの安全を確保するための行動が求められる。県を中心に、住民の啓発をはじめ、被害の軽減や防止に向けた施策の検討が進められている。

◎日常生活 なお遠く 「置き去りにされるのでは…」
 県内で4人が死亡するなどした昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)の被害から半年を迎えた。3人が犠牲となった富岡市内匠地区の土砂崩れで自宅を失った被災者は、今なお市所有のアパートに身を寄せたまま。安中市では孤立状態だった温泉旅館が再開し、嬬恋村では崩落した橋の復旧工事が本格化する。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大で、復旧が遅れたり経営再建が遠のいたりするのではとの不安も抱く。

 「不便はないけど、何となく居心地が悪い」。土砂崩れで自宅を失い、昨年12月から家族4人と共に富岡市所有のアパートで暮らす荻原大器さん(23)は現状をこう話す。

 「家と車、終わった」。昨年10月12日午後4時半ごろ、電話口の向こうで父親が力なく語った。避難所となった富岡実業高の体育館で一夜を明かし、翌朝、自宅を見に行った。車が寝室に突っ込み、丘陵地にあった墓石が庭に転がっていた。「映画のワンシーンみたいだった」

 近くにある井戸沢集会所での避難生活は約1カ月半に及んだ。床に敷いた段ボールの上では1日2時間寝られれば良い方だった。風呂は友達の家や近所のジムなどを借り、毎日は入れなかった。

 それでも「起きたことは仕方ない」と受け止めた。仕事の合間に友達とのサッカーや筋トレなどで気分転換し、乗り切ってきた。

 ただ、ここに来て新たに不安が生まれた。感染拡大が続く新型コロナウイルスだ。荻原さんは「市からは『自宅周辺の復旧完了は来年7月ごろ』と言われているが、こんな状況で予定通り進むのだろうか」と胸の内を明かす。

 新型コロナ対策に社会の関心が集まり、政策の優先順位が変わることで、「復旧が忘れられ、被災者が置き去りにされるのではないか」と心配する。被災後に外出しなくなった祖母をはじめ、家族の健康も気遣いながら、日常生活を一刻も早く取り戻せるよう願っている。

 安中市の温泉旅館「金湯館」は台風で崩落した県道が2月に復旧し、本格的に宿泊客を受け入れられるようになったばかりのところを新型コロナの影響に見舞われた。繁忙期のはずの大型連休も予約はまばら。おかみの佐藤知美さん(49)は「これから頑張ろうという時だったのに。台風の後、先行きが見えなかった時の不安を思い出す」と話す。

◎鉄道や道路 復旧進む 嬬恋の鳴岩橋など
 台風19号により道路や家屋の崩壊など甚大な被害を受けた嬬恋村。半年がたった今も、むき出しになった斜面や川沿いに横たわる巨大な流木など爪痕が残る。一方、崩落した国道144号鳴岩橋の復旧工事が本格化し、2月には一部不通が続いたJR吾妻線が全線で運転を再開するなど復旧に向けて動きだしている。

 鳴岩橋の復旧現場では仮設の橋を架ける迂回うかい路整備が進められ、工事車両がせわしなく動く。崩落した橋の一部が残る一方、新たな橋が姿を見せ始めている。

 国土交通省関東地方整備局高崎河川国道事務所によると、橋の設置工事は現在約7割ほどの進捗しんちょくで、今年の梅雨前の完成を目指しているという。

 住宅地を流れる吾妻川が増水し、土砂の流入などで住宅十数戸に大きな被害が出た田代地区では、土砂の撤去がほぼ完了し、川に流された橋や崩落した道路などが整備された。3月まで同地区の区長を務めた中村広さん(59)は「道路などは被害の範囲が広いので、元通りになるまでには何年もかかると思うが、復旧に向けて目に見える形で動きだしてきた」と話した。

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