《コロナ現場発》人工心肺装置有効も懸念 臨床工学技士に聞く
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男性の勤務先で実際に使われているエクモ

 新型コロナウイルス感染症で重篤な肺炎になった患者に用いる人工心肺装置、エクモ。群馬県内の医療機関で処置に携わる臨床工学技士の男性が上毛新聞の取材に応じ、「有効な手法だが、患者が増えれば使える人が限られる可能性がある」と指摘し、運用に関わるスタッフの防護具などが枯渇しつつあると切迫した状況を訴えた。

 2月、県外の病院から同感染症の患者が運び込まれた。人工呼吸器を使っていたが、病状が悪化。転院の際は専任職員が現地へ出向いて体にエクモを接続し、専用車両で搬送した。

■24時間体制
 患者は血液の凝固を制御できない障害や脳の出血があった。医師と看護師、臨床工学技士が24時間体制で慎重に管理し、新しい機器に3度替えた。それでも出血合併症が起きた。エクモの使用は17日に及んだ。

 「薬剤の調整と合併症に難渋した。人員が整っていたからこそチームプレーで何とか対応できた」と男性。やがて人工呼吸器も外し、転院から45日後に他院へ移ることができた。

 県内の病院から移ってきた別の患者は呼吸機能が一時急激に落ちたが、エクモを7日間使い、33日後には退院するまでに回復した。

 関係学会の調査によると、同感染症でエクモを使った患者は20日時点で全国に90人。治療を終えた35人が回復した一方、17人が死亡した。

 男性は「エクモは非常に有効だが、機器も人手も有限。特に今はそこが重要」と指摘する。エクモの運用には労力がかかる。その上に同感染症の予防策を講じなければならない。基礎疾患や高齢などで肺の回復が見込めなければ、そもそも使用できない場合もある。

 日本臨床工学技士会の調査では、2月時点で県内14施設に計31台のエクモがある。心臓を補助するための使用例が多く、肺疾患での経験が豊富な病院は限られる。男性の職場では同時に4人に処置できるが、他の疾病の患者も使うため全てを同感染症に振り向けるのは現実的ではない。

■体制の増強困難
 患者が急増しても、すぐに体制を増強するのは難しいという。機器は1台約1200万円。加えてエクモを熟知した医師、看護師、臨床工学技士らの人材がそろわないと運用できない。医療現場では同感染症への対応が通常診療を圧迫しつつある。男性は「医療崩壊を防ぐため、今はぜひ外出自粛をお願いしたい」と力を込める。

 目下の懸念はエクモ運用時に欠かせない防護服などが底を突いてしまうこと。「資材さえあれば助かる患者を目の前で失うことだけは、絶対に避けたい」。行政の迅速な対応を望んだ。

エクモ ECMO。肺の代用となり、その間に肺の機能回復を目指すための医療機器。血液から二酸化炭素を取り除いて酸素を供給し、体に戻す。心臓の治療にも使われる。

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