《コロナ現場発》3密避け新たなおもてなし様式模索 伊香保温泉
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チェックインの手続きをするフロント係。書面を併用して要点を絞り、2分以内の説明を心掛ける=23日、「和心の宿 大森」

 新型コロナウイルスの感染拡大により大打撃を受けている温泉地。群馬県での緊急事態宣言の解除を受け、営業を再開する宿泊施設も増えてきた。ただ、感染リスクがなくなったわけではない。密閉、密集、密接の「3密」を避けながら宿泊客をどう迎えるか。観光需要の回復を見据え、事業者は「新しいおもてなし様式」を模索している。

◎ロビーでの説明を短時間に
 23日午後3時すぎ。伊香保温泉(渋川市)の「和心なごみごころの宿 大森」に家族客が到着した。マスク姿のフロント係はチェックインの手続きを手早く進め、エレベーターへ誘導。ロビーの滞在時間を短くし、他の宿泊客やスタッフとの接触機会を減らすためだ。

 4月14日から1カ月にわたって休業した。今月16日の営業再開を前に、出迎えから見送りまでを25のシーンに分けて徹底的に見直した。到着時の手続きは書面を併用し口頭での説明は最小限に。客室に案内した際にお茶は入れず、食事の席ははす向かいに配置して配膳回数を減らす…。新たなチェック項目はおよそ200に及ぶ。

 「お客さまに寄り添う接遇をモットーにしているだけに、ジレンマもある」と大森隆博会長(64)。ただ、最優先するのは安全面。新しい生活様式と同じように、「旅館様式」も変える必要があると考える。

 この日は幹部社員が再開後の1週間を振り返り、改善点を話し合った。「接遇の形が変わっても、心は変わらない。これまで以上に質の高いおもてなしをしていく」と前を向く。

 伊香保温泉では旅館・ホテル44軒のうち、およそ半数が営業を再開した。食事を個室での提供に切り替えたり、布団をあらかじめ敷いておいたり、従来のやり方を変更した施設もある。それぞれが防疫ともてなしの両立に知恵を絞る。

 さらに、市と渋川伊香保温泉観光協会、伊香保温泉旅館協同組合が連携して、感染防止に配慮した受け入れ環境の統一基準「渋川伊香保温泉モデル」を作る取り組みが始動した。経営層を想定した衛生講習会も開き、安全意識を共有していくという。

 関係者が見据えるのはコロナ収束後だ。都道府県をまたいだ移動の自粛要請が解かれれば、首都圏から近く、車でのアクセスも便利な観光地の需要が高まるとみる。伊香保全体の昨年1年間の宿泊客を都道府県別でみると、割合は最多の群馬(23.5%)に次いで、東京(20.2%)、埼玉(同)、神奈川(7.5%)、千葉(6.9%)と続く。

 地の利に加え、独自の受け入れ環境基準を誘客の強みにしたい―。温泉地が一丸となった取り組みに、再起への決意がにじむ。(大貫秀美)

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