《模索 新型コロナ群馬県内初確認3カ月》(1)検査 必要な人へ迅速に
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
感染を防ぐ安全キャビネット内で作業する職員=県衛生環境研究所
試薬を持つ木村さん=群馬パース大

 新型コロナウイルスの感染者が群馬県で初めて確認され、7日で3カ月が経過した。未知の感染症は小康状態になりつつあるが、医療や介護などの課題を浮き彫りにした。懸念される感染の次の波に、どのように備えていくのか。模索する関係者に迫る。

   ◇   ◇   

 およそ100万分の1リットルという微量な液体を専用のピペットで採り、手のひらほどの反応プレートにある96個の小さな穴に、1つずつ丁寧に入れていく。4日、群馬県衛生環境研究所(前橋市上沖町)のウイルス実験室。「バイオハザード」と記された二重扉の奥で、防護服姿の職員が、新型コロナウイルスを判定するPCR検査に臨んでいた。

 「PCR検査はものすごく感度が良い方法。少しでも異物が入るとおかしな結果になる」。研究企画係の塚越博之さん(43)は精密な作業が求められると説明する。実際、PCR検査を巡っては愛知県で4月、検体が混ざってしまったことが原因とみられる誤判定が起きた。

■人材育成が課題
 医師が患者の鼻などから採った検体は、保健所職員らによって同研究所に運び込まれる。まず高速遠心機にかけられ、不純物を取り除く。反応プレートに入れられると、試薬でウイルスの遺伝子の周りにある「殻」を取り除き、むき出しの状態にする。

 その後、反応プレートごと機器に入れ、熱したり冷やしたりする。検体内に新型コロナウイルスがいればDNAが増幅され、陽性反応が出る。職員6人が交代で、おおむね5、6時間で判定する。

 1日に対応できるのは30検体だったが、4月に機器を増やし60検体に。同月のピーク時は1日107検体を判定したこともあった。

 地方の衛生研究所は近年、行政改革の機運の高まりなどにより、人員や予算の削減が進んだとの指摘もある。一方、新型コロナへの対応は長期化が避けられない状況。十分な検査能力を維持するためにも、繊細な精度管理に耐えうる知識や経験を積んだ人材の育成が今後の課題という。

 政府の専門家会議がまとめた提言によると、日本の人口10万人当たりのPCR検査実施件数は、4月末時点で韓国の6分の1、米国の10分の1程度。保健所の業務過多で、必要な人にPCR検査が迅速にできなかったとし、検査場所や人員など体制を強化すべきだと指摘している。

 こうした状況を受け、県内でも検査能力を拡充するための動きが出ている。

■大学の機能活用
 高崎市街地にある群馬パース大の一室。大学院教授の木村博一さん(59)=感染症学=が、保冷庫から指ほどの大きさの容器を取り出した。中に入っているのは民間企業と共同開発した試薬で、PCR検査にかかる時間を、従来よりも大きく短縮できるという。厚生労働省が実施を認め、県も準備を進める唾液を検体としたPCR検査にも対応している。

 同大は市から衛生検査所としての認可を受け、新型コロナのPCR検査自体も始めた。第2波、第3波を想定し、「大学が持つ機能を活用し、公衆衛生に貢献する」ことを決めた。

 国立感染症研究所の感染症疫学センターで室長も務めた木村さんは国や行政の対応について、1年後くらいに客観的な数値を用いて評価していくことが妥当だと指摘。将来的には判定のための簡易キット、治療薬や予防ワクチンなどが開発されることで、「まちの開業医でも診られる感染症にしていくことが大切だ」と指摘する。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事