《模索 新型コロナ群馬県内初確認3カ月》(5)地域 情報も資材も足りず
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防護服代わりに使った雨がっぱを示す中野さん

 「太田で出ました」。電話口の声色は暗かった。3月7日夕。内科医で、群馬県太田市医師会副会長の中野正美さん(70)の携帯電話に、同会事務局から連絡が入った。県内初の新型コロナウイルス感染者が同市内で確認されたとの内容だった。

 感染がまん延し、地域の医療機関が相次いで閉鎖する“最悪のシナリオ”が脳裏をよぎった。すぐに国の感染症対応ガイドラインを読み返し、自身の診療所にあるマスクなどの在庫を確認した。

 「カルテに書けるような医療情報が足りない…」。県から送られてきた感染者に関する資料を見て、がくぜんとした。一般公表と同じ情報が、医師会を通じてファクスで共有されるだけだったからだ。「さまざまな外来患者に応じる現場の医師こそ、正確で詳細な内容、迅速な情報提供を必要としているのに」

■風評被害
 初確認の翌週から、外来患者が減り始めた。診療所内での感染を警戒してのことだった。中野さんの診療所と同様に市内で「診療控え」が広がり、多くの医療機関が2~3割の収益減に直面。スタッフの賃金の支払いで金融機関から数千万円借り入れる動きがあったほか、「感染者が訪れた」と根も葉もないうわさを流される医療機関もあった。

 感染拡大に伴う医療資材不足に、現場は苦しめられた。中野さんの診療所でも防護服が足りず、雨がっぱで代用。1人診察するたびに使った消毒液は、すぐに底をついた。有り合わせの資材で急場をしのぐため、ドアノブにはコピー用紙を巻き付けた。

 診療所を受診した発熱者への対応を巡り、課題も浮上した。PCR検査に至るまでにさまざまな検査を受けるのが一般的だが、保健所や、受け入れ先となる検査の設備が整った医療機関との調整に時間がかかることが少なくなかった。

■検査態勢
 5月中旬以降、県が地元医師会に委託する形でPCR検査センターが各地に設置され、検査態勢は徐々に整いつつある。ただ、13カ所とする県の目標に対し、設置済みは6カ所と半数以下。太田も未設置で、中野さんは地域医療を支える現場の今後の混乱を避けるためにも、早期設置が必要だと訴える。

 想定される感染の第2波までに「解消すべき課題はまだまだ多い」と中野さんは強調する。消毒液や防護具の確保、院内感染で医療機関が閉鎖された際の経済支援、インフルエンザ流行期の新型コロナとの区別方法を国が示すことなどだ。

 「感染症対策は国を挙げての総力戦。春と同じてつを踏むわけにはいかない」

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