《模索 新型コロナ群馬県内初確認3カ月》(7)分析 地道な研究 危機に活用
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数理モデルの分析画面を前に意見を交わす内田准教授(右)と神谷教授

 2万8000人―。4月中旬、群馬県はこのまま何も対策を取らない場合、半年後にピークを迎える県内感染者数の試算を公表した。その上でこの最悪の想定を避けるため、人との接触機会を減らすように呼び掛けた。

■新型インフルから
 試算を担当したのは群馬大大学院医学系研究科の内田満夫准教授(46)。「感染症数理モデル」を使ったシミュレーションだ。県内感染者の判明状況や感染者1人が平均何人にうつしたかを示す「実効再生産数」を設定し、微分方程式などの計算により感染者の推移を予測する。

 日本では2009年の新型インフルエンザ流行以降に広がり、新型コロナウイルス対策では政府の専門家会議が国内第一人者の西浦博・北海道大大学院教授の分析を活用。県も同様に内田准教授に定期的な分析を依頼、参考にしてきた。

 内田准教授は「政策を決める際の目安を提示できる。新型インフルの際はまだ確立されておらず、方針決定が遅れる面もあった」と意義を説明する。県内の感染者数は今月15日現在、累計151人に抑えられている。

 未知のウイルスの感染拡大を防ぐため、県内の研究者たちが科学的な見地から協力している。

 群馬大大学院医学系研究科の神谷亘教授(47)は遺伝子操作でコロナウイルスを人工合成する技術を持つ。研究用ウイルスを比較的短時間で確保できるため、新型コロナウイルスの医薬品開発に向けた共同研究などの依頼が舞い込んでいる。

■「継続的環境を」
 研究を始めたきっかけは02年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)だ。04年の米国留学時にテーマにしたが、終息した感染症は研究費が削減されるのが一般的。1年程度で終息していたため、当時は「なぜ今更」と疑問視された。日本国内でも研究者は少なかったという。

 だが、今回の新型コロナウイルスは学術名「SARSコロナウイルス2」で同じグループに属する。SARS終息後も「研究をゼロにしてはまずい」と続けてきた成果が生きた形だ。

 神谷教授は「治療法の開発は基礎研究も含めて4、5年はかかる。だが、流行が落ち着くと研究が止まり、次の発生時にまたやり直すことになる」と問題点を指摘する。12年から発生の中東呼吸器症候群(MERS)もコロナウイルスである点にも触れ、「少なくとも10年ごとに3回出ており、次がないとは限らない。継続的に研究できる環境を整え、研究者を増やさなければ」と警鐘を鳴らす。

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