中之条の元老舗旅館「鍋屋」解体へ 十返舎一九や高野長英も宿泊
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現存している改築後の鍋屋の建物

 群馬県中之条町の市街地で営業していた老舗旅館「鍋屋」の建物が、今月中にも解体される。江戸時代の戯作者、十返舎一九や医師で蘭学者の高野長英らが宿泊し、狂歌や小説にも登場した有名な宿が街中から消える。所有の史料は同町歴史と民俗の博物館「ミュゼ」に引き継がれる。

◎現在は閉館 史料は「ミュゼ」へ寄贈
 鍋屋は1670年に創業。戦後に改築し「吾嬬館」の看板を出し10年ほど前まで木造2階建ての本館と新館の計12部屋で営業していたが、宿泊客の減少などのため閉館していた。

 十返舎一九の紀行文「諸国道中金の草鞋」で〈愛想は外にたぐひも中之条 鍋屋のうちの居心のよさ〉と狂歌に残っている。作家の吉川英治が吾妻地方の戦乱時代を取り上げた小説「石を耕す男」にも登場する。高野長英は鍋屋を拠点に吾妻地方を巡り、政治家の後藤新平も宿泊したという。

 明治と大正に中之条町長を務めた当時の館主、田村喜八は戦時中に疎開児童を受け入れ、この様子が集合写真として残っている。

 350年の歴史がある鍋屋は、四万温泉や草津温泉への中継地点として旅行客でにぎわったが、移動手段が馬車から自動車に変わるとともに宿泊客が減少。金融機関の店舗建築の計画をきっかけに解体が決まった。

 現当主の田村正明さん(73)は「建物を残して維持することも大変困難で解体はやむを得ないが、貴重な史料が散逸してはもったいない」と、ミュゼに史料を寄贈することを決めた。ミュゼの山口通喜館長は「調査や整理を経て、来年にも公開できるようにしたい」と話している。

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