今年も会いに来たよ 御巣鷹の尾根 分散日程で遺族が慰霊登山
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次男健君の墓標の前で笑顔を見せる美谷島さん=25日午前9時10分ごろ
墓標に手を合わせる花川さんの遺族ら=25日午前11時45分ごろ

 乗客乗員520人が犠牲となった日航ジャンボ機墜落事故から8月で35年になるのを前に、墜落現場「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村楢原)で遺族と関係者だけが入山できる慰霊登山が25日、始まった。新型コロナウイルス感染拡大防止と昨年の台風被害の影響で、今年は入山日程を7月と8月に分散した。この日は遺族10人ほどが尾根を訪れ、墓標の前で祈りをささげた。

■式典縮小「心の距離は離れない」
 遺族でつくる「8.12連絡会」の事務局長を務め、事故で次男の健君=当時(9)=を亡くした美谷島邦子さん(73)=東京都大田区=は、健君が好きだったキャラクター、ドラえもんのフェルトや菓子などを墓標に供え、線香花火に火を付けた。

 美谷島さんは、昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)で登山道などが被害を受けたことを知った遺族から、今年の慰霊を心配する声が上がっていたと打ち明け、「登れるように復旧してくれた村への感謝でいっぱい」と述べた。

 「ここに来ると『もう一年頑張ろう』という気持ちになる。健ちゃん、これからも一緒に歩いていこうね」。雨が背中をぬらす中、夫の善昭さん(73)と共に静かに手を合わせた。今年の式典の縮小や灯籠流しの中止について、「みんなが近くで集まることはできないが、心の距離は離れないと信じている。私たちが命の大切さを伝えていきたい」と力を込めた。

■高齢で登れなかった母の分も
 「母が元気でいられるように見守ってほしい」。事故で父の花川忠彦さん=当時(55)=を亡くした岸田順江さん(62)=京都市左京区=は、長男の友吾さん(36)=兵庫県明石市=ら4人と共に墓標に語り掛けた。高齢のために登れなかった母、明子さん(82)の健康を願ったという。

 例年夏に尾根を訪れ、数年前からは秋に足を運んでいたが、昨年は尾根が台風被害を受けたため訪れることができなかった。順江さんは「被害が心配だったが、こうして無事に来られて良かった」と安堵あんどの表情を浮かべた。

 順江さんに連れられ2歳の頃から毎年訪れている友吾さんは、長男の隆誠ちゃん(2)を背負って登った。前回連れてきた2年前は生後6カ月だった隆誠ちゃんも、今では大きく成長。「体重13キロをおんぶして登るのは大変」と苦笑した。墓標に忠彦さんが好きだったたばこやモモを供え、家族5人で祈りをささげた。

 公益財団法人「慰霊の園」の理事長を務める黒沢八郎村長は同日、「感染予防のために分散して慰霊できる日程を設け、ご遺族の理解を得られたと認識している。8月12日の式典に向け、引き続きコロナ感染防止に留意したい」と話した。

 遺族と関係者のみが入山できる日程は26日、8月11~13日にも設定。関係車両のみ通行できるほか、日航が臨時バスを運行するなど支援する。

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