《コロナ現場発》職員感染のこども園 中傷やデマが相次ぎ疲弊
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男性園長が受けた電話のメモは、ノートに計10ページ以上にわたった=伊勢崎市の認定こども園

 職員が7月に新型コロナウイルスに感染した群馬県伊勢崎市の認定こども園の男性園長が26日までに上毛新聞の取材に応じ、いわれのない要求や誹謗ひぼう中傷、デマに悩まされたことを打ち明けた。園長は真摯しんしな対応に努める一方、「不正確な情報拡散は子どもに不安を与えかねない」と会員制交流サイト(SNS)などの冷静な利用を訴える。3密が避けにくい保育現場は、感染対策と保育の両立に頭を悩ませている。

◎「病気より風評被害が怖い」 対策が子どもの発達に影響も
 「地域の行事が中止になるかもしれない。どうしてくれるんだ」「すぐに全員の検査結果を公表しろ」―。7月中旬、職員の感染が確認されると、同園へ電話が相次いだ。「感染した職員が自殺した」というデマも流れたという。1人で電話対応に追われた園長は「事実無根で悪質なうわさがひとり歩きした」と表情を曇らせた。

 最初に感染が確認された職員は、同月上旬に訪れた東京・新宿の劇場での感染拡大を報道で知り、帰国者・接触者相談センターに相談、PCR検査で陽性と判明した。発熱やせきなどの症状はなかったという。

 同業者の中には「この時期に東京に行くべきでなかった」と批判的な声がある一方、当時は県の指針でも県外移動の自粛は要請されていなかったことなどから、「感染者は被害者」と同情的な意見も目立つ。同市の保育関係者は「病気にかかることよりも、風評被害の方が怖い。症状があっても言い出せない人が増えてしまうのではないか」と心配する。

 保育園や認定こども園391施設が加盟する県保育協議会によると、新型コロナ影響下の保育について、多くの園が苦慮している。アンケートを取るなど保護者の意見を聞きながら方針を決める園もあるが、家庭ごとに育児の仕方や感染症に対する考え方が異なり、全員が納得するような運営は難しいという。

 深町穣会長は「子どもの発達にとって保育士の表情や発声時の口の形を見ることは重要だが、マスクやフェースガードを着けないわけにもいかない」と話す。深町会長が園長を務めるこども園では、園児と保育士の給食の時間をずらしたところ、園児の食が進まなくなったという。

 深町会長は今後、人材育成の機会が減ることについても懸念している。感染予防を重視し、保育士を志望する学生の実習の受け入れを中止する園が増えると予想されるためだ。「この業界の未来を考えると、リスクを取ってでも協力したい」と苦しさをにじませた。(金子雄飛)

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