高崎の養豚場でCSF 飼育5400頭を殺処分へ 知事「痛恨の極み」
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群馬県でのCSF(豚熱)発生について臨時会見する山本知事=県庁

 群馬県は26日、高崎市内の養豚場で飼育していた子豚3頭のCSF(豚熱)への感染が分かったと発表した。全国でCSFが拡大した2018年9月以降、県内養豚場での発生は初めて。CSFは豚やイノシシの伝染病で人間には感染しない。群馬県は27日から、この養豚場の全ての豚約5390頭を殺処分する。半径10キロ以内に18の養豚場があるが、ワクチンを接種しているため出荷などの搬出制限はしない。生産者らに対し、防疫対策の徹底を改めて呼び掛けた。

◎今月上旬から200頭の子豚が死ぬ
 県によると、25日正午すぎ、この養豚場から県に「死ぬ豚が増えている」と連絡があった。群馬県家畜衛生研究所が衰弱死した子豚3頭を検査し、26日未明に感染の疑いが判明。国の専門機関でさらに検査し、同日午後5時に感染が確定した。飼養豚は生後1~2カ月でワクチンを接種することになっているが、3頭は生後約70日で、下痢などの症状があったため見送っていた。

 この養豚場では9月上旬から下痢をする子豚が目立つようになり、これまでに子豚約200頭が死んでいた。周辺地域では、CSFに感染した野生イノシシが散発的に確認されていた。

 殺処分は27日から3日間、県職員や自衛隊員、獣医師らが行う予定。殺処分した豚は養豚場敷地内に埋める。

 県庁で記者会見した山本一太知事は「できるだけの対策を先手先手で行ってきたつもりだが、今回の事態は痛恨の極み。これ以上感染を広げない対策をしっかりと取っていきたい」と述べた。県は26日に対策本部会議を開いて対応を検討。山本知事は野上浩太郎農相と電話し連携を確認した。

 農林水産省によると、18年9月以降、国内の養豚場でのCSF発生は9県目で、3月に沖縄県で発生して以来。ワクチン接種を完了後、継続的に接種していた県での発生は初めてという。

 群馬県は全国有数の養豚県で、豚の飼養頭数は約62万9000頭に上る。CSF対策を進めるため、県は野生動物の侵入防止柵設置や、野生イノシシへの経口ワクチン散布などを進めてきた。今年1月には、全ての養豚場でワクチン接種が完了し、継続的に接種を続けている。

◎“養豚王国”に驚きと不安 「長期的かつ科学的な対策を」
 「残念」「なぜ」。高崎市で飼育されていた豚のCSF(豚熱)感染が判明した26日、飼養頭数が全国4位の“養豚王国”を支える農家は驚き、不安を口にした。県内の山林で野生イノシシの感染が断続的に確認されており、消毒や豚へのワクチン接種などで神経をとがらせてきた。県内外で豚の盗難被害が相次ぐさなかでのダブルパンチを嘆き、感染による風評被害を懸念、行政により厳しい対策を求めた。

 「ワクチンを接種させ、防護柵も作った。できる限りのことはしている」。同市で養豚場を営む男性は不安を隠さない。「1頭でも感染すれば全ての豚を殺処分しなくては。早く原因が知りたい」とした。同市の別の男性農家は「どこから来るか分からない感染症も、盗難も警戒しなければならず気を抜けない」と歯がゆい胸中を明かした。

 実際に盗難被害に遭った前橋市の養豚業者の男性は「残念だ。なぜ感染したのか疑問だ」と話した。感染したのがワクチン接種前の子豚だった点について、同市で養豚場を営む50代男性は「県はより長期的かつ科学的な対策に変えるべきではないか」と主張した。

 県養豚協会の岡部康之会長(64)は「養豚場の豚が感染するとは。CSFのワクチンは接種時期を見極めるのが難しい。全県で接種態勢を見直すべきだ」と提言。「豚の窃盗被害もあって養豚業は災難続き。買い控えが心配」とする。風評被害については山本一太知事が会見で、感染した豚が市場に出回ることはないと強調。万一、感染した豚を食べても健康への影響はないと訴えている。

 JAグループ群馬は養豚農家への消毒用消石灰の配布、JA関連施設への消毒用噴霧器の設置といった防疫対策を進めてきた。JA群馬中央会は「危機感を持って対応してきただけに残念。県と連携し、対策を取っていきたい」とする。

 高崎市も県境付近の2カ所に畜産関係車両の消毒ポイントを設置し、猟友会に車両を消毒するための噴霧器を貸与するなど対策を行ってきた。市は「県からの指導を受けて、今後の対応を考えていきたい」としている。

 発表を受けてインターネット上では、家畜の盗難被害と関連づけ、養豚場に立ち入った犯人が媒介した可能性を指摘する声もあった。国と県は現状、感染した豚の養豚場が被害に遭った形跡はないとしている。

◎感染原因究明へ調査チーム派遣 農水省が対策本部
 高崎市内の養豚場でのCSF(豚熱)感染判明を受け、農林水産省は26日、防疫対策本部を開き、野上浩太郎農相が感染原因の究明に向けた疫学調査チームの派遣などを指示した。

 野上氏は冒頭、「継続的なワクチン摂取に取り組んでいた状況で発生したことを極めて遺憾に思う。飼養衛生管理徹底が十分でなかったために発生したと推察される」と述べた。

 このほか周辺農場への聞き取り調査や野生イノシシの浸潤状況の確認なども県と一体となって取り組むように指示した。

 同省によると、疫学調査チームは27日に現地に入る予定という。石川清康動物衛生課長は「調査して問題点があれば、注意喚起していく」と話した。

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